二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

21世紀研究会編「民族の世界地図」(文春新書 平成12年刊)レビュー

2019年12月17日 | 歴史・民俗・人類学
「失敗の本質」(中公文庫) ☆☆☆☆☆
「世界史一気読み」(文春文庫) ☆☆☆☆

この2冊を読んだのだが、うかうかしていたら時間がたってしまい、印象が薄れた(^^;) したがって書評はパス。評価的には五つ星、四つ星といったところである。
「世界史一気読み」は、「文藝春秋SPECIAL」に掲載された記事から編集したもので、橋爪大三郎さんほか19名の論考が収録されている。
はずかしながら「文藝春秋SPECIAL」という雑誌があるのは、これによって、はじめて知った。
多少の出来、不出来はあるが、出色の論考もある。ただし、論点はかなりジャーナリスティック。暇つぶしに読むには、歯ごたえがあるものが混じっている。

「失敗の本質」(中公文庫)については、つぶやきで先日取り上げた。
さきほど調べたら、amazonに418個ものレビューがUPされている。これは驚くべき数字で、反響の大きさが推測される。
おそらくは100万部といえるようなロングセラーを記録しているのだろう。
418個ものレビューがあれば、わたしがいまごろ、のこのこ出てきて書くこともあるまい・・・という気がする|*。Д`|┛

さて、本書「民族の世界地図」。
新潮文庫から「民族世界地図」(浅井信雄)というよく似た書名の本が出ている。
こちらは数年前に読んだことがあった。まあ、よく似た書名なので、本書の内容もそんなものかと見当をつけて読みはじめたが、記述の緻密さ、カバーする範囲がまるで違う。

浅井信雄さんの「民族世界地図」が、ビジネスマンが電車の中で読むにふさわしいライトな本だとすれば、こちらは重量級、ずしりとした研究成果が盛り込まれている。
内容的にやや古びてしまったかな? と思っていたら、

「新・民族の世界地図」
・・・が刊行されていた。しかし、こちらも2006年版。2020年版も出してくれないだろうかo・_・o
21世紀研究会とは耳慣れぬ名称だと思ったら、
歴史学
文化人類学
考古学
宗教学
生活文化史学
・・・の研究者9人が集まって、執筆・編集したもの。
だから総合的、多角的に論点が、つぎつぎあぶり出されてくる。
日々の国際ニュースを読んでいる読者に、ある意味、必須のデータベースを提供してくれる。

民族紛争ばかりが俎上にのぼっているわけではない。
《国境、紛争を見ているだけでは世界は見えてこない。民族・宗教などによるまったく新しい地図によって世界を考え直してみよう!》
BOOKデータベースでは、簡単明瞭に、そう記載されてある。
目次を拾っておくと、
第1章 民族のアイデンティティ
第2章 民族と言語
第3章 民族と宗教
第4章 民族の移動
第5章 先住民族、少数民族
第6章 民族紛争
第7章 中東・アラビアとユダヤ
第8章 生活にみられる民族観

の8章から構成されている。
巻末の参考文献をふくめ、全294ページだが、たいへんな充実ぶり。
じっさいの執筆陣がどういった陣容なのか知りたいと考えたが、奥付にはつぎのようなことば書きが付されていた。
《「戦争と革命の世紀」といわれた20世紀は終り、通信技術の発達による国際化、ボーダーレスの時代がやってきた。
しかし、はたして日本人は、地球規模の視野をもって21世紀を生きることができるのか、その答えを模索するために、歴史学、文化人類学、考古学、宗教学、生活文化史学の研究者たち9人が集まって国際文化研究の会を設立した。
その研究会の第1回目の成果が本書「民族の世界地図」である。》

国際関係や紛争、外交問題などに関する皆さんの発言、感想などをblog等で読んでいると、マスコミの論調に誘導されているのが、よく見えてくることがある。
無知だからとりあえず、付和雷同するわけだ。
その奥に潜む現実や、紛争の真相や、憎しみの連鎖の本当の理由を追及してみようとする人は滅多に存在しない。
NHKや朝日新聞やネットニュースに、右向け右・・・・なのである(;´д` )
かくいうわたしも、それに近い存在。ただし、マスコミに煽られ、右往左往ばかりしていると、ときどき情けなくなる。

本書は、そういう読者には貴重なお役立ち本である。見えやすい表層にばかり眼を向けていたのでは、いつまでたっても、真の原因はわかりはしない。
そのことを、本書は多角的な視点から教えてくれる。
「なぜ、未解決なのか。なぜ、数百年ものあいだ、殺し合いをしなければならないのか!?」

平和ボケした日本人。平和ボケしたわたし。
気合いを入れ直し、世界に眼を凝らしてみようではないか・・・と本書は語りかける。峻烈な現実から眼をそむけず、叡智をもつ人たちのことばに、耳を傾ける。
こういう本を読むことで、基礎知識は確実に養われるだろうとかんがえるのは、わたしばかりではないはず。

なお、姉妹編に「常識の世界地図」「地名の世界地図」「食の世界地図」などもある。いずれ手にとって、あたりをつけ、おもしろそうなら読んでみよう♪



評価:☆☆☆☆☆

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