ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

明治神宮奉納能

2006-05-02 22:02:00 | 能楽
今日は明治神宮の大祭で、能楽協会からの奉納能狂言があり、ぬえも地謡で参加してきました。

じつは ぬえ。。明治神宮の中に入ったのは今日がはじめて。東京で生まれ育った ぬえは東京の事を知りません~。。ま、生まれた町の事ってのは、得てして詳しくは知らないものでしょうが。。

ぬえの自宅からの交通手段の関係で、今日は代々木駅から徒歩、明治神宮本殿へ向かいました。最初の画像は北参道の入口の鳥居。ところが一歩この鳥居から神域に入ると。。うわ、こんな密林が東京にあったのか!

少し以前にNHKのドキュメンタリー番組で「代々木の杜」というようなタイトルの番組を見て、その説明では「この明治神宮と神宮外苑の森は人工的に植林されたもので、しかしながら現代では貴重な森林となっている」というような事でしたが。。実際に見てみるとその鬱蒼とした森の深さに驚きます。

北参道は明治神宮の、いわば裏参道と言うべき参詣道なのですが、その分 歩く人も少なくて静かなたたずまいを堪能できました。およそ5分で本殿に到着します。どうやら原宿駅から向かう南参道(表参道に続く主たる参道はこちらになります)よりも本殿には近いらしい。



到着したこの場所は「御社殿」と呼ばれていて、内拝殿と外拝殿を持ちそれが回廊でつながれた正格なもの。この奥に明治天皇を祀った本殿があります。この拝殿の前の回廊で囲われた中庭で奉納能が執り行われました。ちなみにテレビでよく見る大相撲の横綱の奉納土俵入りが行われるのもここ。。ぬえもはじめて見たんですが。



やがて神官によって祭礼が執り行われ、神舞姫の「浦安の舞」も奉納されて、その後演能となりました。奉納されたのは狂言『酢薑』と能『吉野天人』。昨日は夏のような暑い日だったのに今日は残念ながらの荒天で、地謡に座っていたら寒かった。。それでも外国人観光客や(外国人はやたら多かったですね。どうやら明治神宮ではいつもそうらしく、東京の名所なのかしらん)参詣の多くの方々に見守られながら、良い奉納能だったと思っています。

ところが。。能には関係ないのですが、ちょっと気になった事が。

ぬえが明治神宮に到着してしばらくしてからの事。祭礼を行うために神官が拝殿の外から列をなして和傘をさして鳥居にさしかかったところ、たまたま鳥居の真下に立って拝殿の偉容を眺めている初老の男性がいました。神官の先頭に立つ警備の方がこの男性に「すいません、ちょっと道をあけてください~」と言ったところ、この男性はなんだか急に不機嫌そうな顔で警備の方を睨みつけてしまって。。

神官の入場に道を譲ろうとしない男性に、後ろから別の警備員が「すいません、ちょっと道を。。」と言いながら男性に手を掛けたら、あろう事かこの男性「触るなっ!!」とすごい剣幕で抗議。結局男性は不機嫌そうに歩き出して神官は鳥居を過ぎることができたのですが。。

神社の大祭に「お客さま気分」で来てご自分の権利ばかり主張したこの男性。。いや、ありふれた「事件」かも知れないのだけれど、ぬえはその前日にも若い人の気になる態度を町で見かけていたので、どうも気になる。今朝の新聞の一面では「東京裁判を知らない人が70%に達し、20代では9割にのぼる」という世論調査の結果が報道されていて。。この国はいったいどこに行っちゃうの。。?