「盲導犬」

2013-08-05 18:56:48 | 舞台
面白かった!訳分からんかったけど(笑)

ぶっちゃけ、蜷川版「祈りと怪物」よりも良かったですm(__)m

本当に意味不明な内容でしたが、目・耳・肌で唐×蜷川ワールドを堪能させてもらいました。

ぶっちゃけ、昭和の独特なアングラテイストは感じませんでしたが、これぞ平成のアングラだな~と思える演出でした。演出も美術も照明も芸術的で、しかも本モノの盲導犬やミニワンちゃんが出てきたり、マジ火を使ったりと、「祈りと怪物」が安い演出だっただけにm(__)m今回はホンモノ勝負で魅せて頂き大変満足しております。

りえちゃんの存在がこの作品に大いなる華を持たせていて、最初から最後まで宮沢りえありきの作品だと思いました。決して舞台女優の声ではなかったけども、女優魂を感じる素晴らしい演技でした。なんとなく、りえちゃんの役はニコールの「ドッグヴィル」に通じるものがありました。パンツを脱ぐ行為が体当たりな演技だとは思いませんでしたが、ラストは違う意味でこれは体当たりな演技だなと思いました。最初から最後まで女優魂を感じる熱演で本当に素晴らしかったです。

古田さん、小出君、木場さん、大林素子さんは、作品に色を持たせる存在感で、大林さんがこんなに自然に蜷川色に染まっていて驚きました。上手かったです。

下ネタに関しては、古田さんの右に出る方はいないくらい、今回も古田さんの下ネタで笑わせて頂きました。

小出君のフーテンは、個人的にはもっとラリッた演技を見せて欲しかったです。シンナーを吸う青年に見えなかった。この役は、満島君の方がイメージにピッタリだと思いました。別に小出君が悪いわけではないねんけど、この役に関しては色で選ばれたかなと思いました。

「身毒丸」の時も思ってたんですが、蜷川さんの作品ってあまり昭和のドロドロしたアングラ色を感じないんですよ。まさに芸術的な感じ。どっちかというと松尾スズキさんの「ふくすけ」の方が断然昭和アングラテイストを感じた。

別に昭和だろうと平成だろうと、アングラだろうとそうでなかろうと、作品が面白ければそれでいいと思うんですが、今回のこの作品に関しては、全体的に声が素晴らしかった!昔の蜷川作品を思い出しました。私がずっとイメージを持ち続けていた蜷川ワールドが全面に出ていたと思います。

蜷川作品の魅力は役者の魂の叫び声だと思っているので、最近では味わえなかった蜷川ワールドを堪能させて頂きました。マイクなしでも客席の後まで鮮明に聞こえる声がとても心地よかったです。多分、舞台に壁(コインロッカー)があるとないとではやはり響き方が違うと思いました。

で、これまたぶっちゃけ書くと、私には全くの無名の小久保君が1番アングラ俳優というか唯一のアングラ俳優だと思ったくらい素晴らしい表現者さんで感動しました。りえちゃんとの絡みでは繊細な部分を感じましたが、見せ方がマジアングラでした。年齢的に決してアングラ演劇に興味を持つ世代ではないと思うけど、小久保君だけが私が持つアングラのイメージを体現していたと思います。蜷川さんにしごかれたのか、彼の感性なのか分かりませんが、無名というだけで本当にもったいない存在だなと思いました。これからも蜷川作品には欠かせない役者さんになること間違いないでしょう。

ストーリー的には本当に意味不明な展開でしたが、アングラ演劇ってそもそも頭で考えず感覚で楽しむ演劇だと思っているので、その点に関しては非常に楽しませて頂きました。

唐さんは盲導犬を通して何を表現したかったのかは、はっきり言って分かりません。

私が見終えた後に感じたのは、りえさんの役にも感じた「ドッグヴィル」となんてなく似てること。昨日の友は今日の敵みたいなある種の不条理さを感じました。

生まれながらにして盲導犬はいないと台詞にあったように、生まれながらにして不条理な人間もいないと思うんですよ。フーテンになろうと思って生まれてきた赤ちゃんもいないし、政治家になろうと思って生まれてきた赤ちゃんなんていない。もちろん、生まれながらにして目が見えなかったり、耳が聞こえなかったりと障害をもって生まれてくる赤ちゃんはいるけど、意思をもって生まれてくる赤ちゃんなんてほぼ皆無だと思うんですよ。

盲導犬はちゃんと躾をすれば素直で役に立つ存在なのに、人間はちゃんと躾たつもりでも何故かひねくれるんですよね。特に思春期。

人のことは言えないけど、ちゃんと目が2つついていても、現実や周りが見えない人間って多いやん。本来2つの目は自分を見てナルシストになるためにあるんじゃなくて、周りを観察するためにあるはずなのに、何処見てるねん!って人が多い。昔も多かったけど、最近テレビを見てるとこんな私ですら不思議に思う人が多い。未だに懲りない政治家のトンデモ発言もしかり、今自分がいる場所を見ろ!と言いたくなる人が絶えない。政治に関してもそうですが、本当に大事な事に関して無関心な人が多い。危険意識が低い。

盲導犬を飼ってるつもりが、いつその牙を剥き出すか分からない未来。また自分が盲導犬になりかねない未来を感じたそんな見終えた後の感想でした。

あくまで私が感じたことなので、唐さんの意図は全く分かりません。蜷川さんがこの戯曲から何を感じたのかも私には分かりません。ただ、舞台上ではピカソの絵画のような世界観が繰り広げられていた…って感じです。

そうそう、りえさんの真っ赤の洋服が舞台上で素晴らしいアクセントになっていて、「レミング」のなーちゃんを思い出しました。真っ赤なドレスを着た踊るタンゴの女性が、一輪の薔薇のように舞台に華を添えてました。りえちゃんもそんな存在で本当に綺麗かつ素晴らしい演技でした。

今日のまとめ:今日のりえさんを見て、めちゃくちゃ祐飛さんの「滝の白糸」が楽しみになりました。

この記事についてブログを書く
« 月組 新人公演 | トップ | 「道成寺 二題」 »