Netflixのドラマ「The Sinner 隠された理由」が面白かった。
シーズン1&2(いずれも8話で完結)
ドイツのサスペンス・ミステリー作家ペトラ・ハメスファール作品のドラマ化です。
これ、超お勧めです。
あんまり面白くて途中でやめられず一気見しました。
Netflixのドラマは中毒性があるから、下手なときに見始めるとヤバいです。眠れなくなる。
これも不眠覚悟の上で見ないといけないドラマです。
The Sinner シーズン1
冒頭で、ごく普通の家庭の主婦(コーラ)が、夫と子どもとビーチにやってきます。そしてなぜか突然、近くにいた見知らぬ男女グループの中の一人の男に襲い掛かりナイフで刺し殺してしまいます。
しかも、コーラは殺害した男と面識がなく、殺人の動機もまったく不明。
彼女は罪を認め、弁護士もつけずに懲役刑に処されることもいとわないといいます。
自分が悪かったのだと。
その姿を見た刑事ハリー・アンブローズはひっかかるものを感じて、捜査に乗り出します。
コーラと殺された男フランクは全くの他人、接点はない、と言われていたのですが、コーラの足取りを追っていくうちに、彼女の埋もれた過去が次第に明らかになっていきます。
これは正統派のミステリーです。
最初に殺人事件があり、多数の目撃者がいるにもかかわらず、犯人と被害者の接点はなく、動機も不明。
そして、これらの謎を解明していくのが、ハリー・アンブローズという刑事ですが、彼自身もトラウマを抱えています。
回を追うごとに、殺人事件の謎、そしてハリー自身の過去が少しずつ明らかになっていく、という仕掛けです。
壁に開けた小さな覗き穴から少しずつ向こう側の景色が見えてくるように、少しずつ謎が解明されていく様子は、まさに上質のミステリーを読む醍醐味があります。
そして、すべての謎が解明され、最後は、ああそうだったのか、と納得し大きな感動が残ります。とても痛々しい感動ですが。
The Sinner シーズン2
13歳の少年(ジュリアン)が両親とおぼしき二人の男女をモーテルで毒殺します。
ここでも、少年がなぜこの二人を殺さなくてはいけなかったのか、という謎が大きく立ちはだかります。なぜなら、彼自身なぜそうしたのかよくわかっていなかったからです。
それは大人の責任なのですが、では、誰の責任か、ということになると特定の人の責任だと言い切れない。様々な人が彼に関わり、彼を翻弄してきたことがわかってきます。
彼が生まれ育ったのは、自給自足の集団生活をしているカルトの宗教団体。
(アメリカのドラマにはよく登場します)
少年を殺人に駆り立てたものは何なのか、そして、誰がこの少年をそのように仕立て上げたのか・・必ずしも明快に解決するわけではありません。
謎は残ります。
なぜなら、これは、母親の母性を問う物語でもあるからです。愛とは何なのか、子どもを産み育てるとはどういうことなのか、深く問いかけてきます。
そして何より秀逸なのは、アンブローズ刑事も含めて、すべての登場人物が抱えている闇。罪の意識、トラウマでしょう。
これは、日本人には少し理解しがたい感覚です。
なぜにこれほどまでに「罪」の意識が強いのか。
キリスト教という宗教が深くかかわっているのですが、そこには、アメリカ特有の宗教観、あるいは狂信的な集団による洗脳と人権侵害、といった面も見られます。
そして、全編通してクローズアップされるのは、人々に深く刻みこまれた「罪」の意識。
タイトルの「The Sinner」は「罪人」を意味します。
それぞれの登場人物のそれぞれの「罪(闇)」が少しずつ解明されていく様子に背筋が凍りつき、思わず立ち止まらずにはいられません。
暗い話なのだけど、とにかく途中でやめられない。最後まで見てしまわずにはおれない。
中毒性要注意です。