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ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

そのとき ぬえは。。そこにいた。。(その2)

2006-03-22 23:09:25 | 雑談
やっぱり、そこにいたんです ぬえ。

もうずいぶん古い話になりますが、1991年の8月に、その前年にソ連最初の(そして最後の)大統領に就任したばかりのゴルバチョフ氏が、黒海に突き出たクリミア半島の大統領別荘に休暇滞在中にクーデターで軟禁状態におかれた事件を覚えておいででしょうか。結局クーデターはたった3日間で失敗に終わり、砲弾を撃ち込まれながらもロシア連邦議会ビルの前で抵抗を続けたエリツィン・ロシア大統領が一人で目立ったような終結を見ました。クーデターを起こしたのは副大統領以下ゴルバチョフの側近ばかりだったため共産党の権威は失墜して、クーデター翌日にはロシアでは共産党は活動停止、機関紙は発行停止に追い込まれたし、さらにその翌日にはバルト三国が独立したり。もうムチャクチャ。

。。この「8月クーデター」事件の時、ぬえは内弟子の事務仕事の一環として師家の「モスクワ公演」のためにずうっとあちこちの企業や国際交流基金と折衝をしていたところだったのです。それもほぼ公演の概要はとっくに固まっていて、なんせ渡航はこの翌月の9月末の予定でした。(ーー;)

事件の報を聞いてすぐに国際交流基金に伺って「もうダメでしょ?」と聞いてみたところ、やはり「そうですね。。まだこちらでも検討中なのですが。。」というお返事で、ぬえももう半分以上は諦めていました。こちらはイギリスからモスクワへ廻る計画だったので、もう計画全体が音を立てて崩れる状態で ぬえはもう泣きそう。

ところが数日したところで国際交流基金から電話を頂きました。「じつは加藤登紀子さんがやはりこの時期にソ連で公演をされる予定があるのです。加藤さんは『ぜひ実行したい』と強い希望を持っておられますので、それならば能楽の公演もがんばって実施しよう、という事に決定しました」

。。そうですか (@_@;)

結局モスクワ公演は無事に終わりました。観客はとても反応がよくて感激しましたし、商店やレストランもすでに平常に営業していましたが、街中はさすがに争乱の直後だったので暗いイメージでしたね。翌年ソ連が解体しちゃったので、能楽公演としては これがソ連時代には最初で最後の公演となったようです。。でも後日になって分かったのですが、この混乱の時期に決行された加藤登紀子さんのコンサートの計画、というのは、じつはモスクワではなくてウラジオストックだったのだそうです。おいおいっ