ショートショート わたしのエッセー 「柏餅」
雨の中、家屋の固定資産税を市役所に納めに行った帰り、お菓子屋さんに立ち寄った。そこで安物の柏餅を買って来た。柏の葉を底に敷いたトレイに、3個列んでいる。甘いのがほしい。血糖値が高い者は甘いのを食べてはいけないのに、ほしい。一個でいい。さみしさを、これで放擲したい。できるもんか。甘い餡が詰まっているとはいえ、柏餅を食べたところで、さみしさが、ひっくり返ったりするものか。帰宅した。夕暮れが迫る。雨は降り止まない。辺りが暗くなって行く。坐って窓辺に延べている足の、足先が冷たい。なんだ、どうしてなんだ。こんなことにも腹が立つ。こころの冷たさが足先にまで及んだのか。柏餅に、大袈裟にぱくりと歯形をつけてみた。むしゃむしゃ噛んでみた。
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