虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

宗教はアヘン、では愛国心とか民族意識は?

2007年10月11日 | 映画感想は行
いろいろありまして、PC立ち上げるのも4日ぶり、WEBメールは満杯状態でした。本当にいつもの生活に戻れるのはいつでしょう。またまた家の中の整理を迫られていて、DVDや本をもっと減らさなくてはいけません。誰かもらってくれないかな。

ヒトラー ~最期の12日間~(2004/ドイツ)
監督: オリバー・ヒルシェヴィゲル オリヴァー・ヒルシュビーゲル
出演: ブルーノ・ガンツ    ヒトラー

「白バラの祈り」でゾフィー・ショルの最後の数日を見て、そしてこの映画を見ると、戦後60年たってあの戦争についての映画では、私の感想では日本映画はドイツに負けてるな、と思ってしまいます。

 この映画でのヒトラーはもはや追い詰められた男です。見た目にも力強さやカリスマの輝きはありません。八方塞の状況のなかで苛立ち、国家を率いる力が残っていないのは明白です。
 周囲も敗れることを前提に行動しだしています。もう総統ヒトラー死後の連合軍との駆け引きを甘い見込みと妙な期待で考えるものもいます。
 しかし、敗色濃いベルリンの街の混乱はそれ以上で、ナチスのプロパガンダにとらわれた者は死に急ぎ、ある者はそれに乗って暴力性残虐性を露わにし、またヒトラーを前にして「勝利へ導いてください」と叫びます。
 思い出すのが、レニ・リーフェンシュタールのナチスの記念大会の記録映画。第1次大戦後のドイツが徹底的に沈んでいた時に民族の誇りを称揚するようなすばらしい映像で、やっぱりリーフェンシュタールの才能のすごさを感じると共に、危険さも思い知らされます。 
 そういった状況下である程度不況脱出の結果を出したヒトラーとナチスに抱いた「この人についていけば大丈夫だろう」という期待は捨てられないだろうし、日本もそうだったけど、それに「愛国心」とか「民族の誇り」という本来善きものがセットになっているので、なかなか呪縛から逃れられない。

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 「失われた時を求めて」を探していて、フランス小説をまとめた箱から「チボー家」が出てきたので、ここ数日この長い小説を飛ばし飛ばしながら読んでいました。この映画で、この小説の中の社会改革に燃える青年たちが開戦の知らせで一瞬にして愛国青年に変わってしまうシーンを思い出し、また「大いなる幻影」を見た時にもそのシーンを連想したことも思い出しました。
「カラきょう」もいいですが、これも絶対読んでおきたい本だと思うんですが。やはりジャックのあまりにも無残な死には泣いてはいけないような厳しさがあり、戦争で死んでいったものたちの、その死の空しさをきちんと描いた反戦小説の最高傑作のひとつです。

 カール・マルクスは「宗教は逆境に悩める者の嘆息であり、また、それが魂なき状態の心情であると等しく、無情の世界の感情である。つまり、それは民衆のアヘンである」と書いています。マルクスの時代ではアヘンは恐ろしい麻薬としてよりはトランキライザ-的な認識だったみたいです。今はどうでしょう?
 冷戦構造終結後の各地の民族紛争で、いや冷戦関係なくずっと続いてるのもありますけど叫ばれる「民族」とか、愛国心って、ドラッグ以上に効いている人もいるみたいではありませんか。