二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

天金加工が施された荷風の「珊瑚集」

2019年03月10日 | 俳句・短歌・詩集
   (天部に金箔が箔押しされている)


世の中には「愛書家」と称する変わった趣味の人種がいる。わたしは愛書家というにはほど遠い男だが、それでも、本、書籍は好きだし、大事に扱っている方ではないか・・・と思う。
書評で文庫本や新書ばかり取り上げているのは、50代半ばころから、寝転がって読むクセがついたからだ。

数週間前に、何気なく買ってきた本に、永井荷風の「珊瑚集」がある。ほとんど傷みのない、新刊書と見紛うような、大型本。
残念ながらオリジナル「珊瑚集」ではなく、大正2年刊行の復刻版。
日本近代文学館昭和56年刊行の“名著復刻シリーズ”「石楠花セット」の一冊だ。







特価セールをやっていたため、おどろくほどお安かった(*゚ー゚)v
買ったあとで気が付いたんだけど、この書籍、天金加工が施された豪華本。
『「珊瑚集」なんて知らねえなあ、読んだことない。「海潮音」とか、「月下の一群」なら、聞いたことはあるけどね。』
そういわれても仕方ない、永井荷風の翻訳詩集である。かつて、岩波文庫で刊行されたのを、パラパラ拾い読みしたことがあった。

文庫版は薄っぺらい本だったけど、こちらは425ページもあり、造本にお金がかかっている。翻訳詩だけでなく、「モオパッサンの扁舟紀行」「ピエエル・ロチイと日本の風景」等、6編のエッセイや「写真版挿画」13枚が収録されてある。
(写真版は、ボードレールやヴェルレーヌ、モーパッサン、ゾラの肖像写真や記念の石造画像。)
もしかしたら、部数限定の“予約出版”だったかもしれない。
昔の本の復刻版を見るとよくわかるが、本は貴重品であったのだ。だから、ほとんどの場合、函入り。

復刻本はほかに10冊くらい所持しているけど、これほど手間ヒマのかかった豪華本はほかにはない。
現在は印刷媒体から、電子媒体へと変化しつつある時代。
わたしは紙媒体が好きだが、とにかく、重く大きいのが難点だなあ-_-。)
しかし、何だかんだといいながら、これがアナログなのだ。印刷物はもっと昔は、さらに高価で貴重な存在だった。そういう時代のいわば“残り香”を、この一冊は備えている。


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