原本は2003年、毎日新聞社から刊行。それに対し、若干の修正をくわえたものが、この中公文庫版になる。この“改訂版”が上梓されてからも、すでに7年が経過している。
原彬久さんの本は、これまで岩波新書で「吉田茂」「岸信介」を読んだが、政治学者がお書きになったものとしては出色の出来映えであった。
明治期の政治家ならともかく、戦後政治といえば、歴史学的な枠組みには収まりきらない生臭さを備えているので、書 . . . 本文を読む
ふとしたはずみでこの地球に招かれたのは
いまから七十年ばかり前。
そのあたりはいまよりずっと ずっと静かだった。
漲っていた静けさのディテールを思い出す。
銀紙につつまれたチョコレートの端を
ほんのひとかけら齧った
・・・というように
甘くて苦い静けさが口のなかにひろがる。
騒々しかった十年。
もっと騒々しかった十年。
使いふるしたデスクと椅子と
きみの帰りを待っていた人のいる部屋。
ケヤキ . . . 本文を読む