土曜日の朝、音楽で頭を侵食する。
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一昨日の話だが、電車を下りてホームを歩いていると、人ごみのなか、斜め前を女の人が同じ方向に歩いていた。
その女は、歩く人たちの関係で、階段を上る時には、私の後ろからついてきた。
その女は、おそらく階段を上りきるまで、私の後ろをついてこなければならないのだろう、と思ったとき、むしょうにその女が、不幸な女に思えた。
私のおしりを見ながら、階段を上らなければいけないなんて、なんて不幸な女だ。
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しばらくして、考えた。これが不幸なら、世の中不幸だらけだ。
しばらくして、考えた。幸せというやつが曖昧なのだから、不幸というやつも曖昧なのだ。
しばらくして、考えた。幸せも不幸も、他人が決めることだ。少なくとも他人がいてはじめて成り立つ言葉だ。
しばらくして、考えた。私はその女とは他人だから、不幸な女だと思ったのだろう。
しばらくして、考えた。その女は、幸せだったかもしれない。だって、みんなと一緒の階段を上れたのだから。
しばらくして、そんなことすっかり忘れていたが、今、思い出してしまった。