(これは2017年8月14日の記事です)
Huluで配信されたドラマでまた面白いのを見つけたので紹介します。
ナイト・オブ・キリング 失われた記憶
「シンドラーのリスト」を書いたスティーヴン・ザイリアン脚本のドラマでHBOが制作。
ニューヨークのクイーンズ地区に住むパキスタン系移民の青年ナシル・カーン(通称ナズ)は真面目な大学生だったが、ある夜、パーティに行く為に父親の商売道具であるイエローキャブを無断で借り、犯罪に巻き込まれてしまう。
ナズの車をタクシーだと思って乗り込んできた若い女性が可愛かったので、ナズは彼女を乗せ、彼女に言われるままに彼女の自宅に行き、勧められるままにドラッグを使用し、彼女と関係を持つ。
ところが、ドラッグのせいで眠り込んでしまった間に、彼女が何者かに殺されてしまう。
慌てたナズは凶器であるナイフを持ち出し、しかもパトロール中の警官に捕まってしまう。
ナズ自身は彼女を殺した記憶がなく、殺してはいないと思うのだが問われると確信はなく、そのまま殺人容疑で逮捕されてしまう。
こうしてナズは一夜にして殺人容疑をかけられ、NYの悪名高い拘置所に入れられ、タフな囚人たちの中でサバイバルを余儀なくされる。
取引に応じれば15年の服役で済むと敏腕弁護士に持ちかけられるが、無実なので取引を拒否し、裁判に持ち込まれる。
面白いのは彼を取り巻く人たちだ。
退職間際の刑事、金目当ての敏腕弁護士、その弁護士の助手をしている新人弁護士、また女性の検事もなかなかしぶとい。
ナズを一目見て彼の弁護を申し出るジョン・ストーンという弁護士がいい。彼は売春婦やドラッグなど軽犯罪専門であまり敏腕ではないが、人間性は実に豊かだ。
このジョンを演じるのがジョン・タトゥーロ。味わい深い人物像を演じている。彼は「名探偵モンク」のモンクの兄弟アンブローズ役でも有名。
ジョンは足の湿疹で悩んでおり、また殺された女性が飼っていた猫を、猫アレルギーがあるにも関わらず引き取ったりと、コミカルな役柄でもある。
また拘置所内でナズを助けてくれた元ボクサーとか、拘置所で生き延びるためにどんどんタフになっていくナズとか。
見どころは満載で、毎回、物語がすごく進むわけではないのに目が離せなくなる。
9・11以後のアメリカ社会のあり様、イスラム系移民の過酷さ、その中で、ナズの澄んだ瞳がすべてを語っている。台詞は多くないのに、存在感のある役者だと思う。
真犯人は果たして誰なのか。ナズは裁判に勝てるのか。
そうしたミステリー要素を満載しつつ、同時に、ナズの社会的立場、周囲の人物たちの姿が克明に描かれる。
人間観察の鋭さ、人物像の克明さ、ストーリーの彫りの深さ、どれをとっても、社会派ドラマとして超一級である。
シリーズ1全8話。続編があるのかどうかは不明。
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