虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

ロボッツ (2005/アメリカ)

2006年02月01日 | 映画感想ら行
ROBOTS
監督: クリス・ウェッジ
声の出演: ユアン・マクレガー    ロドニー・コッパーボトム
     ハル・ベリー    キャピィー
     ロビン・ウィリアムズ     フェンダー
     メル・ブルックス    ビッグウェルド博士

 ロボットたちの社会のお話。リベット・シティで貧しいけれど優しい両親に育てられたロボットのロドニーは、発明家志望。自分の夢を叶えようと、憧れの発明家で大会社社長ビッグウェルドのところへと旅立つ。しかし、ビッグウェルドには会えず、そこでは後継者によって中古ロボットを一掃してしまおうという計画が進められていた。

 映像は凄かった。これは家のテレビでなくもっともっと大きい画面で見たらすんばらしいだろうなあという映像。
 でもお話が…大人にも子どもにも配慮したせいなのかな、ちょっと中途半端な感じ。お話は単純明快で勧善懲悪、テンポも悪くないのにどうも「冗長感」があるのね。
 やはり、各中古ロボットキャラのダメダメ状況をもっと描き込んで、ロドニー以外にもそれぞれに強烈な動機があるってことで最後にダメダメ組が新品ぴかぴかに大逆転!ザマーミロ!にしてくれたほうがよかったなあ、私は。
 そこここにみられる映画パロディは子どもじゃわからないだろうと思うけど、この映画みてだんだん古い名画見ていってそのシーンにぶつかった時に面白がればいいのかな。ええ、ビッグウェルドの「デイジー…」には思わず吹きましたけど

レジェンド・オブ・ゾロ (2005/アメリカ)

2006年01月25日 | 映画感想ら行
THE LEGEND OF ZORRO
監督: マーティン・キャンベル
出演: アントニオ・バンデラス    ゾロ/アレハンドロ・デ・ラ・ベガ
    キャサリン・ゼタ=ジョーンズ    エレナ・デ・ラ・ベガ
    ルーファス・シーウェル   アルマン伯爵
    ニック・チンランド    ジェイコブ・マクギブンス
    アドリアン・アロンソ     ホアキン・デ・ラ・ベガ

 カリフォルニアがアメリカの州になるかどうかの住民投票をしていた頃、民衆の英雄ゾロ(アレハンドロ)は、喝采に迎えられ活躍していた。しかしその妻は家族のために危険なヒーロー稼業はやめるように迫る。そして勇者にあこがれる年頃の息子は父親をふがいないと思っている。そんな時、夫婦喧嘩の末に、アレハンドロは妻のエレナから離婚請求されてしまう。

 なんかね~、前半のまるでソープオペラの如き家庭内のいざこざは強引な辻褄あわせに見えました。コメディタッチでちょっとくたびれたヒーローご夫妻の様子はなかなか面白かったんですけど、あの初代ゾロの娘、自分だって十分強い奥様がなんだって夫に危険なことは家族のためにやめろ、というのか、もうすこ~し強力な動機付けがないと唐突だと思う。
 それにしても、この「日常生活とヒーロー活動の両立に悩む」というのは、スパイダーマンのほうが上手でした。前作から周囲に小突かれやすいバンデラスのゾロですが、この映画ではますますおちょくられてます。

 でもこの映画、みんな闘ってます。主人公は一家全員、神父さんも、ただの住民もみ~んな勇敢に戦ってしかも強い。
 後半のアクション畳み掛けになるとさすがにワクワクドキドキ、楽しませてもらいました。
 それで、この主人公、ワルモノに止め刺しません。悪者はすべて天の配剤みたいにめぐり合わせで命を落します。あらまあ、です。家族の映画になったら、家族で見ても大丈夫路線になったのかしら。
 面白かったりカッコいい絵もあるし、見終わってパチパチ拍手できるくらい満足はしたのですが、悪役のトップがあまりにあたりまえすぎ。その配下の鎌様武器男のほうが激突バトルとしては面白そうなのに、奥さんに任せちゃ駄目じゃない。やっぱりラスボス前の決戦として主人公がこれを片付けてラスボス対決に行きませんと。あ、様式を求めちゃいけないかな。

 キャサリン・ゼタ=ジョーンズはいつもの「一筋縄ではいかない感じ」が素敵でした。ゾロJrが可愛くて生意気で良かったです。トルネード、もっと演技させてあげてもと思っちゃった。

ランド・オブ・ザ・デッド (2005/アメリカ、カナダ、フランス)

2006年01月02日 | 映画感想ら行
LAND OF THE DEAD
監督: ジョージ・A・ロメロ
出演: サイモン・ベイカー    ライリー
    デニス・ホッパー     カウフマン
    アーシア・アルジェント     スラック
    ロバート・ジョイ     チャーリー
    ジョン・レグイザモ     チョロ
    ユージン・クラーク     ビッグ・ダディ

 人間の肉を喰らうゾンビに占領された世界で、人間は要塞のような都市に閉じこもって暮らしていた。その中でも階級が出来上がり、金が社会を支配している。下層の人間の間で不満が積もっていた。そんなとき、ゾンビの間にも変化の兆しが見られた…

 う~ん、う~ん、これは、今までのゾンビ映画のその次、なので「何でこんなことに!?」「これからどうなる?」「先が見えない!」という悲鳴の様な、先行きの見えない絶望感とか、緊迫感という、今までのゾンビシリーズで一番手に汗握っちゃった部分のドキドキが薄い。テーマが違って「ゾンビも出てくるフツーのパニック映画」みたいな感じになってしまった様で今ひとつ乗り切れなかった。やっぱりゾンビにはある期待を持ってみているのだろうなあ。その点ではサラ・ポーリー主演版「ドーン・オブ・ザ・デッド」のほうが、ハイスピードなゾンビに違和感はあるにしても私の期待するゾンビ映画であった。予断を持って待ち構えて映画を見るというのも邪道ですが…

 やはり今度は、世界の設定がブレーキをかけた様に思う。ゾンビ蔓延後の世界でも、支配ー被支配階級が厳然として存在し、貨幣が価値を保っている…どう考えても現物、特に食料こそ一番価値がありそうなのに。だったら、どうしてそうなのかもっと納得させてほしいなと思う。集団としてまとまるためにそうなってしまった必然性をもっと説明するとか。
 それに学習するゾンビ、って、まったく意思疎通がなく、ただ目の前にあるものに襲い掛かるのがゾンビの怖さだから、思考力を持ったら怖いのかどうかよくわからない。
 これはシリーズで続くらしいけれど、この次を見ないとこの変化が吉か凶か判断出来ない。
 私はあんまりよくないんじゃないかと思う。
 ところでロメロ監督の映画は、私の苦手なスプラッタでえぐい場面でも、なぜか不思議と目をつぶったりせずに見ていられる。今回もそう。やはりロメロスタイルなんでしょう。

 今度のDVDでは、オープニングで「このDVD中の発言は、その発言をした個人の見解であり、会社等は関係ない」とありますが、特典のメイキング映像のデニス・ホッパーとロメロ監督の言でそれを納得。メタファーをあんまりあからさまにするのもどうかとは思います。

ラブ・アクチュアリー (2003/イギリス、アメリカ)

2005年10月02日 | 映画感想ら行
LOVE ACTUALLY
監督: リチャード・カーティス
出演: ヒュー・グラント     英国首相デヴィッド
    リーアム・ニーソン    ダニエル
    エマ・トンプソン     カレン
    アラン・リックマン     ハリー
    コリン・ファース     ジェイミー
    ローラ・リニー     サラ
    キーラ・ナイトレイ   ジュリエット

 クリスマスを目前にしたロンドンを舞台に、様々な階層の、様々な年齢層の男女が織りなす恋愛・家族愛・友情など確かにこの世に存在している「愛」を同時進行で描く心暖まる群像コメディ。

 乾いた時代とはいえ、いつでもそばにある人間同士の愛情といたわり合いの優しさを豪勢な出演者で描くやわらかいメロディになごませられるような気のする優しい映画だった。皮肉もあるけど、効き過ぎは無し
 ちょっと気持ちが疲れていたせいもあってか、涙腺をいっぱい刺激されてしまった。
 自分の生き方を曲げられないために遂げられる寸前で壊れてしまった片思いや、賢い、地の塩のような妻の感情の揺れ。言葉が通じなくても心の触れ合える相手を見つけた実感。亡くなった妻の連れ子と改めて育んでいく親子としての、人生の先輩後輩としての愛情。友人の妻に恋した男の精一杯の行動…
 確かに、この地上に愛は存在している。
 クリスマスという(キリスト教社会では特に)気持ちが優しくなる特別な時期に、素直にハートに感じたい映画。ちょっと私は時期はずれだったかも。でもとっても優しくて生きていくことを肯定したくなるような映画。

 人選も素敵。それにしても、すさまじく渋いオトコマエの揃ったPTAでございましたね、あの学校。
 ビル・ナイのかっ飛びぶりも笑えてよかったです。

ロング・エンゲージメント (2004/フランス)

2005年08月29日 | 映画感想ら行
UN LONG DIMANCHE DE FIANCAILLES
監督: ジャン=ピエール・ジュネ
出演: オドレイ・トトゥ    マチルド
    ギャスパー・ウリエル     マネク

 第1次大戦当時。恋人のマネクの戦死の報を聞いたマチルド。だが彼女は「恋人が死んだら私にはわかる」という自分の直感を信じ、マネクを探し続ける。

 これは、何度も何度も予告編を見て、結局映画館では見られなかった映画。予告編では思いっきり感動作なムードだったが、これはジンとはするものの、やはり、ジャン=ピエール・ジュネ監督の映画だった。さすがオドレイ・トトゥで、一筋縄ではいかないわが道を行くヒロインである。そのうえでみんなを協力させてしまう、また自分の弱みさえ利用するパワーも納得させてくれる。
 やはり画面の印象が美しい。色目は抑えてあるし、それほど多くの色を使っていない。それに強い色・深い色を注意深く制限してあるようで、それだけに闇の色が2箇所ほどすごく印象が強い。衣装や背景がくすんでいるのに肌の色がきれい。
 それに、きつすぎないテンションのサスペンスが、マネクと共に死地に丸腰で置き去りにされた恋人の仇を討つティナ・ロンバルディ役の武器なんか、いかにもジュネ監督らしいと思う。
 塹壕のどぶ泥のような状況もすさまじく「西部戦線異状なし」を連想させるようで、実に戦争と市民のかかわりに、架空戦記などのヒロイズムと無縁にリアルに迫るものだったと思う。
 ティナ役マリオン・コティヤールの美しさにも瞠目。ジョディ・フォスターもさすがで、彼女の役にピタリとはまりこんでいた。

ルビー&カンタン (2003/フランス)

2005年07月06日 | 映画感想ら行
TAIS TOI !
監督: フランシス・ヴェベール
出演: ジャン・レノ  ルビー
    ジェラール・ドパルデュー 

 恋人を殺されたルビーは、裏社会のボスから大金を奪い、恋人の復讐も果たそうとしている。金を隠し警察に捕まったルビーは、そこでまったく場が読めずにしゃべり倒してはトラブルばかり引き起こしているカンタンという男に勝手に親友にされてしまう。
 ルビーの周到な脱出計画も、カンタンの用意した計画に先回りされ、一緒に警察とボス一味にともに追われることになる…

 ヴェベール監督は私には肌に合うのかもしれない。「奇人たちの晩餐会」も、「メルシィ!人生」も面白かった。フランスコメディでも「ミッション・クレオパトラ」は「どこがおかしいのかわかるけど笑えない」という不思議な映画だったが、これは爆笑なしだけど自然に笑えた。ドパルデューはさすがで、頭の回線が少し切れちゃった「奇人」が活き活きしてます。
 カンタンは「まっすぐで、裏のない、ためらいもない」という、実生活上では実に実にはた迷惑な、付き合うにはほんとに困っちゃうだろうな、という人間。それをドパルデューがいかにも、のリアリティ感じさせてくれて感心しきりです。ジャン・レノは人に合ってる役。
 ジャン・レノのルビーにとってはめぐり合ったが災難で、とんでもない男になつかれてクールなアウトローが調子が狂ってしまう、そして結局その奇人パワーに巻き込まれてしまう様子が期待通りでおかしい。でも、これも双方にとって運命的な出会いだねえ、と思わせちゃうのは俳優さんたちの力量でしょう。
 アクションは量も控えめでオーソドックスなので、結構ピシッと決まっていますが目立たない。車談義やギャグも、二人の逃走に絡んでいくチンピラさんたちのシーンもかなり面白かったけれど、やはり主役がきっちり笑わせてくれます。ラストも予想通りだけど、これでないと納まらない感じはします。

 この映画も「奇人~」や「メルシィ~」ほどはストレートじゃないけど、人間て、相手に自分の思考を投影してしか判断してないなあ、なんてことも考えてしまいました。

ロスト・チルドレン (1995/フランス)

2005年06月24日 | 映画感想ら行
LA CITE DES ENFANTS PERDUS
監督: ジャン=ピエール・ジュネ
   マルク・キャロ 
出演: ロン・パールマン 
    ジュディット・ヴィッテ
   ドミニク・ピノン
    ダニエル・エミルフォルク 

 不気味な一つ目軍団、クローン人間の群れの跋扈する荒廃した近未来を思わせる世界で、心は子どものままの怪力大男の小さな弟がさらわれる。必死に行方を追う男の前に子どもの盗賊団の顔役のような少女が現れる。二人は不思議にお互いに気になる…
 
 この前、「シックスストリングサムライ」の話題が出たときについオンラインレンタルDISCASに予約しちゃった映画。昨年の9月予約でまだ来ないのもあるのに、さっさと来ました。「シックスストリングサムライ」が突き抜けたように広い空の下に乾いた暑い風を感じるようなのに比べ、これはふたをしたような垂れ込めた空と湿気に満ちた映像であるにも関わらず、同じにおいを感じてしまう。もちろん映像的にはこちらのほうがずっと美しいと思う。
 好きなものを集めて丹念に作りあげたジオラマ世界が、実際に動き始めたような現とも夢ともいえない奇妙な感覚。ちょっとゆがんだ登場人物。頭の中の暗いほうの隅っこにもやもやと集まっていた怪しい不思議なものと響きあう…みたいな、どうも既視感を感じさせるパーツが揃っている。
 夢をむさぼるエピソードもマッドサイエンティストよりもビーストテイル的。だからどんなことでもあっさりと起こる。あのヒロインの涙が窮地を救うことになるのは、まさにすばらしいオトギバナシ的連鎖の世界ではありませんか!

 ヒロインの少女がいかにも子どもなのに、そのくせ大人の女の顔が仄見えるのがすごい。無理した背伸びのませた子どものこわばりを感じない!ロン・パールマンの魁偉さが可愛く見えてくる。

レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語 (2004/米)

2005年05月12日 | 映画感想ら行
LEMONY SNICKET'S A SERIES OF UNFORTUNATE EVENTS
監督: ブラッド・シルバーリング
出演: ジム・キャリー エミリー・ブラウニング リーアム・エイケン カラ・ホフマン シェルビー・ホフマン メリル・ストリープ

 裕福な家で何不自由なく育ったボードレール家の3きょうだい。長女のヴァイオレットは発明家で14歳。クラウスは本の虫。末っ子のサニーはまだ赤ちゃんで噛み付き屋さん。彼らは火事で一度に家と両親を失い、親戚だというオラフ伯爵に引き取られる。しかし伯爵の目当てはきょうだいの財産で、彼らを亡き者にしようとする…

 画面は美しくて、作りこんでありました。初めと終わりのアニメも楽しかったし、ほんとに隅々まできっちり作ってありました。ジム・キャリーの「過剰さ」がうまい! ナチュラルっぽい彼も素敵だけど、やっぱ過剰キャラクターが演じられる彼が好きです。ただ映画としての構成が…ちょっと不満が… 私は原作がけっこう好きでして、映画のつくりについて言うと文句のための文句になってしまう恐れもあるので念のためご承知置きください。

 このお話では、出てくる大人は邪悪な伯爵と、彼らを守りきれない善良でぼんくらな人々で、「そんなのありか?」というこじつけたように理不尽な状況が子どもたちを次々追い込んで行き、子どもたちは自分たちの力でそれを次々に跳ね除けていきます。それがお約束で、映画でもそこはわかるんだけど、子どもパワーの発揮の合図が言ってみれば水戸黄門印籠シーンのようにもっと印象的に出て来て欲しい、とかつい願ってしまう。それに、本のなかのわざと難しい言葉の薀蓄を織り込んだり、くどかったりの饒舌な語りの面白さを入れたかったのだろうけど、う~ん、あれで良いのかな~
 何の解説もなしにココナツクリームケーキが映ってたし、あれは明らかに原作ファン向けのシーン。わかる人はわかってください、なのかな?
 たとえば、昔のサイレント映画みたいに危機一髪!のシーンで何かお決まりなアクセントが入って次にホッとするの繰り返しを印象付けるような構成でもう少しスピーディーにして、休符のようにくどくどとナレーションがとか…(すいません素人のゴタクです)

 未解決の謎は残したままだし、続編は当然あると思うのだけど、次作はクラウスが眼鏡かけてくれるのかな?ヴァイオレットのリボンと同じように、クラウスは眼鏡が頭脳フル活動開始の合図。サニー役(かっわい~!)が育ちすぎないうちに何とかお願いします。
 でも最後の切り絵風アニメーション、ほんとにきれいで楽しかった。ジム・キャリーの持つ新聞の「千の顔を持つ男」ロン・チャニーにはご挨拶しちゃいましたわ!うふ

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ついでに


一冊目のカバー絵はあのシーンです。
でも、本では高いところで必死にがんばるのはヴァイオレット。

列車に乗った男 (2002/仏・独・英・スイス)

2005年05月11日 | 映画感想ら行
L' HOMME DU TRAIN
監督: パトリス・ルコント
出演: ジャン・ロシュフォール ジョニー・アリディ 

 くたびれた革ジャン姿の中年男ミランが列車から降り立つ。ドラッグストアでアスピリンを買ったミランは、そこで狭心症の薬を買おうとしていた初老の男マネスキエと出会う。声をかけてくるマネスキエに、その廃墟一歩手前のような家に一緒に行って、ホテルが見つからないミランは3日間そこに泊まることにする。

 三日後にそれぞれ重大事を控えた男二人の人生が交錯する。
 一人は波乱に満ちた、一人は穏やかな時を過ごしてきた二人が、しかしどちらも満たされない思いを抱いてその特別な日を迎えようとする。その日は、二人ともそれぞれしに直面しなければならないのだ。お互い、満たされなかった部分を相手に投影して二人のやり取りはまるで自分の喪失を埋めようとするような感がある。革ジャン・タバコ・ピアノ・部屋履き・射撃・バルザック… そして詩はいかにも象徴的。そう、闇に包まれた自分の行く手を見ようとするときに、今まで見ようとしなかったものが目に入ってくる…
 ラストは見たとおりのものだろうか。あの目覚めのアップの時間の長さからも、あれは死に行くものに許された夢の交錯とも思える。二人の顔がめちゃくちゃに語っているから、そう思えてしまう。

 音楽の列車のリズムがすごく残る。

ロボコン (2003/日)

2005年04月29日 | 映画感想ら行
監督: 古厩智之
出演: 長澤まさみ 小栗旬 伊藤淳史 塚本高史 鈴木一真

 高専に通う里美はやる気ゼロの落ちこぼれ生徒。1ヵ月の居残り授業を免れる条件として教師から“ロボット部に入って、ロボコンに出場する”ことを提案される。居残り授業よりはマシと、仮入部するが、地方大会優勝常連の第1ロボット部でなく、部員3人、一人は幽霊部員の第2ロボット部。里美はいきなり操縦担当になり、地方大会へと出場するのだったが…。

 今をときめく長澤まさみちゃん、かわいいです。オープニングのだらけきった顔も良かったです。
 ストーリーは、はみ出しダメダメチームががんばって優勝してしまう、その経過で自分に目ざめるというまったく伝統的スポ根ドラマ形式。地道ながんばりやだけど、主張できなくてついパシリになってしまう部長、実力があるがコミュニケーション不全症の設計担当(小栗君、かわいい)など、見事に常道なキャラ、敵役に憎たらしい第1ロボット部さんも出てきてほとんど様式美のようなものも感じてしまう。それが気持ちいいんですけど。

 ほにゃほにゃした音楽がまた、熱血未満の感じでこの映画らしくて良かった。お母さんお写真ギャグもけっこう好き。
 でも、この映画でどことなく感じるのは「飢え」。みんな、自分でも意識しきらない何かを待ってて、自分をぶつけたがってる…って感じ。それは成長のために必要なことだけど時として危険なことでもあるのですよ。そして、これが無いと青春ものにはならない。

ローレライ (2005/日)

2005年03月13日 | 映画感想ら行
監督: 樋口真嗣
出演: 役所広司 妻夫木聡 柳葉敏郎 香椎由宇

 福井晴敏の戦争サスペンスの映画化。
 特攻に反対したため臆病者とされ、干されていた海軍の絹見少佐は、中枢の朝倉大佐から広島に次ぐ日本への原爆投下を防ぐためにドイツから来た潜水艦イ507で爆撃機の基地を攻撃せよとの命令を受ける。
 その艦には、「ローレライ」と呼ばれる新型兵器が搭載されていたが、それは艦長である少佐にも秘密にされていた。

 この映画にも、めちゃめちゃ泣きました。
 ほとんど涙の切れ間無し状態でしたが、映画で感動していたかといえば、それはまた別問題。
 もちろんそこそこいい映画ではあったのです。ベテラン俳優の演技はたいしたものでした。
 やっぱり原作と切り離して考えないと、不満積みあがっちゃう。だって鶴見真吾の大湊中佐なんて、何のためにでてきたかよく分からないくらいの出番しかない!全体に緊迫感甘いのだ。圧迫感より清潔感感じた潜水艦生活だったし。
 映画なんだから、もうちょっとお話刈り込んでも良かったですかねえ。その分、野球のお兄ちゃんとか、もっと描き込んでおくとか。やっぱりヘアスタイルは気になりました。西宮大使の刺客になる兵隊さんはいくらなんでも長すぎでしょう。若い兵たちのルックスとパウラのコスチュームで時代感がかなり飛んじゃってました。
 一番の違和感は空気。戦争末期のものには写真や手記を見るだけでもどうしようもなく迫ってくる独特の空気があるのだが、それが希薄なのだ。
 戦争映画でなく、SFなのだ、と言い聞かせてもなお、それを探しちゃったのである。
 それに映画としても、あんな思い入れたっぷりシーンを持続させるよりも、もっとサスペンスをきっちりと積み上げて欲しかった。

 これだけ突っ込みまくりで、それでも泣けて仕方なかったのは、やはり私の中の記憶のせい。
 終戦の二週間前に十代の通信兵の息子に戦死された母の嘆き。一人息子が30歳になって兵隊にとられ、南方で餓死した母の嘆き。満州からの引き揚げの話。空襲や機銃掃射を何とか生き延びた話。こういう直接聞いた話や、読んだもの、資料で見たものが思い出されて仕方なかったから。
 皆自分をはぐくんだものを愛して大切に思っていた。そして死んで行き、大事なものを失ったのだ。

 この映画を見たら、ついでに
「戦艦大和の最期」吉田満(必読!)
「戦中派不戦日記」をはじめとする、山田風太郎の終戦前後の日記
「昭和史」半藤一利
「海軍めしたき物語」高橋孟
「欲しがりません勝つまでは」田辺聖子
そのほかの本を是非是非読んでいただきたいと、お願いします!

 う~ん、それと日本の男性、ほんとに軍服に合わなくなったのかな。「海底軍艦」の田崎潤は、腹が出ていようが寸がつまり気味に見えようが、あの白い詰襟がもう第二の皮膚とばかりにフィットしてたんですが、この映画ではどうもピタリと着こなしてる士官役少なかったと思います。その、「板についてる」って感じがないのです。
 
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ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還 SEE版

2005年02月07日 | 映画感想ら行
 追加映像50分。
 追加というより再編集多し。
 それに、本編に劣らない長さの特典ディスク2枚付き。
 もうこんな映画はそうは出来ないだろうなあ…とまたまた思った。
 届いたその日に本編を目を皿にして見、特典のメイキングや何やらを見、4日目には英語字幕、日本語字幕でまた泣きながら見た。エオウィンとメリーのエピソードとペレノール(ペレンノール)野のローハンの戦いがより膨らませてあって、セオデンの檄では涙で画面が霞んだ。ああ、なんて声のいい爺さんが多いのだろう。
 メイキング映像を見てからだと、カメオ出演にドキドキし、音楽の効果にも頷き、映像化された戦いやモンスターに感動し、より一層映画が素敵に見えてきた。

 登場人物の性格や、描き方など完全にジャクソン流になっているけれど、もうなんだか全部許せてしまう。映画は映画で、原作は原作としてそれぞれのメディアにあった表現や見方があるのだ。それぞれのキャラクターに振られた役割も本よりも一層くっきりと分かれているようだ。そう思えば、気の毒なデネソールの扱いもまた納得出来る。本当のところは、エオウィンやファラミアは私のイメージとは相当違っているけど、まあ仕方ない。 

 結局シャイア掃蕩は入らなかった。原作では、かなり重要な部分だと思うのだが。
 すべて終わったと思って帰ったホビットたちの美しい故郷が荒らされ、悪の手に落ちていたことで「特別な場所などどこにもない」こと、そして大事なものを守るためには自分たちが立ち上がらなくてはならないことを思い知らされる場面。そして堕ちたといえども、賢者であったサルマンの矜持をフロドの成長が打ち砕く。原作の中でも、かなり重要なメッセージであると思う。
 ただ、映画で大団円の後でまた一つの物語では、最後の灰色港への流れが切れてしまう。だから闇の力の強大さに屈して追従しようとしたサルーマンの結末は、己の操ろうとしたものに逆襲されるという形でストーリーに入れるのも自然かな、とは思った。

 本と映画では、時間の流れ方のテンポがまったく違う。言葉一つとってもそう。原作では、さながら昔の日本の侍たちが名乗りを上げるように、戦いでさえも力強くて古い言い回しの会話がなされている。そこがまた「指輪物語」らしくて好きなところなのだが、映画でそれはやってられません。
 エオウィンがアングマールの魔王に対してセオデンを守って立ちはだかるシーン。

"But no living man am I!
You look upon a woman.
Eowyn I am, Eomund's daughter.
You stand between me and my lord and kin.
Begone, if you be not deathless!
For living or dark undead, I will smite you,if you touch him."
(しかし私は生き身の男ではない!
お前が向かい合っているのは女だ。
私はエオムンドの娘、エオウィン。
お前こそ私の王であり、血縁であるものと私の間に立って邪魔をしている。
不死でないならば、去れ!
もしお前がわが殿に触れれば、生き身であれ、幽暗に漂う者であれ、お前を打ちのめしてくれよう!)

…というエオウィンの言葉が、映画では

"I am no man!"

だけ。仕方ないです。これだけ延々としゃべったら大変です。
 そして初めてその騎士がエオウィンであることを知ったメリーの決意と2人の必死の戦い。たっぷりやったらここだけで10分以上かかっちゃいますね。

 それでも尚残念なのは、SEE版でも「エレンディル!」の叫びが聞けなかったこと…
 そりゃあ、あれを映画でやったら違和感あるかもしれないけれど、やって欲しかったなあ…
 死者の道を粛々と進む決意と力を静かに漲らせた一騎当千のレンジャーたち…見たかった…

ロックンロールミシン (2002/日)

2005年02月06日 | 映画感想ら行
監督: 行定勲
出演: 池内博之 りょう 加瀬亮 水橋研二

 平凡な会社員生活をしていた賢司は、ある日学生時代の友人凌一と再会する。今の自分やその生活になんとなく実感をもてなかった賢司は、自分たちのアパレルのブランドを立ち上げようとしている凌一たち3人にまぶしいものを感じる。ある日はずみで上司を殴ってしまった賢司は、彼らに合流することになった。

 盛り上がらないテンションの映画でした。
 それに個人的に、きつい映画だった。
 面白い、とはいえない。これは、若いときだけなのだろうか、誰でも生きることに充実感を求めてしまうのだろうか…と見ていて、ストーリー追いつつも、頭の半分で考えてしまう。映画だけに没入は出来なかった。
 これは、賢司の視点でいえば一時の冒険物語で、結局彼は行って帰って、自分の生きる場所を(ともかくとりあえずは)定める。ハリウッド流教養小説的な映画ならば、彼に何事か成し遂げた達成感を与えるだろうが、ここではちょっとした思い出と、自分の限界の認識である。表現は厳しくないが、きつい。かなり強烈に効いた。
 ラストの凌一の背中の翼は、自己の充実感のためには多くを犠牲にしなくては…そしてもしかしたらそれは独りよがりに終わるかもしれないと私を脅かすものだった。

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Ray/レイ (2004/米)

2005年02月03日 | 映画感想ら行
RAY
監督: テイラー・ハックフォード
出演: ジェイミー・フォックス ケリー・ワシントン クリフトン・パウエル ハリー・レニックス 

 ジョージア州の貧しい家庭に生まれ、黒人・盲目のハンディキャップを超えてポップス・ミュージックの神様とまで謳われたレイ・チャールズの伝記映画。

 あの「ネバーランド」のジョニー・デップを向こうにまわしてのゴールデングローブ男優賞ですから、期待していってきました。
 確かにジェイミー・フォックスのレイ・チャールズは素晴らしいと思いました。2時間半が長いとは感じなかったくらい物語に引き込まれていました。フォックスだけでなく、他の俳優たちも、特に母を演じたシャロン・ウォーレンの強さには引き付けられた。この映画では、本来の道を彼に示すのは母であり、妻であり、女性の役割のようだ。
 しかし、なんと言ってもレイ・チャールズの音楽。本当に強烈なパワーがある。エンドクレジットが始まっても、彼の歌声が流れていてほとんど席を立つ人がいませんでした。レイ・チャールズの声が流れると、身体も心も揺さぶられるようで、どうにも抗しきれない感じ。やはり神に愛されたとしか形容の仕様がない才能を持つ人がいるものだ、としみじみ思う。
 
 制作に本人が参加していたのだから当然のことかもしれないが、ドラマの作りは、優しい。
 若い頃、大手に注目されるまで、才能を搾取されていた。
 ドラッグに中毒していた。逮捕されてもなかなか断てなかった。
 ほかにも家庭を持つ不実な父親で、母も自分も苦労していたが、やはり自分も女性関係で妻子を悲しませた。
 ビッグネームになっていく過程で、世話になった人を裏切りもした。
 弟の死に負い目を感じていた
…など人間としての弱さも、汚い側面も、それほど強烈に感じさせずに上手に取り込んでいる。あくまで家庭が大事。そして母の自立の教えを強調して。それでもその部分がさほど鼻につくことなく、一気に見せたのはやはり作り方が上手なんだろうと思った。公民権運動の時に、差別に抵抗してジョージア州から永久追放された、後に名誉回復・彼の「ジョージア・オン・マイ・マインド」が州歌にまでなる、というような社会的に大きいインパクトのあったことも、ちょっとさらっと気味にかんじてしまった。
 誰しも、自分の人生に理不尽と思えるようなハンディがつくことは、個人の力ではどうにもならないことだ。しかし彼は闘い、彼の人生と独自の音楽を開花させた。あの、新しい音楽が生まれるシーンでは本当に背筋がゾクゾクするようだった。コンサートシーンも素晴らしい。この映画を見ていて、思わず知らず身体が動いてしまわない人はいないのではないだろうか。

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ラブレター(1999/米)

2005年02月02日 | 映画感想ら行
THE LOVE LETTER
監督: ピーター・チャン
出演: ケイト・キャプショー グロリア・スチュアート トム・エベレット・スコット トム・セレック

 マサチューセッツの海辺の町で本屋を経営する離婚暦のあるヘレンはある日、封筒もない熱いラブ・レターを見つける。彼女はそれがアルバイトの学生からだと思い、恋に落ちるが…

 BS2の放送で予備知識も何も無しで見て、けっこう楽しめるコメディでした。
 ケイト・キャプショーが、あまり身なりにも気を使っていない、「恋は引退!」ふうな女性で、それが若い学生と高校時代の同級生やらとの思いの渦の中に入って、それなりにきれいになっていくけれど、あまりすごい変身もせず、ただ女性としての感じが柔らかくなっていって、それなりの美しさを感じさせてくれて、うまいと思いました。

 ストーリーの中心となるのが、一通のラブレターなんだけど、それを読んだ人が、みんな舞い上がってしまう。この言葉の力に、同意出来ちゃう。話の都合上、タイプになってるけど、これは本来手書きのものでしょうね。
 後半はちょっとしんみりだけど、前半の「はにゃにゃ…」「うう~」という笑いもけっこう好きです。

 ヘレンは最後に、謎のラブレターでなく、自分に宛てられた真実の愛の言葉を発見するけれど、その時にはその言葉の人は、少し遠くに行ってしまっている。戻ってくるかどうかは分からない。でも彼女は「あなたの言葉を待っている」とだけは伝えることが出来た。少しだけ苦いけど、ほんのり甘いラストだった。

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