犬上川

2010年05月31日 | 滋賀百川




【犬上川と漂着するごみ】

犬上川 2003年7月撮影


  川波の うづの底ひに 身を沈め
  祈りはとは(永遠)の やすらけき村

              井伊文子
 

鈴鹿山脈を源流とする北谷川(きたやがわ)
と南谷川が、多賀町川相(かわない)で合流
し、犬上川となる。名神高速道路と交差する
付近で湖東平野に現れ北西流、中流域に扇状
地を形成する。彦根市南郊をかすめて琵琶湖
へ注ぐ。河口近くに滋賀県立大学がある。源
の谷は愛知川水系との分水嶺・角井峠から来
る。淵瀬連続する谷川で、一枚岩を削る滝も
見られる。源流域の山は植林杉のほか、谷筋
には潅木が生い茂る。百済寺甲地区は川沿い
の区画で細長い。県道188号百済寺甲上岸線が
沿う。


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犬上ダムは昭和9年に着工し、戦争による中
断を経て昭和21年に完成した日本初の農業用
水専用コンクリートダム。警察の治安出動も
見た激しい水争いを契機に作られた。野鳥好
きにはヤマセミ観察ポイントとして知られる。
左写真は左岸に通じる道の「川」。谷を刻む
ほどではない流れはこのように導かれる。こ
の種の道は冠水凹凸道路という。ダムを出て
大杉川を入れたあと川は西に転じ、しばらく
すると北谷が合わさる。北谷に対し本流のほ
うを南谷と呼ぶこともある。



犬上川は谷口に扇状地を開く。伏流が激しく、
彦根に入ってすぐの地点でも涸れ川なことが
多い。中山道に架かる高宮橋。「無賃橋」の
名は天保年間に架けられた橋が課金されなか
ったことによる。


この頃になると6月下旬頃まで小鮎釣りで楽
しめる。家の近くにあるため早朝か夕暮れ時
に出かけ釣るが、ヤブ蚊よけに蚊取り線香は
必須アイテム。



河川は土砂が堆積し、カワヤナギやコゴメヤ
ナギ、タチヤナギが自生する。先日(29日)
は県立大学の春期公開講座、倉茂好匡(環境
科学部教授)の「琵琶湖とその周辺に散らば
るゴミの話」を受講。大変面白い話を聴かせ
ていただいた。特に、による気
象変動による集中豪雨(ゲリラ雨)による出
水が多くなると予測されるだけに犬上川沿岸
部より流入してくる大量ゴミの除去清掃は問
題となるだろう。ゴミが漂着する湖岸や水辺
は必ず景観劣化を促進させる。逆に、ゴミ1
つない景観は自律的に美化が進むというのが
これまでの経験だ。

 倉茂好匡(くらしげ よしまさ)





カワヤナギ

【犬上川と生態系】



湖岸から山まで川沿いに林が続いていて、そ
の林は生物達にとって山と平野をつなぐ緑の
回廊。大学の近くの林は特定植物群落のタブ
林で、その中にはキツネやタヌキが生息。ま
た、川には危急種のハリヨや希少種のビワマ
スををはじめとしたいろいろな魚が見られる。
特に春~夏にかけては、東は愛知、西は大阪
からも多くのアユ釣りの人が訪れる。



犬上川と洪水

Hannokihayasi.JPG

犬上川は河口付近の川幅が上流に比べて狭く、
下流に行くほど流下能力が小さくなっている。
全体計画区間を河口から東海道新幹線までの
6.3kmとし、平成2年の台風19号による洪水
経験(河口の犬上川橋が流失)から洪水防御
できるよう、100年に1回程度の頻度で発
生する洪水を安全に流下させることを目標と
して現在、特に流下能力の小さい開出今橋よ
り下流の整備が進めている。工事の実施にあ
たっては、自然環境を極力保全するため、犬
上川の特徴である河畔林(タブ林)を可能な
限り残す計画という。
タチヤナギ

 

クマノミズキ

ファイル:Fuwanoseki2.JPG

【犬上川と壬申の乱


 時、近江命山部王・蘇賀臣果安・巨勢臣
 比等、率數萬衆、將襲不破、而軍于犬上
 川濱。山部王爲蘇賀臣果安・巨勢臣比等
 見殺。由是亂、以軍不進。乃蘇賀臣果安、
 自犬上返、刺頚而死

             『日本書紀』             

古代史最大の内乱、壬申の乱が
勃発する。672
年7月、近江朝廷大友皇子側は、数万の大軍と
共に犬上川(滋賀;甲良~彦根~琵琶湖に流
れる川)のほとりに陣取る山部王。精鋭の将
軍達と大海人の軍を迎え撃つ。このとき、大
友軍の精鋭部隊が不破の北西側を奇襲するが、
大海人軍の出雲臣狛(いずものおみこま)部
隊の抵抗で撃退される。初めての戦いだった
という。その地は玉倉部村(たまくらべむら)
、滋賀の醒ヶ井か関が原ではと推測されてい
る。朝廷内では内紛が発生し、犬上川に陣取
る山部王が惨殺される。内紛に嫌気がさし、
大海人軍に投降者が相次ぎ、湖西側から大津
に向かって進撃した、高島軍辺りの山城(三
尾城)で朝廷軍と遭遇し撃破される。

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【出典】



(1)伏見碩二「
環境生態学科のひとつの歩み
  -犬上川からの視点で-」
(2)「
犬上川の人柱『お丸』」


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