壁際椿事の「あるくみるきく」

東京都内在住の50代男性。宜しくお願いします。

『ずるい!?』を読んだ

2010年10月06日 | 読書(ノンフィクション、実用)
冬季長野オリンピックのスキー競技。日本のジャンプ陣は大活躍しました。その後、ルールが改定されました。スキー板の長さが身長+80cm以内から、身長比で一定以内へと改められたのです。身長が低い日本人には不利とされました。

天才ドライバー、アイルトン・セナを擁し、マクラーレン・ホンダはF1で連戦連勝でした。
その後、ルールが改定され、ホンダ自慢のターボ(混合気を強制的にエンジンに送り込む装置)は禁止されました。

綿々と続く柔道大国、ニッポン。この世界にもルール改変がありました。その改変の前、ルールを決める機関である国際柔道連盟の理事選で、ロス五輪金メダリストの山下泰裕氏が落選しています。

こうした競技のルールは、その競技の国際機関が決めます。機関の理事には、欧米人が多く加わっています。どうして欧米人はルールを変えるのか? ジャパンバッシング(日本叩き)でないか?

『ずるい!? なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか』(青木高夫著、ディスカバー携書)を読みました。スキージャンプやF1、柔道のルールに関する疑問から書き起こし、ビジネスのルール決定についても詳述しています。

同書の結論は、次の通り。
1)ルール改変は日本叩きでなく、独占の弊害を予防し、スポーツでは観戦者の楽しみを増し、ビジネスでは需要者の利便性を高めるという公益のためになされていることだ。
2)日本ではルールはお上が作り、我々は与えられたルールの中で全力を尽くすことが一般的感覚だが、欧米ではルール作りから競技(戦い)は始まっている。これは文化の違いである。
3)ルールに対応するスタンスは3種類ある。まず、所与のルールの理解と遵守度の点検。次に、所与のルール内でのビジネスチャンス(金メダル狙い)の模索。そして、新たなルール作りへの参画。前二者では私益のみで突っ走ってOKだが、後者では公益を念頭において参加しなければ、ルールメーカー内で賛同を得られない。
4)上記を踏まえ、これからは国際的なルール作りに日本も積極的に参加するべきだ。

スポーツやビジネスとは違い、政治問題ですが、いま尖閣諸島近辺の領海を巡って、日中の駆け引きがあります。まさにルール作りをしているのかもしれません(日本政府は「日本領だ」という規定のルールがあるという立場ですが…)。

著者は自動車メーカー、ホンダの現役渉外担当者。長く海外営業などに携わり、実務経験も豊富です。話が具体的で分かりやすく、かつ興味深くて示唆に富んだ内容でした。ビジネスやスポーツにとどまらず、さまざまな分野でのルールを巡る交渉、駆け引き、欧米人の発想を知る手がかりとなります。興味をもたれた方は、ぜひ。

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