金属中毒

心体お金の健康を中心に。
あなたはあなたの専門家、私は私の専門家。

氷樹5

2009-02-18 20:36:24 | 鋼の錬金術師
さて、フレッチャーにとっては初めての、エドにとっては当たり前のように慣れた旅の日々。
地方の小さい宿に泊まり、電気がないことにびっくりするフレッチャー。
エドにランプを手渡されて、何をしていいかわからない。
「磨くんだ」
そう言われてせっせとランプの〈外側〉だけを磨く。フレッチャーにとってランプはアンティークの一種だ。
「兄さん、きれいになったよ」
フレッチャーはぴかぴかになったランプをエドに自慢げに手渡す。
火をつけようとしてエドは芯が短いままなのと、ほろの内側がすすだらけなのに気がつく。これでは使えない。
「フレッチャー、ランプを使ったこと無いのか」
エドは手早くランプを分解してきれいにして油を入れ火をつけた。
「えぇ、使えるの?!」
目を丸くするフレッチャー。
そういう表情をするとフレッチャーは実に可愛い。


汽車が3日後にしかないと聞いてあぜんとしたり、野宿するのにたきぎに火をつけようとしてマッチを1箱無駄遣いしたり、フレッチャーは街育ちの不器用さをあらわにした。
悔しがって意地になって何でもやってみようとするが、もともと田舎モノで野育ちのエドにかなうはずも無い。
一日に何度も「兄さんはすごいや」と目をきらきらさせてエドを見る。もともと弟要素の多いフレッチャーと兄要素の強いエドである。擬似兄弟はますます仲良くなっていき、エドはフレッチャーに知っている事はどんどん教え始めた。それはサバイバル生活術に始まり次第に錬金術それも生体系に及んだ。

野宿のある日、エドが罠でウサギを捕らえた。真っ白でふわふわの仔ウサギ。真っ白でぴくぴくふるえる仔ウサギ。「かわいい!」フレッチャーはウサギを抱っこした。
足をしばって逃げないようにした後、エドは焚き火を用意している。
フレッチャーは湿った鼻面を押し付けるウサギにたんぽぽの花を食べさせる。
「ぬいぐるみよりかわいいね。兄さん」
弟はニコニコ笑う。
「ころころしてうまそうだろ。あぶっとけば明日まで食えるし」
エドもニコニコしている。これで朝飯の心配は要らないからだ。
数分後、ナイフを研いでさぁ料理と、振りかざしたエドに弟が聞く。
「逃がすの?まだ遊びたいな」

今までの育ち方が違うせいで時には行き違いもあったが、そのたびに兄と弟は距離を近づけた。

そんなある日弟は兄に言った。
行きたいところがあるんだ。兄さんと。