goo blog サービス終了のお知らせ 

ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

子ども創作能「本公演」…感無量!(その1)

2011-10-11 01:09:47 | 能楽
土曜日は伊豆の国市の「子ども創作能」の本公演でした。本公演、というのも、今年子ども能の公演は市内で5回もあるのですが、これがなかなか予算不足で…お囃子方の来演をお願いできるのはただ1度しかないのです。

それにしても今年の「本公演」はすごかった! 以前から ぬえは願成就院さまに参詣を重ね、2度に渡って子どもたちを連れて謡の奉納に行ったり、また厚かましくもご住職さまに「子ども能Tシャツ」の背中に「能」の文字をご揮毫願ったりして…まあ、ちょっと ぬえのムリヤリ押し掛け風ではありましたが、ずっと懇意にして頂いた縁がありました。こうしてお寺に隣接する「守山八幡宮」の祭礼の場での上演を希望して、これらの寺社がある「寺家」(じけ)地区の区長さんに突撃訪問を敢行し(またムリヤリかい…)、ついに土曜日の上演の実現に漕ぎつけたのでした。

ところが後になって聞いたところでは…「よく守山八幡宮が上演を許したね」「願成就院さまもご機嫌をそこねると難しいはずなのに…」と、なんだか怖いようなお話も…。でも ぬえたちはこの地区からしたら よそ者のはずなのに、そうして祭礼に無理に割り込んで上演させて頂く立場なのに、事前のご挨拶から当日まで、とても親切にして頂いております。

もともと、願成就院さまは北条時政の願により建立され、運慶の仏像をいまに5体も伝える由緒正しい…伊豆半島きっての名刹。そして守山八幡宮も北条の氏社として崇敬を集め、頼朝の挙兵の際にも戦勝を祈願した由緒正しい霊社です。それは ぬえも知っていましたので、伊豆にお稽古に行く時には参詣を欠かさないようにしております。信仰はとくに持っていないけれど信心は持っている ぬえ。神社にはお願いをしに行くところではないのだけれど、必ず子ども能の成功を見守って頂くようお願いします。神様にも郷土愛はありますからね。

寺家区長さまを突然訪問し、祭礼への子ども能の出演をお願いした際も、こんな ぬえの考えもあって祭神への敬意を子どもたちに徹底して、祭礼当日にはお祓いも受けさせることを申し出ましたところ、快くお許しを頂くことができました。それどころか願成就院さまは子どもたちの着替えの場所に本堂を提供して頂き…当日は地区の方々から子どもたちへ飲み物やお餅の差し入れまで頂き…なんだか とっても愛して頂いています~

さて祭礼の前日の朝に、改めて区長さんのお宅にご挨拶に伺うと、すでに祭礼の準備に守山八幡宮にお出かけとのこと。行ってみると…おお、すごいすごいっ、参道には紙の灯籠が並べられ、大きな幟が立てられ、鳥居には国旗が掲げられ、境内にも舞台にも紅白幕や紋幕が飾られています。この灯籠…夜はさぞ美しく引き立つでしょう。







区長さんへのご挨拶を済ませ、翌日のお祓いなど神事への子どもたちの参加についてご注意などを頂きましたが、あまりの壮麗な設えに心奪われ、子ども能15分だけ、とお許しを頂いていた祭礼への出演ですが、急遽 ぬえも5分間だけ舞を奉納させて頂きたい! と…これまたムリヤリなお願いをしました。区長さまは苦笑いで許諾…ああ、ぬえってなんて無礼っ (;>_<;) でもっ、でもっ。ここで ぬえも舞いたいんですぅ。

こうして、呆れる地区の皆様から逃げるように ぬえは子どもたちの最終稽古へ。装束合わせも、それからお囃子方が到着されての申合も順調に進み、そうして祭礼の…子ども能上演の当日を迎えました。

まずは朝9時に八幡宮さまの前に集合しましたが、すでに御神輿も登場、子供会も大盛り上がり。「子ども能Tシャツ」で集まった我々はちょっと異様かなあ? やがて神主様が舞殿と呼ばれる舞台の後方の急な石段を登って拝殿に向かわれると、地区の方々がスーツ姿で従われます。神主様の袍は黒色。まさに威儀を正しての参詣で、それだけ地区でこの祭礼が大切にされているかが分かります。



指示された通り ぬえたち子ども能の参加者はその後をついて石段を登り、そうして ぬえたちは拝殿の外で待機して、地区の役員さんや三番叟の出演者の皆さん(後述)は拝殿の中にて礼拝されたのでした。やがて神主様は拝殿の入口まで出御なされ、子どもたちにお祓いを頂き、さて子どもたちは願成就院さまに戻って、いよいよ装束の着付けを始めたのでした。