二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

村の名前   辻原 登

2010年01月07日 | 小説(国内)
藺草の栽培地をもとめて、中国湖南省の僻地へ入っていった日本人商社マンが経験する、謎と恐怖に満ちた物語。 ご自身の体験を下敷きにしているのだろうか?  中国の風景や、中国人たちは、うまく描き分けてあるという印象をうけた。「桃源郷」神話を利用しながら、カフカ的な迷宮世界を作り出すことに成功しかかっている。それが評価され、1990年上半期の芥川賞を受賞。そのあとも活躍されて、読売文学賞、谷崎賞、川端 . . . 本文を読む
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文壇アイドル論   斎藤美奈子

2010年01月07日 | エッセイ(国内)
批評というよりも、いつも「時評」的な言説ばかりが目立つ斎藤美奈子さん。他人の著作をネタにして、おちょっくたり、イナしたり、ゲップをあびせたり、毒を吐いたりがお得意なのはいいが、こういったゲリラ的、時評的な書物にはおのずから「賞味期限が短い」という限界がある。一貫していて、ご本人がマジで主張しているのは、フェミニズム的な立場からの男性および男性社会批判だろうな。彼女自身の思想を正々堂々と展開すればい . . . 本文を読む
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夜のフロスト   R・D・ウィングフィールド

2010年01月07日 | 小説(海外)
読みはじめてから、10日間ほどかかって、本書を読みおえた。これほど時間がかかったのは、並行してほかの本をあれこれ拾い読みしていたからである。 おもしろいのだけれど、とにかく長い。文庫本で754ページ。500ページを過ぎたあたりで息切れしてしまった。 主人公の警部フロストのキャラは、相変わらず。とにかく八方破れで、下品で、事務処理能力はゼロ、ヘビースモーカー・・・そして、仕事中毒の中年おやじ。 . . . 本文を読む
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ウォッチ・メイカー   ジェフリー・ディーヴァー

2010年01月06日 | 小説(海外)
宝島社「このミス!」や週刊文春の恒例となっている、年末の人気投票で、毎年のように名をつらねているジェフリー・ディーヴァー。 リンカーン・ライム&アメリア・サックスシリーズは、彼の看板出し物で、これが6作目。「所詮はエンタメ。娯楽作品でしょ」という人もいるけれど、ここまでくれば、境界はかなりあいまい。そのくらい、想定している読者のレベルは高いのではないだろうか。 毎回のこととはいえ、このシリー . . . 本文を読む
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イリュージョニスト  ジェフリー・ディーヴァー

2010年01月06日 | 小説(海外)
「石の猿」もよかったが、はるかその上をいく、 ノンストップ・ジェットコースター・ミステリ・ノベル。 もしかしたら、「羊たちの沈黙」あるいは「ジャッカルの日」を読んで以来の興奮を覚えているかもしれない。 いや、まちがいなく、そうなのだ。 もう寝なければと思いつつ、3時になっても、本が手からはなせない。 うまいし、パワフルだし、どんでん返しの連続技がつぎつぎと決まっていく! 一昨日から読 . . . 本文を読む
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石の猿   ジェフリー・ディーヴァー

2010年01月06日 | 小説(海外)
ウエブサイトに、さまざまなレビューがあふれているので、わたしがつけ加えることはほとんどない。映画化もされた「ボーン・コレクター」にはじまる、ご存じ、安楽椅子探偵リンカーン・ライム・シリーズの第4作。安楽椅子といっても、主役のリンカーン・ライムは、脊椎損傷により、四肢麻痺というハンディキャップを負っている。 このライムの手足となって活躍するのが、若いころ、モデルの経験もあるという、ニューヨーク市 . . . 本文を読む
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永遠の夫   ドストエフスキー

2010年01月06日 | ドストエフスキー
若いころにたしか米川正夫さんの訳「永遠の良人」として読んだ気がする。 現行の新潮文庫で311ページ。 大作の多いこの文豪の作品としては、中編に属するといえる。ほかに「貧しき人びと」「分身」「賭博者」などがこの分量になる。もっとも、わが日本では、この程度でも長編あつかいされるだろう。いま大雑把に計算したら、400字づめ換算で470枚もある。 ドストエフスキーが描く「ダメ男」の系譜につながるト . . . 本文を読む
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悪霊(下巻)   ドストエフスキー

2010年01月06日 | ドストエフスキー
やれやれ、「悪霊」を読みおえた。 いかにもドストエフスキーらしい、圧倒的なシーンがつぎからつぎへと展開するので、無知で怠惰な読者としては、ついていくのがたいへんである。関心をもって手にしても、ライトノベルとか携帯小説とか、はやりものの改行だらけの小説になじんでいる読者は、おそらく途中で投げ出してしまうだろう。 彼は数多くの長編小説を書いたが、そのうち4作は、いずれも「世界の十大小説」に名を列し . . . 本文を読む
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読者は踊る   斎藤美奈子

2010年01月06日 | エッセイ(国内)
こういうエッセイにどんな書評を寄せても空しさがつきまとう。 開き直った女性の、ヤジと嘲弄でうめつくされた本である。 あれれ、何ページか前に書いてあることと矛盾してるじゃん!? ・・・などと野暮なことをいってはいけない。それがこの人の「藝」であり、ご本人もそれは承知している。 「ベストセラーがすぐ古びるように、時評的な文章もまたたくまに鮮度が落ちる。雑誌連載をまとめて単行本にするだけだって . . . 本文を読む
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悪霊(上巻)  ドストエフスキー

2010年01月06日 | ドストエフスキー
たとえば、本書下巻、198ページ。 『「海賊ども!」彼はもっと甲高い、もっとばかげた調子でわめき立てたが、そこでぷつりと声がとぎれてしまった。彼は自分が何をしようとしているのかをまだ知らず、その場に突っ立っていたが、しかし、自分がいますぐ、何かをするであろうことをはっきりと知り、全存在で直感していた。』 「彼」とは、知事のレンプケである。 ドストエフスキーお得意のカーニバルがはじまっている . . . 本文を読む
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