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虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

肉体の悪魔 (1947/仏)

2005年01月23日 | 映画感想な行
LE DIABLE AU CORPS
監督: クロード・オータン=ララ 
出演: ジェラール・フィリップ ミシュリーヌ・プレール

 1918年、第1次世界大戦の終結で喜びにあふれる町でひっそりと行われる葬儀を遠巻きに追う一人の少年フランソワ。亡くなったのは彼の恋人、軍人の妻のマルト。大戦下の17歳の高校生と人妻の刹那の激しい、悲劇に終わる恋。

 ジェラール・フィリップは20世紀で最高の貴公子である。彼は何をしても卑しさが無い。身体のどこかに沈んだ澱のようなものが一切感じられない。だから、この勝手きわまりないわがままな17歳への年上の人妻の恋が避けられない運命になる。この時25歳だが、シャツとダボダボのちょっとかっこ悪いズボンの彼は確かに17歳。この、ただ、いるだけで絵になる男っぷりはジミー・ディーンと双璧ではなかろうか。

 マルトの結婚直前に猛烈な、アプローチをかけるフランソワ。そしてマルトの母と、フランソワの父とによって一度は離れる2人。このもののわかった父親というのは、人生の先達とも呼びたいような、まさに大人の振る舞い。でもそれが悲劇の原因となるのだ。娘の幸福を思うマルトの母。しかし、若い恋は理不尽で、良識も、幸福も顧みない。登場でどこかもっさりして見えたミシュリーヌ・プレールは、結婚後の彼を誘うシーンでは危険な恋に分かっていて落ちた女性の、悲しみと喜びと背徳と恐れとふてぶてしさと強さと…様々なものを抱えた彼女は美しい。とても。
 諦めを心の底に持ちつつ、彼の言葉に一喜一憂する彼女の哀れさ。でも彼女はこのどうしようもない若者との恋の甘美を味わってしまって、破滅が見えても離れられない。年取るたびに、このマルトへの共感が強くなってしまう。

 そして、死の床の彼女の部屋を見上げる「自尊心の無い男」と蔑まれるフランソワのげっそりとやつれた表情… 彼女の夫に結局何も言えずに立ち去るフランソワ。
 そして、死者は既に生きているものの感心からは追いやられるのみ。ラストは涙が出るより、どこかが痛むような哀切さ。でもやはり、ジェラール・フィリップに酔っている。

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ネバーランド (2004/米)

2005年01月12日 | 映画感想な行
FINDING NEVERLAND
監督: マーク・フォースター
出演: ジョニー・デップ ケイト・ウィンスレット ジュリー・クリスティ ラダ・ミッチェル ダスティン・ホフマン 

 永遠の少年「ピーター・パン」の物語のモデルになった少年と、作者ジェームズ・バリの交流。父親を失った一家との触れ合いから不朽の名作「ピーター・パン」ができるまでの過程を描く。

 ご近所の映画館で公開予定がないので、ご近所の試写会に応募してみました。正月2日から並んで鑑賞券受け取り、昨日の上映には1時間30分前から並んで席取り。昨日はちょっときつい一日でした。
 さすがはジョニー・デップ。それに「チョコレート」の監督だから現実の苦さの描き方も厳しいかな、という懸念があったけど、そこは厳しいなりに映画全体の暖かな雰囲気が壊れない程度でありました。

 ドラマとしては大人向け。客席に子どももちらほらいたけど、小学校低学年に見える子は明らかに飽きてました。
 ジェイムズ・バリの知り合うのが4人の男の子を抱えた未亡人シルヴィア。子どもたちの溌剌した言動から、この家の雰囲気がわかる。心を閉ざし、バリとほかの子の遊びに乗ってこないピーターがどうしてそうなったのか、そして彼が一番想像力の世界で翼を大きく広げることができるというのも納得できます。そこから堕ちたときの苦痛は高く飛んだ者ほど強烈。一番上の子は現実と折り合いをつけながら、空想に遊ぶ楽しさを手放さない理性を理解しかかっているけれど、ピーターはそこまで行かないうちに夢見ることの苦痛の大きさに出会ってしまった。「それを既に知る者」として彼の心を開いていくバリ。大人はこうでなくては!
 そして、憧れを持ちつつもネバーランドへ飛べないバリの妻と、世間や母の常識や良識の咎めに抗することのできるシルヴィア。ずれてしまった心と出会いの切なさ。
 厚手のタオル用意して、アイメイクもしないで用意していきましたが、後半のピーター・パン上演のシーンからは涙が止まりませんでした。期待したとおりに泣かせてくれました。
 演出も音楽も抑え目だけれど、それが却って効きます。

 ジョニー・デップは言うまでも無く、ほんとに演技の確かな俳優さんたちばかりなので、世界がまったく揺らがず、安心してみていられる。デップは、この映画では声が多彩で楽しかった。ケイト・ウィンスレッドは4人の子のお母さん役のしっとりした落ち着きもですが、男の子たちの憧れのウェンディでもある無垢な美しさもあって「タイタニック」より私にはきれいに見えました。ピーター役のフレディ・ハイモアはじめ子どもたちがみんな、かわいいけど映画の役の中にきちっとはまっています。
 ジュリー・クリスティはドラマを締めてくれましたし、ダスティン・ホフマン、それほど出番が多くありませんが腹の大きい役で声が深い感じで、どっしり感が素敵。ケリー・マクドナルド、良かった!きれい!大好き!

2046(2004/香港)

2004年11月26日 | 映画感想な行
監督: ウォン・カーウァイ
出演: トニー・レオン 木村拓哉 コン・リー フェイ・ウォン チャン・ツィイー カリーナ・ラウ チャン・チェン ドン・ジェ マギー・チャン

 過去に囚われた一人の小説家が近未来を舞台にした物語を執筆、次第に小説家の現在と物語の中の未来が時空を超えて交錯していくさまを、美しい映像で綴る。

 上記の文章は、allcinemaONLINEからもってきましたが、木村拓哉主演部分は、特に小説家の心の中をくっきり説明するということでもなかったですね。セリフもっと少なくて映像だけでも良かったかも、と思った。そのほうが非日常感があるんじゃない?ま、一番肝心な秘密を言ってないし。
 音楽良かったです。
 「花様年華」の続きですが、「花様年華」見てないと駄目かというと、そうでもないかとは思います。テーマはけっこう普遍をいってます。
 花様年華では画面の向こう側にあって、見るものの妄想に任されていたラブシーンがあらわになっていて、そのことがチャウの永遠に渇望して、しかしおそらく一生得られないであろう『本当に求める愛』の昂揚と荒廃を物語るようです。(トニーとマギー・チャンは、その画面の向こう側、を十分感じさせてくれたのです)
 確かに「愛は代替品では駄目」なのです。

 「花様年華」でもそうだったけど、チャイナドレスというのは、なんであんなに女性が魅力的になるのか?そりゃ着る人の体型はシビアに要求されちゃうけど。今まで、チャン・ツィイーは「綺麗だなー」と見とれていたけれど、女優としていいっ!と思ったのは実はこれが始めて。やつれてすがれた女がきちんと出来るんですね。思わず今まで実力を正しく認めなくてすいません、と思ってしまった。コン・リーは貫禄でした。フェイ・ウォンきれいですねえ!

 何よりもトニー・レオンの映画なのでした。
 トニー・レオンという人には、R・キャパの如き、女性をして磁石の前のゼムクリップと化してしまうオーラがある。(こう思ってるのは私だけか?)キャパと違うと思うのは、陽性でなくて、ノワールなムードがあること。
 これほどノワールで情緒のある俳優が、今ほかにいるだろうか?崩れてもそれが陰影となり、その翳が情緒になる。
 けっこう身体が見えてしまうの役だったけれど、役なりのほどよいからだの緩みようもさすが!筋肉魔人だけがスターではないのだ。シンガポール時代のトニーのワイシャツのしわにしびれ、彼のすいさしのタバコを拾って隠匿したいっ!など危ない気分にさえなる。ご本人に触れたらきっと感電死です。

 木村拓哉は別に悪くありませんでしたが、共演の皆様に、目力とか負けがちなので損かも。

 本日ご近所での公開最終日なのでまた無理して行っちゃって、自分で自分を追い込む私なのであった…

名も無きアフリカの地で(2001/独)

2004年08月08日 | 映画感想な行
NIRGENDWO IN AFRIKA
監督:カロリーヌ・リンク
出演:ユリアーネ・ケーラー メラーブ・ニニッゼ レア・クルカ カロリーネ・エケルツ

 ナチス政権時代、間一髪でドイツからケニアへ逃げたドイツ人一家が戦中を如何に生き抜いたか。

 映画館でチラシを見て、一家で見られる感動作タイプの映画かしらん、なんて思ってたんですけどね、これは小さい子には向きません。
 家族の絆とか、異文化とどうやって付き合うかの問題も提示されてはいるけど、そもそも「どこにも真の居場所が無い」状態のユダヤ人の、厳しい「生きるべき場所を求めて」の部分が痛かった。ドイツにはいられない。ドイツ国籍のユダヤ人で、イギリス領では敵性国人。
 ケニアへの思いも、ドイツへの思いも父・母・子それぞれ違う。
 ケニアに生きる人々へのヨーロッパ育ちの人の理解とその限界もわかる。
 ラストで、やはり彼らは厳しい道を選んだと思うものの、すがすがしい思いが残った。

movie diary 名も無きアフリカの地で

2ペンスの希望(1951/伊)

2004年07月27日 | 映画感想な行
DUE SOLDI DI SPERANZ
監督:レナート・カステラーニ
出演:ビンチェンツォ・ムゾリーノ マリア・フィオーレ フィラミーナ・ルッソ 

 アントニオは、兵役を終えて帰ってきたばかり。母や姉妹を養うため職を探すが、不景気で仕事がない。村の花火屋の娘カルメラは彼に夢中になるが、稼ぎは母にぜんぶ取られ、姉を嫁に出すための支度も稼がねばいけない彼はなかなかカルメラの思う通りにはならない。

 BSのなつかし映画劇場。
 おもしろかった。これも女の子の一途な恋を描いたもので、ついこの間「初恋の来た道」を見たのでどうしても比べてしまったが、こちらのほうがすごい陽性。村のオカミサンたちにからかわれ、死んじゃえ~とあっかんベーするヒロインなのだ。
 恋されるほうのアントニオもちょっとごつごつした、要領悪いお兄さんである。せっかく職を得ても思わぬヘマで失っちゃう。ともかく貧乏な男に娘はやれない、娘に対する親の目は厳しい。男のほうも、母のいいように使われてるみたい。でも、これって、少し前まで日本もそうだった筈よね。
 最後は、「俺達は愛だけでいいんだ、ほかに何がいる」ってことになり、村中で舞い上がっちゃう。おかしくて、幸せで涙が出ちゃう。いやあ、実はそれからが大変だったんでしょうけど。でも最後のモノクロ画面に思いっきりの青い空が見える感じ。

ニュージーズ(1992/米)

2004年05月08日 | 映画感想な行
クリスチャン・ベール主演なのでBS2の夜の放送をつい、見てしまいましたが。

監督: ケニー・オルテガ
出演: クリスチャン・ベール ビル・プルマン アン・マーグレット

19世紀末、ニューヨークで新聞の配達をするのは、“ニュージーズ”と呼ばれ、主に孤児や家出した少年たちだった。新聞卸値を上げようとする大新聞王と彼らの戦いの実話を元にしたミュージカル。

クリスチャン・ベール確かに主役らしい輝きはなくもないけど、
それにこれを言ってはおしまいだけど
「リベリオン」のカッコよさには負ける。
拳骨ダンスみたいな群舞はそれなりに面白かったけど
ミュージカルにするまでの事かな?
だったらもっとバッサバッサと枝葉切り落として
どかどかしたダンスの強烈さが焼きつくような映画にしても…
え~ん、文句ばっかりですいません~