ちなみに申合では大鼓方だけは道具(=楽器)を使わずに張り扇を打って参加します。道具は本番だけ。これはよく知られているように大鼓の革は消耗品で、しかも打つ前には炭火で焙じなければならないからで、申合ではここまでの手間も掛けられないし、非公開の申合で革を損傷させる必要もないので、道具は使わないのです。もちろん大鼓方は申合では右手だけに1本だけ張り扇を持って、自分のパートだけを打ちます。
この張り扇ですが、市販品もあるのですが、これはなんとも華奢で頼りない。そこで能楽師は多く自作の張り扇を使っています。とくに囃子方にとっては日々の稽古から張り扇は必需品なので、それぞれ独自のルートで張り扇を手に入れておられるようですね。
アマチュアのお弟子さんに器用な方があって、その方がもっぱら先生のために作って差し上げているとか、もちろん囃子方の先生の自作、ってのもあります。そしてまた、囃子方が使っておられる張り扇は、やっぱり出来が良い! シテ方が作るものとは大違いです。いや、そりゃまあ、シテ方でも器用な方は上手に作りますけれども。。 でも、ぬえが今まで見た範囲内では、シテ方は自分の流儀の稽古用の扇などが傷んで使えなくなった時に、それを半分に割って、そんで、そこに包地(ぼうじ=作物に巻くのが主な用途の、白い木綿を長く包帯状に切ったもの)をグルグル巻きにする程度のものが多いです(ぬえもずっとそうして作っていましたが。。)。
で、仕舞の稽古に使うようなシテ方の扇ってのは、張り扇を作るには長すぎるのですよね~。。観世流の場合はほかのお流儀よりもさらに少し長く、一尺一寸の寸法があります(俗に観世流の扇を「尺一扇」などと呼ぶのは、その長さの事を言っているのです)。これをこのまま包地でグルグル巻きにしたら。。それはそれは不格好な張り扇が出来上がります。
その点、囃子方が愛用する張り扇は、これまたおそらくは やはりお囃子方が普段お使いになる扇を割って作られたものが始まりだと推察しますが、長さも短くて拍子盤を打つにはちょうど良いのです。そしてまたシテ方が作るように包地でグルグル巻き、ではなくて、きちんと革で包んで、それを縫い上げてキレイに作ってあります。革を使うのは耐久性のためにも、包地よりもはるかに合理的でしょうし、響きもよいですね。ぬえが以前に作った「包地グルグル巻き張り扇」は、糊をふんだんに塗りたくりながら巻いたものだから、完成品はカチンカチンに固まっていて、打つと「カキーン、カキ~~~ン」と鳴ったっものです。。(T.T)
で、ぬえもある時期から お囃子方にお願いして、張り扇を譲って頂いて、それを使うようになりました。うん、やっぱりお囃子方が使う張り扇は品質がよろしい。でも、やはり使っているうちに この張り扇も傷んでくるので、そのたびにお囃子方に注文をお願いするのも面倒で。。
そこで今回、思いあまってお囃子方と同じレベルの張り扇を自作する事を思い立ちました。東急ハンズではぎれの革を探して、本体に巻くのにちょうどよい薄さの白く染めた牛革と、握りの部分に使う茶色のスウェード革を買い求めました。
さて帰宅して、ぬえは以前にお囃子方から頂いて、いまは傷んで使えなくなった張り扇を分解して構造を調べてみました。ほおっ! これは使えなくなった扇をバラして作ったのではないのですね。竹材を扇の骨のような大きさ・長さに加工して、それに和紙を幾重にも折り畳んで扇の地紙のようにしたものを貼り付けている(今回の品では、なんと「暦」を分解して地紙に作ってありました!)。まあ、よく考えてみれば、使えなくなった扇を張り扇に作り替えるのでは年間に1本か2本しか作れないでしょう。やはりここは竹と紙の材料を扇の形に作り上げればよいわけで。な~るほど~。
この張り扇ですが、市販品もあるのですが、これはなんとも華奢で頼りない。そこで能楽師は多く自作の張り扇を使っています。とくに囃子方にとっては日々の稽古から張り扇は必需品なので、それぞれ独自のルートで張り扇を手に入れておられるようですね。
アマチュアのお弟子さんに器用な方があって、その方がもっぱら先生のために作って差し上げているとか、もちろん囃子方の先生の自作、ってのもあります。そしてまた、囃子方が使っておられる張り扇は、やっぱり出来が良い! シテ方が作るものとは大違いです。いや、そりゃまあ、シテ方でも器用な方は上手に作りますけれども。。 でも、ぬえが今まで見た範囲内では、シテ方は自分の流儀の稽古用の扇などが傷んで使えなくなった時に、それを半分に割って、そんで、そこに包地(ぼうじ=作物に巻くのが主な用途の、白い木綿を長く包帯状に切ったもの)をグルグル巻きにする程度のものが多いです(ぬえもずっとそうして作っていましたが。。)。
で、仕舞の稽古に使うようなシテ方の扇ってのは、張り扇を作るには長すぎるのですよね~。。観世流の場合はほかのお流儀よりもさらに少し長く、一尺一寸の寸法があります(俗に観世流の扇を「尺一扇」などと呼ぶのは、その長さの事を言っているのです)。これをこのまま包地でグルグル巻きにしたら。。それはそれは不格好な張り扇が出来上がります。
その点、囃子方が愛用する張り扇は、これまたおそらくは やはりお囃子方が普段お使いになる扇を割って作られたものが始まりだと推察しますが、長さも短くて拍子盤を打つにはちょうど良いのです。そしてまたシテ方が作るように包地でグルグル巻き、ではなくて、きちんと革で包んで、それを縫い上げてキレイに作ってあります。革を使うのは耐久性のためにも、包地よりもはるかに合理的でしょうし、響きもよいですね。ぬえが以前に作った「包地グルグル巻き張り扇」は、糊をふんだんに塗りたくりながら巻いたものだから、完成品はカチンカチンに固まっていて、打つと「カキーン、カキ~~~ン」と鳴ったっものです。。(T.T)
で、ぬえもある時期から お囃子方にお願いして、張り扇を譲って頂いて、それを使うようになりました。うん、やっぱりお囃子方が使う張り扇は品質がよろしい。でも、やはり使っているうちに この張り扇も傷んでくるので、そのたびにお囃子方に注文をお願いするのも面倒で。。
そこで今回、思いあまってお囃子方と同じレベルの張り扇を自作する事を思い立ちました。東急ハンズではぎれの革を探して、本体に巻くのにちょうどよい薄さの白く染めた牛革と、握りの部分に使う茶色のスウェード革を買い求めました。
さて帰宅して、ぬえは以前にお囃子方から頂いて、いまは傷んで使えなくなった張り扇を分解して構造を調べてみました。ほおっ! これは使えなくなった扇をバラして作ったのではないのですね。竹材を扇の骨のような大きさ・長さに加工して、それに和紙を幾重にも折り畳んで扇の地紙のようにしたものを貼り付けている(今回の品では、なんと「暦」を分解して地紙に作ってありました!)。まあ、よく考えてみれば、使えなくなった扇を張り扇に作り替えるのでは年間に1本か2本しか作れないでしょう。やはりここは竹と紙の材料を扇の形に作り上げればよいわけで。な~るほど~。