金属中毒

心体お金の健康を中心に。
あなたはあなたの専門家、私は私の専門家。

バレンタイン6

2009-02-17 13:43:50 | コードギアス
6 バレンタイン
お散歩は行き帰りも入れて2時間。星刻のスケジュールではそれで限度だった。
まだ、心残りがありそうな天子に星刻は赤い実を目にした雪ウサギを差し出した。
「わぁかわいい」
天子様もとてもかわいいです。そう言いたくなった星刻だが、臣下として無礼があってはならないと言葉を飲み込む。
「うさぎを連れて洛陽に戻りましょう」
代わりにそう言って帰りを促す。天子は素直に頷く。
帰り道、星刻のひざの上にちょこんと天子、天子のひざの上にちょこんと雪ウサギ。

バレンタイン5

2009-02-17 12:54:22 | コードギアス
5 ホワイトデー
ホワイトデー当日、またしても香凜は星刻を朱禁城内での書類仕事や会議に終日あてさせた。幸いこの時期は大きな戦闘もなく内政的にも安定していた。ミレイ・アッシュフォードは自分の番組で世界が愛の日を祝福しているとコメントしている。
その祝福の日星刻は朝一番で天子の部屋を訪れ、ふわふわのマシュマロ(手作り)を贈った。喜んだ天子はお茶の時間に一緒に食べようとしたが、生憎会議が長引きそれはできなかった。その後もあれこれ用事が重なり天子は星刻と会えないままで、日は暮れようとしている。
(甘い)
天子はふわふわのマシュマロをひとつ口に入れる。なんとなく今日一日星刻に避けられている気がする。いつもなら城にいるときは10分くらいでもお茶に来てくれるのに。天子はちょっとふくれてまたひとつマシュマロを口に入れる。天子は知らない。いつものお茶の時間をひねり出すのに星刻がどんな苦労をしているかを。まして、今日は2時間を稼ごうとして星刻はいつもより多忙だった。
天子は何気なく国際放送の番組をつける。ちょうどミレイ・アッシュフォードの番組でホワイトデー特集。あなたは何を贈りますか?デートコースは?プロポーズは?と若手タレントにインタビューしている。
(プロポーズ・・・)
思っただけで天子は真っ赤になった。

急に部屋が暗くなった。あれ?と思った天子が窓を見るとテラスのすぐ傍に神虎が浮いていた。
「星刻」
ためらいもなく天子はテラスに出る。
「天子様。少し散歩はいかがですか」
コクピットを大きく開けて星刻が手をさしのべる。差し出された手に天子は小さな手を重ねる。

ナイトメアの操縦室は狭いと言われるが神虎はそうでもない。2人が乗っても息苦しさはない。しかし、単座式なので椅子はひとつしかない。何の迷いもなく天子は星刻のひざにすわった。天子が10歳にならない頃はよくお茶の時間もこうしてひざの上ですごしていた。
天子の感覚は10歳前の頃と変わらない。大好きな星刻と一緒。だから嬉しい。だから楽しい。
しかし、星刻のほうはそのころと同じだけでは無かった。天子から感じるかすかな甘い香り。実は彼が作ったマシュマロのシナモンの香りなのだが。
(近すぎる)
かすかなため息に天子が星刻を見上げる。その赤い瞳が柔らかな唇が、近い。
目的地に向けて星刻は神虎の速度を上げた。早く着かないと、何か、まずい。


目的地は純白の雪原。洛陽はすでに春だが高山地帯のこの平原はまだ純白のじゅうたんに覆われている。星刻に具体的な記憶は無いが、この地区は彼が幼少時代を過ごした土地でもある。
「これ、『雪景色』」
以前神楽耶に聞いた。純白で輝くような美しさ。
星刻はそっと天子を降ろす。1歩2歩3歩天子は歩く。見つめる限り純白の平原。後ろには自分の足跡。
星刻は神虎が低温に影響を受けないよういくつかの対策を施してから降りた。少し時間が掛かったのは彼の男性としての都合が理由だった。