「トロイラスとクレシダ」

2015-08-16 22:12:10 | うらけん
いや~、ブラピ主演映画「トロイ」を前もってレンタルで観てて正解やった!めちゃくちゃ面白く観させてもらいました!

あの新国立の「ヘンリー六世」「リチャード三世」の鵜山カンパニーがほぼ集結し、更に吉田栄作さんと江守徹さんと横田栄司さんの最強キャストが加わり、更に魅力的なキャスティングとなって上演された「トロイラスとクレシダ」。

作品選びは…ですが、兵芸がプロデュースに関わってくれたことで実現した関西公演だと思ってるので、兵芸には感謝感謝です。m(__)m

最近の兵芸は、新国立作品も含め、私好みのカンパニーを誘致(?)してくれているので凄く嬉しいです。東京に行かなくて済むもんね(笑)

ということで、浦井氏&ソニンちゃん主演の“問題劇”といわれる曰く付きの「トロイラスとクレシダ」を観てきました。

ぶっちゃけ書いて申し訳ないですが、蜷川カンパニーよりめちゃくちゃ見応えありました。蜷川カンパニーは、時々ミスキャストで作品自体が面白くなくなる時があるんですがm(__)mこの鵜山カンパニーは、たとえ無名俳優さんであっても適材適所に役者を配置してるので、とても見応えありました。

ストーリー的には難ありな部分があり、これなら「ロミオとジュリエット」の方が良くないかい???とは思いましたが、その分キャスト陣がマイナス部分を演技力でカバーしてたので、何度も書きますが、本当に見応えがありました。もう、皆さんほとんど舞台の声だったので、声フェチのワタクシには堪らん発声でした!耳福!(笑)

難ありな部分とは、この作品って、トロイラスとクレシダが主人公ですよね???なのに、扱われ方ひどくない?本当に物語の中心人物なん?見せ場も少なくない?二人のラブシーンと、トロイラスとダイアミディーズの決闘だけは見所だけど、それ以外は、この二人が主役だったのか?めちゃくちゃ疑問。私にはアキリーズが本(裏)主役に見えた。

オールメールの蜷川版は観たことないし、もちろん戯曲も読んだことないので、鵜山版の舞台だけで判断して申し訳ないですが…。


ぶっちゃけのぶっちゃけのことを書くと、

世の女性方は、女性に限らず男性もそうだけど、この作品を観てクレシダは悪女に見えるんですか???トロイラスからダイアミディーズに簡単に心変わりした軽い女性だと本当に思うの???


私はトロイラスの方が最低な男だと思った。クレシダにめちゃくちゃ同情しまくったよ。もうトロイラスなんて、まるで「戦争と平和」のアンドレイみたいでイラッとした。ナターシャと婚約中に、“一年間は自由だよ。その間に心が変わったら終わりにしよう…”みたいな悠長なこと言っておきながら、ナターシャが遊び人のアナトリーに夢中になったと知った途端無視。ガキやん!?子供やん!?

と同じようなことをトロイラスにも感じた。愛するクレシダが、映画では超情けないパリスの命令で敵国ギリシャに捕虜交換されるのに、なんの抵抗も抗議もせず、クレシダと永遠の愛を誓い、(ギリシャまで)会いに行くみたいなことを言って簡単に別れるんか!?パリス同様に情けない男やな!と思ったのは私だけ???

クレシダがダイアミディーズになびいたのを見て感情的になるのは分かるけど、お前クレシダの気持ちを少しでも考えたことあるんか!?って言いたくなった。

そもそもあの別れ方に全くトロイラスの愛を感じなかったから、クレシダがナターシャにしか見えなかった。クレシダは戦争の犠牲者やで!あんなに簡単に手渡すなんて、クレシダだってトロイラスを不信に思うよ。ナターシャと同じで、他の男になびいて当然やと思う。

トロイラスが感情的になればなるほど、ガキにしか見えなくて、最後、パンダラスに掛ける捨て台詞も、まじガキやん!?はぁ???って思ってしまった。


ダイアミディーズは見た目は悪そうに見えるけど、実際は、クレシダに対する愛はトロイラスより本物に近いと思った。計算高いやらしい台詞ではあったけど、部下にクレシダに馬を届けるよう命令するあたりも、戦場戦中にいたっても尚クレシダに対する思いやりを感じたからトロイラスよりマシだと思った。


ということで、戯曲を読まなくても、「トロイ」を観ただけで十分ストーリーに入っていけたので、他の方が考えないようなことが、私の頭の中ではビンビンビンビン駆け巡った(笑)映画を観て正解だったかはいささか疑問ではあるけど、観てた方が分かり易いのは事実。

横田さん演じるアキリーズは、ブラピとは180度異なるアプローチでしたが、めちゃくちゃ遠くはなかった。吉田さん演じるヘクトルは映画のエリック・バナ同様の英雄ぶりで格好良かった。アキリーズとの対決にいたる過程が映画とは異なっていてそこは面白かった。映画だとアキリーズもなかなかの英雄ぶりなんよね。ま、ブラピが演じるだけはあるけど…。横田アキリーズみたいに変態ではない(笑)

舞台のパリスは映画ほどヘタレには演出されてなかったけど、私にはオーランド・ブルーム演じるヘタレのパリスにしか見えなかった。この兄貴にしてこの弟だと思ったから、トロイラスも最低男にしか見えなかった。

私の見解をご理解頂けるのであれば、なぜ、浦井氏にトロイラスを演じさせるんや!?というのか私の正直な気持ち。演じ方はめちゃくちゃ良かった!めちゃくちゃ腹から声が出てたもんな。めちゃええ声やった。ひと昔なら、他のキャストに喰われてたけど、あの名役者達に負けないくらいの勢いでぶつかっていってたのが良かった。これなら、藤原君とのガチ演技バトルもアリアリだと思った。その時は、「オセロ」がピッタリだと思う。

トロイラスという役自体は、私の中では、シェークスピア四大悲劇の主人公同様のダメ男の一人になってしまったのが残念で仕方ないんですが、それは仕方ない。本人はどう思って演じていたから分からないけど、私にはダメ男にしか見えなかった。これなら、ロミオが観たかった。

クレシダを演じたソニンちゃんは、私には不憫でならなかった。私は決して悪女には見えなかった。軽い女にも見えなかった。戦争の道具扱いされていることで腹が立った。更にトロイラスの情けなさに怒りMAXでした。お前、少しは兄貴に反抗しろよ!本当にクレシダを愛しているなら捕虜交換にしないで済む策を講じろよ!って思った。あの呆気なさに怒りMAX。そう思わない???

確かにクレシダも移り気が早いのは否定しない。でも、私にはトロイラスの方が最低に見えた。女性が一人捕虜となって、しかもたらい回しされて、それでも尚操を貫けられるか?孤独やったと思うで。可哀想だった。本当に不憫でならなかった。クレシダを誰が責められる!?江戸時代の日本人女性なら自害してたかもしれんけどね。

そのクレシダを演じたソニンちゃんが一番アプローチに苦しんだと思う。あのクレシダを見て娼婦に見えたら私はその人を疑う。救われない役でしたが、とても良かったです。逆に、世間一般の意見のようにクレシダが悪女に見えなかったのがソニンちゃんの演技力の素晴らしさだと思う。

実は「スウィニー・トッド」以来のソニンちゃんを拝見しましたが、あれからたくさんの役を、男勝りな役も含め演じられて来たはずなのに、ジョアンナの時と変わらない可憐さがあってびっくりした。ミュージカル「モーツァルト」を観ておけば良かった…と後悔してます。雰囲気が全然違ったはずやもんな。ソニンちゃんで「ミス・サイゴン」キムが観たい!その時は、是非とも浦井氏をクリス役で!せやな、この鵜山カンパニーで、浦井&ソニン「ロミジュリ」は観たい。これは実現しそうな予感。

いかにも悪役のような雰囲気のダイアミディーズ役の岡本健一さんは、本当に悪役なのか分からないのが良かった。第一幕は登場しても台詞が少ない。第二幕はキーパソンとなる役だけに、トロイラスとの殺陣のシーンも含め見応えがありました。

私は、岡本さんが松ちゃんの相手役だった「セツァンの善人」を観てます。悪役ではなかったね。今ではすっかり悪役のイメージしかない岡本さんなのであの頃が懐かしいです(笑)m(__)m

横田さんが、声だけ聞いていたら吉田綱太郎さんにしか聞こえない。横田さんのアキリーズのはっちゃけぶりが凄いね!ブラピアキリーズとあまりにかけ離れたアプローチ。これは鵜山さんの策だとは思うけど、暗い作品には何某の陽の要素は必要なので、まさかあんなアキリーズだとは思いませんでしたが、作品のメリハリとなる要だったと思う。私には、アキリーズが裏主役に見えてならなかった。ある意味体当たりな役柄でしたが、一番ブラボーでした。

映画ではオデッセウスという名前で(ちなみに、アキリーズは映画ではアキレス、舞台ではユリシーズ役の今井朋彦さんの策士ぶりも、映画のショーン・ビーンとは違って、知的さが引き立っていて似合ってました。ユリシーズの策士ぶりがギリシャに勝利をもたらしたので、舞台ではそこまでは描かれてませんが実は美味しい役(笑)

こんなこと書いたらなんだけど、感情は常に知性(理性)に負ける。いつの世も、立派な策士がいてこそ戦争に勝利するんよね。諸葛孔明が典型やね。戦争せずに済む策を講じる策士はいないものか…?


パンダラス役の渡辺徹さんも場を和ます役でしたが、この役は実は悪役なん?最後の独白が意味不明だったんですが…。この役って実は女衒なん?クレシダは本当は娼婦なん?じゃないとトロイラスのラストの捨て台詞が腑に落ちないんよね。わざと娼婦を俺にあてがいやがって!という意味の捨て台詞だったのか…疑問。っていうか、この作品、実はクレシダは娼婦でしたっていうオチなん???戯曲読むの面倒臭いな~(汗)

トロイ戦争は、パリスが敵国ギリシャからヘレネを略奪したことで始まった戦争で、まるで、欲情(SEX)が戦争の引き金となりうりみたいなことを言ってたりするけど、今の世は欲情が原因というよりむしろ拝金主義が戦争の原因やもんね。愛する人を守るために戦うって…表面の名目上は綺麗な言葉だけど、裏はお金儲けやもんな。

戦争は、きっかけがあればいつでも起こる。第一次世界大戦の原因は、サラエボでオーストリアの皇太子夫婦の暗殺が原因やん。この皇太子ってそんなに世界で有名なん???ルドルフとは別の人物やで。

きっかけは何でもええねん。そこが怖いんよね。きっかけがあればいつでも戦争は始まる。ちゃんと武器は用意されてるんやから。

ヘレネが略奪されて、1日2日で何十万人分の武器が作れるんか?皇太子が殺されたら、すぐに戦車が作れるんか?そんなわけないやん。すでに準備万端や。きっかけを待ってただけや。歴史はどうして繰り返されるのか不思議でならん。芸術の役割は大きいと思う。

と思う作品でした。結局、病気発言しまくりやなm(__)m

映画もタイムリーで映画館で観てましたが、改めてレンタルして観ると新たな発見に驚きます。意外とメッセージ性があった。

この鵜山カンパニーの「トロイラスとクレシダ」はもう終わってしまうから、今更遅いけど、またどこかで上演されるときは、ブラピ主演の「トロイ」は絶対観て方が数倍楽しめると思う。

今日のまとめ:「トロイラスとクレシダ」が問題劇といわれる所以が分からん。私には歴史劇にしか思えなかった。「テンペスト」の方がよっぽど問題劇だと私は思う。シェークスピアは何を描きたかったんかよく分からんかったもん。

「夏の夜の夢」もそうやけど、あの時代に妖精を登場させるって…。神様や悪魔なら宗教上で理解出来るけど。妖精やで。天使じゃないんやで。シェークスピアも、モーツァルト同様、精神世界に両足を突っ込んでいたとしか想像できない。←また、病気発言ごめんなさいm(__)m

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