ビオトープⅨ

2010年05月09日 | ビオトープ





ビオトープ計画管理で取り扱う主題

6)小川の設計・施工と育成管理

白山比め神社の延命水「白山延命水」

谷戸の左右や片側には水田に取水する小川が
設置され、グンジボタルや、小川から水口に
行き来するドジョウやメダカなど、多種の生
物が生息する。しかし、コンタリートで護岸
や川底を回め自然河床を失った所、手入れざ
れず立木や高茎草本で、水面が閉鎖し、砂泥
や倒木などの控積で流路が崩壊した所もある。
生物の生息地を,1復させるためには、人工河
床には植生を形成させ、樹冠などで閉鎖した
小川では植生管理を再開する必要がある。



❶ 計画設計

Geothelphusa dehaani 01.jpg サワガニ

現地に形成する流路内の瀬や溜まり、砂州な
どの形状、水質、土手植生の初期施工、育成
管理について検討を行う。動植物は光に反応
するため夜間照明を設置しない。

(1)小川の育成計画モデル



自然河床を持つ小川では砂州 瀬、淵〈溜ま
り) が流下する水流の力によつて自然形成さ
れる。流速毎秒10~40cm水中の溶存酸素6~
10mg/l、Ph7~3
を示す中性から弱アルカリ性
BOD5 2~ 3mg/l 程度の小川の場合、

Nipponocypris temminckii.jpg

●淵:アブラムシやカワムツなどの点類ケン
 ジボタルやコオニヤンマ、ヘビトンボなど
 の幼虫カワニナが(ゲンジボタルの幼虫の
 観)生息する。
●砂州の水際付近:ダビドサナエオジロサ
 ナエオナガサナエなどの幼虫が生息する。
●クサヨシなどの抽水植物が生育する淵や溜
 り:
カワトンボ類(ミヤマカワトラボ、ハ
 グロトンポ、カワトンポなど)や
ドンコ
 
カワヨシノボリなどの魚類、サワガニが生
 息する。
●瀬:
トビゲラカワゲラの幼虫サワガニの
 亜成体、サワガニなどが生息する。



❷ 施工伽工準備、基盤整備のポイント

初期施工の適期は、生物活動が鈍る晩秋から
冬季。流下水は砂州や溜まり、瀬を流路に自
然形成する。勾配、流量などから各部位の形
成箇所を予測し基盤整備に活用。



(1)植生によって閉鎖した小川修復

初期施工では、立木伐採、水際に密生化した
ヨシやササ類の刈取りと除根を実施。この時、
水面に日陰を落とす立木を部分的に残存させ
る。

(2)素堀り水路小川化

流通が早い場合や夏期に瀬切れしやすい場合
には、魚類の遡上を阻害しない程度に、低い
段差を土のうなどにより形成し、水域を形成
する。

(3)自然河床が消失した小川修復

植生土のうや布団籠を組み合わせ、出水時に
流亡しない植生の定着基盤を設置し、水生生
物が生息する砂州や溜まりなどを自然形成さ
せる。


●河床への土豪設置による構造回復

コンクリート3面張りの水路では河床に土の
うなどを並べ、瀬と淵、砂州が自然形成され
るよう骨組みを入れる。

❸ 育成管理

小川の沿岸に育成する植生は、タイプ毎に現
地で竹串など土面にさして区分けする。トン
ボやホタル成虫などの採餌場、避難場を形成
するため、植生は、地上に凹型の空間構造
が形成されるよう各タイプを組み合わせ配置
する。年1~2回土手の車刈りを維続し、4~5
年に1回推積した砂泥の掃除と搬出を継続する。
積堆砂泥は、付着した水生生物を水域に戻し
てから搬出処分する。沿岸の立木については、
小川への太陽光の入射と水面上の空間確保の
ため、2~ 3年に1回枚打ちや間伐を維持する。
立木の若返りを図るとともに、周辺環境に対
する影響に配慮し、専門技術者に依頼しなく
ても伐採可能な段階で萌芽更新させ、樹高や
枝張りの拡大を抑える。伐採周期は樹種によ
っても異なるが概ね 5~10年の間隔である。

7)溜池の設計・施工と育成管理



溜池の多くは湛漑用水を得るため、谷戸の源
頭部などに設置されている。耕作放業などで
使用が停止した池では、取り巻く立木の樹冠
や杖葉が水面を覆い、暗く水温が上がらず、
上空から水面を確認できないこともある。水
底には落葉落枝や砂泥が堆積し水位低下で干
上がる池もある。ヨシやハンノキなどが定着
し、根系が池底の道水層(粘上層)を破り漏水
する池も多い。一方、イシガメやメダカなど
の生物やヒツジグサやマルバオモダカの絶減
危惧種が確認されることもある。

❶ 設計(施工準備、基盤整備の実際施工のポイン)

初年は早春~秋季の事前調査で動植物を確認
する。現地の集水量や土質、生息する生物に
よって施工の途中段階での設計変更が起こる
ため、底上、水位、エコトーンの植化、周辺
植生、導水同、排水日などに関する施工内容
は概略設計にとどめる。



❷ 施工の実際

絶減危慎種などは事前に採取して一時保管。
竣工後に適切な場所に放流や植栽する。施工
適期は晩秋から冬季。施工重機など搬入時に
は現地の表土や動植物の保全に努める。


 
エコトーン

(1)対象地の概略設計

加工現場では、現地の微地形や植生、上質、
水質、時期毎に変化する湧水量等に合わせて
概略設計図の詳細を検討し、その結果をもと
に作り込んでいく。源頭部からの湧水は床掘
り中の溜池に入ると、ぬかるみをつくリユン
ボの作業に支障をきたす。そのため、湧水は、
流入前に、下方右最上段にポンプとホースを
使って排水すると湖水にはならず、下流の沢
を汚すこともない。沿岸のエコトーン形成用
の上のうの配置、積み上げる高さは、水域の
修復が進み、平常水位における水際線が明ら
かになってから、現地で決める。

❸ 育成管理

動植物や水位などをモニタリング調査し、堆
積した落葉落技や砂泥、土手植生、存置した
立木、導水・排水口などに対する定期的な管
理が必要。土手植生の形成を図るためには、
少なくとも年2回、夏季と秋季の刈払いと刈
りくずの搬出作業を行なう。

ブラックバス

※特定外来種、要注意生物
代表的な水域の対象生物

Cleaned-Illustration Myriophyllum spicatum.jpg

●水生生物:ブラックバス、プルーギル、ウシ
 ガエル、アメリカザリガニ
●水生植物:ホテイアオイ、オオフサモ、カナ
 ダモ類、ミズヒマワリなど

Gymnocoronis spilanthoides1.jpg Water hyacinth.jpg

対象地の生態系形成を阻害し、在来種の摂食
による衰退を防ぐために、侵入を防止。侵入
した場合は徹底した駆除を継続する必要があ
る。

Wasserpest.jpg

※「自然環境シミュレータビオトープをつくろう
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【注釈】

生物多様性の実現領域としての修景の設計と
施工の基本的な知識を俯瞰してきたが、今回
の考察を持って一応のけじめとする。自然背
景の奥深さを感慨するものの、「修景」のや
り方についてある種の違和感を持ってここま
で来たが、最後まではそれは払拭出来なかっ
た。そのことに関してはまた考察してみたい。
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