二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

中谷巌さんの「資本主義以後の世界」を読む

2018年03月16日 | 哲学・思想・宗教
やれやれ、繁忙期のピークを過ぎ、トンネルの出口が見えてきた「(゚ペ)
週休二日というのは、けっこう贅沢な労働条件なのか・・・まあ、2月3月限定だけどね。

これまで何度も書いているように、うちにはTVがない。晩飯は母屋で両親と食べるので、そのときだけニュースを見たり、「鶴瓶の家族に乾杯」「ぶらタモリ」を見るくらいで、その代わりに本を読む。

本は心のご飯、たとえわずかではあっても、毎日読むし、どこへいくにも本を持ち歩く。リビングの炬燵で、2Fのベッドで、クルマの運転席で、寝ころがって本を手にする。

・・・というわけで、いくらか余裕が出来たので、このところ読みおえた本のレビューを、順次記していくことにしよう。


■「資本主義以後の世界 日本は『文明の転換』を主導できるか」中谷巌(徳間書店 2012年刊)

本庄市のBOOK OFFで手に入れた。
「資本主義はなぜ自壊したのか」を読むつもりで準備してあったけれど、こちらを先に読むことになった。
中谷巌さんの本は、最近になって、ほかに2冊の本を買った(^^)/
経歴を参照すればすぐにわかるが、わが国における、最高レベルの知識人。
日産自動車に勤務したご経験もあるし、ときの政府における政策決定にも、細川内閣、小渕内閣時代、ブレーンとして参画している。

大学の教授、学長も経験、いうまでもなく、輝かしい豊富な経歴の持ち主。
本業はマクロ経済学。
教科書として執筆した本は、かなりの部数が刊行され、多くの読者をもっているようである。並の経済学者ではない(-_-)

テーマはサブタイトルとなっている「日本は『文明の転換』を主導できるか」である。
ハードカバーで385ページ、厚さのわりに、中身がぎっしりつまった本という印象を受けた。
表紙を飾るオビには「崩壊に向かう世界経済。500年に一度の大変動にわれわれはなにをなすべきか?」とキャッチが刷られている。「ユーロ危機、貧困の蔓延、原発事故・・・『西洋からアジアへ』。迫り来る大転換に向けて日本の進むべき道を示す。」

つまりそういった危機感を共有している人でないと、こういう本を手にすることはないだろう。わたしが一番おもしろいと思ったのは、第4章「中国の“資本主義”をどう理解すべきか」であった。
本書の刊行は2012年1月。ということは、原稿の大部分は2011年の秋に書かれている。2011年といえば日本が東日本大震災に揺れていた時期。
そういった現実を念頭において読まれなければならない。

中国問題はわたしも関心があって、最近になり、4-5冊の本をそろえている。しかし、まだ読んでいない。
中谷さんの本書におけるスタンスは、非常にまっとうなものと思えた。
世に嫌韓本、反中本は掃いて捨てるほどあるが、そういった感情論とは一線を画す。わたし的にはたいへん勉強になったが、これまでもやもやと考えていたことが、“中谷さんによって書かれている”といえる。
わたしがそう感じたのだから、多数派の見解が、こんなところなのだろう。

「不識塾」という大学におけるゼミのようなものを組織し、二百数十人のビジネスマンを各企業からつのり、研究会を立ちあげているのははじめて知った。わたしが知っている人では、水野和夫さんや、佐藤優さん等が講師に招かれている。
抽象的な議論ではなく、「さて、われわれはこれから何をなすべきか?」を、ことあるごとに問いかける。「不識塾」はそういった一種の“作業部会”でもあるはず。

本書の後半では、具体的な提案がいろいろとなされている。そこが本書における読みどころである。2011年の時点で中谷巌さんが考えたこと、それが本書ということになる。
中身は少しも色あせてはいない。「そうか、そうか・・・」わたしはうなずき、うなずきしながら読みおえた。
読みようによっては、経済学者がお書きになった“人生論”。
哲学者木田元さんが晩年に盛んに書いたような“のんしゃらん”ぶりはここにはなく、優等生の答案に近い・・・といってみたくなる場面もなくはなかった´д`。

「不識塾」の参加者は、30代40代の中堅ビジネスマン。これからの日本、これからの企業を担う人材を育てる・・・という意図がある。世界に通用する日本人が、もっともっと増えて欲しい。中谷さんのそういった願いが、熱く漲っている。だれも反対ができない中庸路線といえばいえるが、じっくりと耳をかたむけるに値する議論が展開され、わたし的には読み応え十分であった。


評価:☆☆☆☆☆

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