夏木広介の日本語ワールド

駄目な日本語を斬る。いい加減な発言も斬る。文化、科学、芸能、政治、暮しと、目にした物は何でも。文句は過激なくらいがいい。

面白さ優先のテレビは視聴者を馬鹿にしているのか

2008年09月06日 | Weblog
 高校生の頭脳日本一を決めるクイズ番組があった。9月5日、日本テレビ(読売テレビ)。
 超エリート校だけあって、さすがに素晴らしい脳力だ。感歎するしか無い。三人一組ではあるが、なんでこんな事まで知ってるの? と思ってしまう。それはいいのだが、問題の出し方とその答の見せ方に大きな疑問がある。
 問題として「ローマの五賢帝の名前をすべて挙げよ」とか「ガリレオが発見した四惑星の名前をすべて挙げよ」などは、その物ズバリだから、答を見て納得する。しかし「1ミリの厚さの紙を30回折った時の厚さは?」とか「1000メートルの深さの海が干上がった時、出来る塩の重さは」(だったと思うが、よく覚えていない)などの問題では、単に答を見せられても納得出来ない。どのように考え、あるいはどのように計算してそうなるのかが知りたいではないか。
 紙を折る問題は私も前に挑戦した事があるから、知っているが、それでも、部屋一杯の大きさの紙でも、30回も折る事は出来ない。そうだろう。多分、富士山よりも高くなる厚さの紙が、中途半端な大きさではない事は想像が付く。そうした事も示して、きちんと答の出し方を説明すべきである。
 圧巻は英語の問題だ。捜査官が英語で捜査をしている。それをそのまま聞いて、問題の場所がどこかを当てる問題である。答は「空港」だったが、何でそうなるのはまるで分からない。なぜなら、問題が何かを視聴者には紹介しないのである。私は居眠りをしてその経過を見損なったのかと自分を疑ってしまったが、居眠りをした覚えは無い。
 多分、英語なので、視聴者には聞かせても分からないと判断したのだと思う。はらはらどきどきの経過だけが面白いと思っているのであろう。非常に馬鹿にした考えである。
 この番組を制作しているあなた、あなたの能力と脳力がそれだけだと言うのは分かりますよ。でもね、視聴者の中にはあなたよりずっと優れた人だって居るんですよ。しかもきっと、大勢ね。
 多分、この番組の収録を生で見ているはずのゲスト出演者はその一部始終を見ているはずだ。彼等の能力も私は常々感心している。だからと言って、内々のなあなあで番組を展開されたんじゃあ、視聴者の立つ瀬が無いじゃありませんか。

 なぜこうなるのかと言えば、面白さだけを優先させるからだ。これは「面白くなければテレビじゃない」と豪語する某局とは違うが、その魂胆は同じと見た。英語では分からないと言うなら、その解説をすればいいではないか。多分、解説の仕方が難しかったんだろうね。
 こうして面白さだけ、そして脳力だけを追求し、見せつけるとどうなるか。そうした脳力だけに力を注ぐ事になりはしないか、と私は心配になる。負けて悔しいと泣く、その気持ちは分からないではない。一生懸命頑張ったのだから、悔しいに違いない。
 だが、エリートとはそんなものではないはずだ。知識や計算能力だけを重視したら、どうなるのか。もちろん、そうした人材が不要だなどとは思っていない。だが、○○と天才は紙一重だ、と言うではないか。そうした天才は本当にごくわずかで良いのではないのか。そのような力よりも、思いやりがあり、融通の利く考え方が出来る人間である事の方がずっと大切だろうと思う。それこそがエリートなのだ、と私は思う。
 だいたい、設定がおかしい。東大合格者ナンバーワン、京大合格者ナンバーワン、医学部合格者ナンバーワン。それがどうしたと言うのか。東大がそんなにすごいのか。京大が、医学部が、それほどまでも優秀なのか。私のパソコンは「憂愁なのか」が真っ先に出て来てしまったが、ホント、「憂愁」にもなるではないか。
 著者が大学教授ばかりのある出版社の優秀な女性編集者と一緒に東大に行った事がある。赤門を潜るなり、彼女は言った。「東大の学生って馬鹿ばっかりよ」。
 私は馬鹿な○大生だから偉そうな事は言えない。だが、いい加減で学閥尊重は止めようではないか。大事なのは、その人その物だ、と誰もが知っている。テレビは影響力の強さを自負しているのだろうから、国民を間違った方向に導くような浅はかな事をしてはならないはずである。それとも、やっぱりCM料金が何よりも大切ですか?