二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

人生の達人モンテーニュふたたび ~「エセー」を読み、ボルドーへいこう

2017年06月27日 | エッセイ(国内)
モンテーニュとはなにかというと「モンテーニュは16世紀のルネッサンス期のフランスを代表する政治家兼哲学者。人間の生き方を探求する随筆〈Les Essais レ ゼセ〉(日本では〈随想録〉 または〈エセー〉と呼ばれる)は、その後の哲学界に大きな影響を与えた…」と書いてある。
わたしは政治家も哲学者も、そう好きな方ではないから、これまで近づくチャンスはなかった。

すでに簡単なレビューはUPしてあるが穂刈瑞穂さんの「モンテーニュ」(講談社学術文庫)をまもなく読みおえる。
うん、まいったな(´A`。 そーとーダイレクトに影響をうけそうだ。
まだ「エセー」それ自体は読んでいないので、穂刈さんのこの本に・・・ということなのだが。

サブタイトルは「よく生き、よく死ぬために」。
本書を読んでいると、モンテーニュが驚くべき明晰な人生の達人であったことが、次第にわかってくる。
政治家だとか、哲学者だとかは、仮の姿、いわば肩書にあたる。本当の姿は、時代に先駆けた、他に類をみないような生活者であった。

わたしがある日、「エセー」を手にして、いきなり読みだしたら、ここまで本書の中に、深く踏み入ることはできなかったろう。

・「モンテーニュ エセーの魅力」原二郎(岩波新書)
・モンテーニュ よく生き、よく死ぬために」穂刈瑞穂(講談社学術文庫)

前者も入門書=ガイドブックとしては大変すぐれた良書といえるが、穂刈さんのは、「さらにそのさき」へと、われわれ読者を案内してくれる名著。

《「エセー」にはたしかに、一人の人間が語っているという手応えがあって、言葉のなかからほとんどその人間の肉声が伝わって来る感じがする。かれは生きている刻一刻を、神様が恵んで下さった贈り物のように受け取って、それを楽しむことに精一杯精魂を傾けた。・・・かれがあれだけ本を読み、勉強したのも、それによって知識やなにかの肩書を得るためではなく、よく生きて、よく死ぬためだった》(文庫のオビに引用された穂刈さんご自身のことば)

残り3-40ページで読みおえてしまうが、わたしは名残惜しくて仕方ない。
「エセー」が壮大な規模をもった楽曲だとすれば、穂刈さんは、現代の名演奏家である。
わたしがいま、必要としていることばが、たしかな筆致で書き込まれ、わたしを放さず、ぐいぐい引っ張っていく。

死について、モンテーニュのように語ってみせた先人を、わたしはほかに知らない。
知性というか叡智というか・・・どう評していいのか、子どものように、感動のただなかにたたずんでいる。
「そうか、晩年のモンテーニュは、こうして死に向かって歩んでいったのか!」

ミシェル・ド・モンテーニュ
1533年~1592年(59歳)
宗教戦争に明け暮れた乱世に生まれ、恐ろしいペストの猛威から逃げ回ったことがあったから、死は日常茶飯事であった。
モンテーニュの思想は、そういった時代背景抜きには考えられないが、地に足をしっかりとおろして、人間とはどういう存在なのかを問いつづけた。
わが国でいえば、織田信長の同時代人。そのことも驚きである。
裁判所の官吏をやったあと、1年半にわたるイタリア旅行中に、ボルドーの市長に任命され、市長を二期務めている。
祖父の代までは成功した貿易商、わが国でいえば回船問屋。貴族に列したのは父の代からである。
もともと書斎の人であったわけではない。

パスカル(1623-1662年)の「パンセ」は高校生のころからいくらか親しんできたが、パスカルのことばは、わたしにとっては、単なる名言、箴言の域を出るものではなかった。
39歳で死んだパスカルと、59歳まで生きたモンテーニュ。
モンテーニュには、老いを知り(当時としては)、思索を深めるための時間があった。しかも、彼は、必ずしも、神を必要とはしなかった。

わたし自身がそーとーな年齢となったので(すでにモンテーニュの年齢をはるかに超えている)、ちょっと腰を据えて、こしかたいくすえを思索してみたくなっている。
モンテーニュのことばが、何というべきか・・・わたしのこころの深い部分に痛切に染みとおる・・・と、いまはいっておこう。

そうだ、お金と時間を捻出し、ボルドー郊外の「モンテーニュの城」へ旅してみたいと、ほとんど妄想めいたそんな願望がむらむらとこみあげている。


モンテーニュの城




モンテーニュの書斎





「ボルドーから東に55キロ、車で約1時間。
林とブドウ畑に囲まれた人口370人の小さな村。
村の名はサン-ミッシェル・ド・モンテーニュ Saint Michel de Montaigne。」
(引用はこちら。「モンテーニュを訪ねて」http://www.tabikobo.com/blog/7629/)



※写真、地図等はつぎのページからお借りしました。深く感謝いたします。
「のんびり歩くヨーロッパ」
http://cycloo1944.blog136.fc2.com/blog-entry-761.html
(モンテーニュの塔)
ケペル先生のブログ
http://shisly.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-1563.html
(モンテーニュの読書室)

モンテーニュに関しては、まだ調べはじめたばかりだ(^^;)

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