名を呼ばれしもののごとくにやわらかく朴(ほう)の大樹も星も動きぬ 米川千嘉子
やわらかく大樹の朴が動いたのは真昼間。やわらかく星々がまたたいたのは夜。先生から名を呼ばれた小学生が「はい」と答えてよろこびの手を挙げたように。ただ小学生のように瞬間的ではなく、もう少し長くゆったり整然と。
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名を呼ばれたのである。「呼ばれしごとくに」と婉曲してあるが。名を呼ばれてはじめて全存在がここに存在しているのである。名を呼ばれて命が宿ったのである。星もわたしも山も朴の大樹も、虫も蛙も。名指しされてここへ来たのである。ここを荘厳し輝かす者として。わたしの名を呼んだのは誰か、それをたしかめたくて動く。やわらかく。やがて厳かにしなやかに。目を瞠ってそこに立つ。深く息づく。そして確かめ得たものが約束通りそこできらきら己を輝きださせるのだ。
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短歌とはなんだろう。ショットガンだろうか。大砲だろうか。読者を打ち抜いてくる。触媒だろうか。読者を化学変化させてくる。ピストルだろうか。読者を静から動へ移らせる。毒だろうか薬だろうか。眠っていた者を目覚めさせる。とにかく大きな力を持つ。この歌がそうだ。
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わたしさぶろうもここに呼ばれている。そう思っている。アカシック・レコードの記録に依れば、さぶろうの宇宙名はラ・ハマロ・ズ・テである。この名で繰り返し繰り返し宇宙に登場し退場してきた。これからもそうするだろう。そしてさぶろうもまた諸仏諸菩薩の名を呼んでいる。これも事実だ。さぶろうに宇宙の法、正覚の道を指し示すものの名を呼んでいる。
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