ところで、すでに見てきた『保元物語』の冒頭で、『平家物語』にまでつながる天皇たちが登場しています。すなわち白河院、堀河院、鳥羽院、崇徳院、後白河院、近衛院の四世代 六人です。さすがに保元の乱は源平の争乱の時代より20年ほど遡るので、『平家物語』重要な役割を持つ高倉院とか安徳帝は登場していませんが、それでもなんだか ぬえにとってはこの六人の名前には聞き覚えが。。
( ゜o゜)ノハッ
。。そうか、能の本文に出てくる天皇の名前だ。
いわく『殺生石』に出てくる玉藻の前の伝説は鳥羽院に仕える女房の話だし、『鵺』は近衛院を悩ませた怪物。『恋重荷』は白河院の御所での話です。
。。こう考えてきたら能がその事件が起こった舞台として設定している時代について興味を持ったので、ちょっと調べてみました。ちょっと急いで調べたので遺漏や間違いがあるかも。。
【注】能の舞台上でリアルタイムで展開される事件の時代設定、という意味で調べ
ました。たとえば「一ノ谷合戦」という事件は「文治元年」だけれど、『忠度』では
ワキである「蓮生法師=熊谷次郎」が体験した事件なので、その生涯のうちの
いつか、となり、『屋島』ではワキが「諸国一見の僧」なので能としては時代設定
は「不明」となります。
【時代設定がハッキリしている曲】
1)登場人物が実在するか、そう信じられているので時代が自動的に設定される曲
(伝説的な事件も含む)
安宅(文治3) 敦盛(熊谷次郎の生年中) 蟻通(貫之の生年中) 海士(房前の
生年中) 雨月(貫之の生年中) 烏帽子折(治承4) 鸚鵡小町(小町99歳と
すれば延喜頃) 大江山(頼光生年中) 大原御幸(文治2) 景清(文治1以降)
春日龍神(明恵生年中) 鉄輪(安倍清明の生年中) 咸陽宮(前2世紀、秦始
皇帝在位中) 木曽(寿永2) 清経(治承4) 国栖(壬申) 楠露(元弘1)
鞍馬天狗(嘉応頃?) 現在七面(文永11~) 玄象(師長の生年中) 皇帝
(唐代) 小鍛治(永延頃) 小督(治承1以前) 小袖曽我(建久4) 西行桜
(保延6~) 鷺(延喜) 三笑(東晋代、虎渓三笑) 七騎落(治承4) 石橋
(長保5以降) 俊寛(治承2) 俊成忠度(俊成の生年中) 春栄(文治1?)
昭君(前漢代) 正尊(文治1) 誓願寺(一遍の生年中) 関寺小町(鸚鵡小町
に同) 殺生石(建徳頃) 摂待(文治3) 蝉丸(源博雅の生年中) 禅師曽我
(建久4) 千手(元暦1) 卒都婆小町(鸚鵡小町に同) 大仏供養(文治1)
第六天(解脱上人生年中) 忠信(文治1) 張良(秦代) 経正(文治頃) 土
蜘蛛(頼光生年中)東方朔(漢武帝) 朝長(平治2) 仲光(源仲光の生年中)
錦戸(文治5) 白楽天(唐代) 橋弁慶(嘉応頃?) 鉢木(北条時頼の生年中)
花筐(6世紀、継体天皇在位中) 雲雀山(天平宝宇頃?) 藤戸(文治1以降)
船弁慶(文治1) 身延(文永11~) 紅葉狩(平安中期) 盛久(文治2)
熊野(平治頃) 夜討曽我(建久4) 吉野静(文治1) 雷電(延喜~延長)
羅生門(渡辺綱の生年中)
2)架空の説話を典拠としながら、本説の時代背景が特定されている曲
葵上(朱雀院) 安達原(神亀3との伝承) 住吉詣(『源氏』澪標巻) 玉井(神話
時代) 楊貴妃(唐代)
3)登場人物が時代背景に言及している曲
生田敦盛(法然の生年中前後) 江野島(6世紀、欽明帝) 菊慈童(魏) 金札
(延暦) 恋重荷(白河院) 西王母(周穆王) 高砂(延喜=醍醐帝) 忠度(定家
生年中) 竹生島(延喜) 鶴亀(唐代) 天鼓(後漢代) 寝覚(延喜) 氷室
(建治以降) 富士太鼓(文保2以降、花園院) 弓八幡(後宇多院、正応以降)
養老(5世紀、雄略帝)
4)そのほかの理由で時代背景が特定される曲
草子洗小町(ただし登場人物の時代考証はめちゃくちゃ)
【登場人物の氏名が特定されているが不詳な曲】
一角仙人(天竺羅那国の臣下) 鵜飼(身延山から出た僧) 梅枝(身延山から出
た僧) 雲林院(芦屋の某) 老松(梅津の某) 女郎花(小野頼風)柏崎(柏崎殿)
高野物狂(高師四郎) 自然居士(自然居士)須磨源氏(藤原興範の人物が不審)
谷行(師の阿闇梨) 東岸居士(東岸居士) 唐船(祖慶官人) 道明寺(尊性)
鳥追舟(日暮殿) 班女(吉田の少将) 放生川(筑波の某) 望月(望月秋長)
【時代設定が明示されていない曲】(五番立によって区分しました)
〈脇能〉
嵐山 淡路 岩船 絵馬 大社 賀茂 九世戸 呉服 逆矛 志賀 白鬚 代主
難波 輪蔵 和布刈
〈修羅能〉
箙 兼平 実盛 田村 知章 巴 通盛 屋島 頼政
〈鬘物〉
井筒 右近 采女 梅 江口 姨捨 杜若 源氏供養 胡蝶 定家 東北 野宮 羽衣
半蔀 芭蕉 藤 二人静 檜垣 仏原 松風 六浦 夕顔 吉野天人
〈四番目能〉
藍染川 阿漕 芦刈 浮舟 歌占 善知鳥 小塩 花月 葛城 通小町 邯鄲 砧
熊坂 項羽 桜川 隅田川 当麻 龍田 玉鬘 木賊 錦木 百万 船橋 放下僧
巻絹 枕慈童 松虫 三井寺 水無月祓 三輪 室君 遊行柳 弱法師 籠太鼓
〈切能〉
碇潜 車僧 舎利 鍾馗 猩々 善界 大会 大瓶猩々 道成寺 融 鵺 野守
飛雲 松山鏡 山姥 龍虎
んん~ちょっと大変だった割には成果が出たのかよくわからないけど、今まで知らなかった事をいろいろ知った。勉強のタネは尽きないです。
→次の記事 『朝長』について(その3=保元の乱の推移)
→前の記事 『朝長』について(その1の2)
( ゜o゜)ノハッ
。。そうか、能の本文に出てくる天皇の名前だ。
いわく『殺生石』に出てくる玉藻の前の伝説は鳥羽院に仕える女房の話だし、『鵺』は近衛院を悩ませた怪物。『恋重荷』は白河院の御所での話です。
。。こう考えてきたら能がその事件が起こった舞台として設定している時代について興味を持ったので、ちょっと調べてみました。ちょっと急いで調べたので遺漏や間違いがあるかも。。
【注】能の舞台上でリアルタイムで展開される事件の時代設定、という意味で調べ
ました。たとえば「一ノ谷合戦」という事件は「文治元年」だけれど、『忠度』では
ワキである「蓮生法師=熊谷次郎」が体験した事件なので、その生涯のうちの
いつか、となり、『屋島』ではワキが「諸国一見の僧」なので能としては時代設定
は「不明」となります。
【時代設定がハッキリしている曲】
1)登場人物が実在するか、そう信じられているので時代が自動的に設定される曲
(伝説的な事件も含む)
安宅(文治3) 敦盛(熊谷次郎の生年中) 蟻通(貫之の生年中) 海士(房前の
生年中) 雨月(貫之の生年中) 烏帽子折(治承4) 鸚鵡小町(小町99歳と
すれば延喜頃) 大江山(頼光生年中) 大原御幸(文治2) 景清(文治1以降)
春日龍神(明恵生年中) 鉄輪(安倍清明の生年中) 咸陽宮(前2世紀、秦始
皇帝在位中) 木曽(寿永2) 清経(治承4) 国栖(壬申) 楠露(元弘1)
鞍馬天狗(嘉応頃?) 現在七面(文永11~) 玄象(師長の生年中) 皇帝
(唐代) 小鍛治(永延頃) 小督(治承1以前) 小袖曽我(建久4) 西行桜
(保延6~) 鷺(延喜) 三笑(東晋代、虎渓三笑) 七騎落(治承4) 石橋
(長保5以降) 俊寛(治承2) 俊成忠度(俊成の生年中) 春栄(文治1?)
昭君(前漢代) 正尊(文治1) 誓願寺(一遍の生年中) 関寺小町(鸚鵡小町
に同) 殺生石(建徳頃) 摂待(文治3) 蝉丸(源博雅の生年中) 禅師曽我
(建久4) 千手(元暦1) 卒都婆小町(鸚鵡小町に同) 大仏供養(文治1)
第六天(解脱上人生年中) 忠信(文治1) 張良(秦代) 経正(文治頃) 土
蜘蛛(頼光生年中)東方朔(漢武帝) 朝長(平治2) 仲光(源仲光の生年中)
錦戸(文治5) 白楽天(唐代) 橋弁慶(嘉応頃?) 鉢木(北条時頼の生年中)
花筐(6世紀、継体天皇在位中) 雲雀山(天平宝宇頃?) 藤戸(文治1以降)
船弁慶(文治1) 身延(文永11~) 紅葉狩(平安中期) 盛久(文治2)
熊野(平治頃) 夜討曽我(建久4) 吉野静(文治1) 雷電(延喜~延長)
羅生門(渡辺綱の生年中)
2)架空の説話を典拠としながら、本説の時代背景が特定されている曲
葵上(朱雀院) 安達原(神亀3との伝承) 住吉詣(『源氏』澪標巻) 玉井(神話
時代) 楊貴妃(唐代)
3)登場人物が時代背景に言及している曲
生田敦盛(法然の生年中前後) 江野島(6世紀、欽明帝) 菊慈童(魏) 金札
(延暦) 恋重荷(白河院) 西王母(周穆王) 高砂(延喜=醍醐帝) 忠度(定家
生年中) 竹生島(延喜) 鶴亀(唐代) 天鼓(後漢代) 寝覚(延喜) 氷室
(建治以降) 富士太鼓(文保2以降、花園院) 弓八幡(後宇多院、正応以降)
養老(5世紀、雄略帝)
4)そのほかの理由で時代背景が特定される曲
草子洗小町(ただし登場人物の時代考証はめちゃくちゃ)
【登場人物の氏名が特定されているが不詳な曲】
一角仙人(天竺羅那国の臣下) 鵜飼(身延山から出た僧) 梅枝(身延山から出
た僧) 雲林院(芦屋の某) 老松(梅津の某) 女郎花(小野頼風)柏崎(柏崎殿)
高野物狂(高師四郎) 自然居士(自然居士)須磨源氏(藤原興範の人物が不審)
谷行(師の阿闇梨) 東岸居士(東岸居士) 唐船(祖慶官人) 道明寺(尊性)
鳥追舟(日暮殿) 班女(吉田の少将) 放生川(筑波の某) 望月(望月秋長)
【時代設定が明示されていない曲】(五番立によって区分しました)
〈脇能〉
嵐山 淡路 岩船 絵馬 大社 賀茂 九世戸 呉服 逆矛 志賀 白鬚 代主
難波 輪蔵 和布刈
〈修羅能〉
箙 兼平 実盛 田村 知章 巴 通盛 屋島 頼政
〈鬘物〉
井筒 右近 采女 梅 江口 姨捨 杜若 源氏供養 胡蝶 定家 東北 野宮 羽衣
半蔀 芭蕉 藤 二人静 檜垣 仏原 松風 六浦 夕顔 吉野天人
〈四番目能〉
藍染川 阿漕 芦刈 浮舟 歌占 善知鳥 小塩 花月 葛城 通小町 邯鄲 砧
熊坂 項羽 桜川 隅田川 当麻 龍田 玉鬘 木賊 錦木 百万 船橋 放下僧
巻絹 枕慈童 松虫 三井寺 水無月祓 三輪 室君 遊行柳 弱法師 籠太鼓
〈切能〉
碇潜 車僧 舎利 鍾馗 猩々 善界 大会 大瓶猩々 道成寺 融 鵺 野守
飛雲 松山鏡 山姥 龍虎
んん~ちょっと大変だった割には成果が出たのかよくわからないけど、今まで知らなかった事をいろいろ知った。勉強のタネは尽きないです。
→次の記事 『朝長』について(その3=保元の乱の推移)
→前の記事 『朝長』について(その1の2)