み饗(あえ)するものこそなけれ小甕(こがめ)なる蓮(はちす)の花を見つつ忍ばせ 大愚良寛
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饗は饗応、馳走、もてなし。良寬様が出掛けている間に、貞心尼が庵を訪ねて来ました。彼女は待つことにしました。
来てみれば人こそ見えぬ庵守りて匂う蓮(はちす)の花の貴さ 貞心尼
あなたを尋ねて来てみたら、あなたはおいでになりません。あなたに代わってこの庵を守っているのは蓮の花でした。あなたの気品を受け継いだ蓮が清らかに匂って気品の高さを漂わせておりました。
この歌を送られた禅師がすばやく返歌をなさったのです。それが冒頭の歌。いいですね、師弟の気心がすかさず風のように通い合うのです。
おもてなしできるものとてありませんでしたね。それを厭わず、小甕に生けている蓮の花を相手に選んで、わたしが帰るまでのひとときを、あなたはこころ豊かに過ごしてもらっていた。ああ、よかったよかった。
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良寬様は70歳を超えておられます。貞心尼とは40歳の年齢差があります。二人の間にはほのぼのとした風が流れています。
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