夏木広介の日本語ワールド

駄目な日本語を斬る。いい加減な発言も斬る。文化、科学、芸能、政治、暮しと、目にした物は何でも。文句は過激なくらいがいい。

全国学力テストに大きな疑問がある

2008年09月20日 | Weblog
 新聞を整理していたら、全国学力テストの検証記事が8月30日に載っていた。知らなかった。読んで非常に驚いた。小学生の国語の問題だが、何で、こんな問題の出し方をするのかと、出題者の常識を疑ってしまった。横浜国大の府川源一郎教授は「設問の仕方を変えれば正答率が上がる可能性がある」と指摘している。
 問題は作文の下書きで、書き直した方が良いと思った箇所があるので、なぜそう思ったのかの理由と、どのように書き直した方が良いのかを選ぶものだ。
 なお問題にある丸囲み数字はウインドウズとマックではコードが違い、文字化けするので、「1」のように変えた。

・問題
 「1」わたしは、六年生として学校のためになるような仕事や活動に積極的に取り組もうと思った。「2」しかし、具体的にどんなことをしたらよいのかなやんでしまった。
 「3」そこで、先生に相談すると、
「あなたの好きなことが、学校のためにつながるとよいですね。」
と、話してくださったので、花が好きなところを生かせばよいと気づいたので、花いっぱのきれいな学校にしようと思った。

・答の候補
1 「2」の文には、「だれが」という主語がぬけているから、主語となる「先生」を書き足したほうがよい。
2 「3」の文は、「~ので」が続いて長くなり、分かりにくいから、一文を分けて書いたほうがよい。
3 「3」の文の「 」の部分は、先生が話した言葉だから、〈話してくださった〉まで「 」に入れたほうがよい。
4 「1」から「3」までの文は、述語が「~した」になっているから、「です」や「ます」も使ったほうがよい。

 さて、あなたは出来ましたか? 私は出来なかった。ただ、どこを探しても解答が無く、何が正解なのかは分からないままである。
 多分、正解は2なのだろう。と言うのは、1と3は明らかに間違いだ。だが、4は間違いとは言えない。我々が読む普通の本には、「である」調と「です・ます」調が見事に調和している文章が幾らでもある。本当にそれは見事だ。私もその真似をしたいと思うのだが、なかなか難しい。だからあまりやらない。
 ただ、こうした大人でも難しい事を小学生に要求するはずが無いから、答は多分、2になるはずだ。
 と、このようにしか私には考えられない。

 大体、「2」の主語が「先生」だなどと考える生徒がいるのだろうか。3だって、ナンセンス極まりない。これがナンセンスではない、と考えるのが今の小学生の学力なら、私はもう何も言いたく無い。
 それにしても、2はかなり程度が高いのではないか。大人だって平気でこうした書き方をする。そうした原稿を私は山ほど見ている。私の仕事の一つは校正である。こうした程度の高さと、1や3のそれこそ程度の低さを同列にして考えるとは。
 横浜国大の教授が指摘している事がどのような事なのか具体的には分からないのだが、私には4の設問の仕方を変えるべきだ、と言っているように思える。
 でも、本当にこうした問題が現実に出されているとしたら、私は小学生に心から同情してしまう。こんな事をさせておいて、やれ思考力が足りないなどとほざいている大人どもの顔を見てみたい。思考力が不足しているのは、こうした問題を設定する大人の方である。