(これは2017年8月5日の記事です)
東京ではあまり夏らしくない曇り空が続いていますが、夏というと思い出すのが、ヒッチコックの
「鳥」(1963年公開)
冷房の効いた映画館で見た「鳥」は、その恐ろしさと冷房の寒さとがあいまって、私はすっかり震え上がったのでした。あんなに怖い映画を見たのは初めてでした。
Huluで配信していたのでなつかしくなって見てみました。
すごい!
半世紀も前の映画なのに、今見ても面白い!
そして、当時はわからなかったことが今ではよくわかります。
(以下ネタバレ)
主人公のメラニー(ティッピ・ヘドレン)は金持ちのわがまま娘です。
そのメラニーがペットショップで出会った男ミッチ(ロッド・テイラー)に興味を持ち、彼の妹へのプレゼントと称してラブバード(日本名オカメインコ)を持参し、彼の自宅のあるボデガベイに向かいます。
ところが、メラニーを出迎えてくれたのは、一羽のカモメの襲来でした。
ボデガベイの小さな田舎町では鳥たちの異変が相次ぎます。
ミッチの知り合いの男性が鳥に襲われて亡くなったり、小学生たちにカラスの群れが襲いかかったり。
はじめのうち、鳥に襲われたというメラニーの話を信じていなかった町の人たちも、事実を目の当たりにして恐怖を抱きはじめます。
そして、ついに、鳥たちは大集合し、人間を襲い始めるのです。
この映画は、自然界には人間の知らないメカニズムがあり、ある日突然鳥たちが人間を襲うようになるかもしれない、といった恐怖を描いていると同時に、ミッチの家族とメラニーの複雑な人間模様、彼らの心理をも巧みに映しだしています。
ミッチの母リディアは四年前に亡くなった夫が忘れられず、彼の死を嘆き悲しみ、周囲をも巻き込んでいく非常に偏狭な性格の持ち主です。
リディアが頼みにするのは息子のミッチだけ。ミッチが恋人を作って自分から去っていくのではないかという不安にさいなまれています。
リディアのせいで、ミッチは元恋人のアニーとも別れてしまいます。
アニーはその後、ボデガベイの小学校の教師をしながらミッチのそばで暮らし続けています。
そこへ、新たな恋人として、メラニーが登場してくるわけです。
メラニーとアニー、そしてリディアという三人の女性たちの葛藤、その中心にいるミッチという男性。
その人間模様を描きながら、鳥たちも徐々にその行動をエスカレートさせていき、ついに集団で人間を襲うといった事態にまで発展していきます。
その中で、メラニーとリディアは次第に心を通わせるようになるのですが、鳥に襲われたメラニーは瀕死の状態に陥ります。
鳥たちの襲撃事件というのは、言ってみれば、リディアの深層心理の暗喩。
リティアは、潜在意識の中で、アニーやメラニーの死を望んでいたのでしょう。
最後は、周囲を夥しい数の鳥たちに囲まれたボデガベイの自宅から、メラニーとミッチの家族が車で逃げだすシーンで終わりますが、この後、彼らがどうなったのか、ボデガベイ以外の場所ではどうだったのか、といったことは一切語られません。
しんと静まりかえった無数の鳥たちに覆われたボデガベイの大地に電子音で作られた鳥たちの不気味な声がこだまする、といったエンディングのなんと恐ろしかったこと!
いまだにこのシーンを見ると震えが走ります。
ヒッチコックは人間の心理を巧みに描き、恐怖を引き出す天才ですね。
ちなみに、このメラニー役を当初ヒッチコックはグレース・ケリーに依頼していたそうですが、残念ながら実現しませんでした。
この経緯については、映画「グレイス・オブ・モナコ」でも語られています。
グレース・ケリーのメラニーを見てみたかったと思うのは、私だけではないはず。
ああ、ここはグレース・ケリーだったら・・と思いながら見ました。
他にもヒッチコックの映画はたくさんあります。
「めまい」「サイコ」「裏窓」やさらに「北北西に進路を取れ」「見知らぬ乗客」「間違えられた男」といったサスペンス、また「ハリーの災難」といったコミカルなものもあり、今見ても十分楽しめます。
(ちなみに私は「裏窓」が大好きです!)
夏は階段、もとい怪談!と思っているあなた、この夏、ヒッチコックを見直してみてはいかがでしょうか?
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