金属中毒

心体お金の健康を中心に。
あなたはあなたの専門家、私は私の専門家。

両王手14

2009-01-19 15:05:28 | コードギアス
両王手14

藤堂言うところの暴走青年はその頃何をしていたかというと、神舟の電池を通信システムにつないで交渉を続けようと四苦八苦していた。
神虎の通信システムのパネルを剣でこじ開けコードをむりやり引っ剥がす。ラクシャータに見られれば病死するより先に、打ち殺されそうな事を星刻はせっせとやっていた。

システム自体は理解できるとはいえ、神舟は3世代近く前の遺物だ。使われている言葉すら今とは異なる。当時は繁字体という筆文字から作られた字体が使われていた。文化革命の後略字体になり、さらに簡字体になり、さらに最近は発音体というアルファベットを利用した文字に変わっている。
 幸い星刻は古代文字に通じていたからなんとか解読できるがそれでもさらさらとはいかない。それに古代文字を読むことは星刻にとって引っかかりのある記憶に繋がる。
少年だった星刻に教養として語学や古代知識を叩き込んでくれたのはあの高亥であったから。それは文字通り、ムチで叩き込まれたのだ。


 いまだに納得がいかない。なぜあの高亥があんな形で裏切ったのか。あの男は権力を手にするため自らほんものの宦官となった。星刻を手元に置いたのも利用価値のある手ごまとしてだけだ。
少なくとも星刻はそう考えている。

(今はあの男のことどころではない)
軽く頭を振って星刻はまたシステムに意識を集中した。
だが、後になってみればこのとき星刻はあの男のことをもっと考えるべきだった。そうすれば天子が朱王朝の血をまったく引いていない可能性に彼ならばたどり着き、対策を立てる暇もあったのだから。





スザクホルモン

2009-01-19 14:38:13 | コードギアス
スザクホルモン

雄猫発情時攻撃ホルモンの通称。
ニーナ・アインシュタインの生物学に対する初の発表。
「同級生で猫にかみつかれてばかりいる子の汗から見つけました。嫌われていたわけではなくてメスをめぐる同等のライバルとして認められていたんです。」
にこやかに明るくあっけらかんとニーナは発表する。
発情中の雄猫が他の発情中の雄に出会ったとき発する体臭に極めて近い分子構造をもつそれは、その後の分子生物学の発展の基礎となった。

ニーナの名は本来ならあのフレイアの作成者として残るはずだった。もちろん科学年間にはその名が記載されている。また、スザクの名は、これこそは裏切りの代名詞、悪逆皇帝の走狗として知られているので、後の世で気軽に言える名ではないはずだが、どうにもこうにもこの発情ホルモンの名が広がりすぎてしまい、すっかりギャグになってしまった。


両王手13

2009-01-19 02:08:25 | コードギアス
両王手13

天子の赤い瞳は泣いたあとを隠すのに役に立った。
鏡の前で神楽耶は天子の髪を漉いてきれいに結った。

「むかし、私は私の髪と瞳がきらいだったの」
気を落ち着けるためか、天子は唐突にそんなことを言い始めた。
「私だけがこの姿でみんな違うの。天子のしるしだって言われたけどそんなこと信じられなかったの」
「でもね、星刻が好きって言ってくれたの」
天子の髪は一筋の乱れも無くきれいに結えた。

女官の手を借りて一番華やかに見える衣装をまとう。これが自分達の軍服で、多くの人の前が自分達の戦場。天子はすぐにそれを理解し体得することになる。

両王手12

2009-01-19 01:48:01 | コードギアス
両王手12

ゼロ様、あなたのキセキが今必要です。

声にすることなくそう言い置いて、神楽耶は藤堂の下を離れた。忙しい彼をこれ以上煩わしてはいけないし、天子の動揺を抑え中華軍の前ににこやかに出てもらわなければ成らない。星刻が指揮の現場を離れた事はもう隠せない。この上はそれが作戦上のことと押し切るしかない。そのために天子は必要だ。何の権力は無くても、天子は中華の中心なのだから。


愛しい天子を溺愛している星刻が聞けば、血相を変えて止めるだろう。荒くれ兵士の前に天子の玉体をさらすなど。
(星刻様はご自身こそが天子様を飾り人形にしていることに気付こうともしませんものね)
愛らしい 無垢 無邪気 可愛い
星刻が天子に付ける形容詞は愛情にあふれている。国の支配者として薄汚い現実に対処していただかねばという意思はまったく感じられない。
悪意ではなく愛情から星刻は天子を守っている。しかし考えようによっては利用するために外界から遮断した大宦官たちより、星刻のほうがよほど始末が悪い。

星刻の手が届かない今。天子にとっては成長するチャンスであった。

両王手11

2009-01-19 01:30:56 | コードギアス
両王手11


「鏡志郎、あなただけに苦労をかけますね」



皇の少女は自分のサムライをねぎらう。
天子には『軍事上に必要な行動ですから、ご心配には及びません。』
そう言って慰めたが、神楽耶は確信していた。これは暴走であると。
軍事の事は分からずとも神楽耶には政治の感覚があった。

もし、星刻の行動に意味があるとすれば、それはブリタニア内部の反抗組織と共同戦線を張っている場合のみ。
一方で皇族に対して首都を人質にし、その隙に反抗組織がブリタニアを変革する。
しかし、神楽耶の知る限りブリタニアにそれだけの組織は無い。
また、もしも神楽耶の気付かない組織が合って星刻がそれと内密の繋がりを持っていたとしたら、それは黒の騎士団に対する裏切りともなり得る。しかし、その可能性は無い。神楽耶は確信できる。何故か。
それは。
「私は天子様とお茶にした後、軍の鼓舞に参ります」
あの男が愛しい天子を危険な目に合わせることは有り得ない。
天子はここにいる。それがこの行動が暴走である事を証明している。


「彼はあせっています。理由は分かりませんが」
神楽耶は短い間に見た星刻の印象を己のサムライに告げる。付き合った時間なら藤堂の方が長いが、神楽耶には皇の巫女姫としての目がある。
おそらく、その焦りがこの行動を引き起こしたのだろう。もちろんゼロが廃人になったこともフレイアも引き金となっているだろうが。


その廃人化したゼロがどうしているかを藤堂は己の姫巫女に告げる。スザクと共に去ったと。
「スザクと。そうですか。ずいぶん回り道をしてようやく、いえ、スザクは真っすぐしか歩けない子ですから。」
年上のいとこを巫女は子と呼ぶ。
「歩く道はあの子の思いを裏切って曲がっていたのでしょうけど」
『地球が丸いから道はいつでも曲がっているのに』
小さい頃、真っすぐにこだわるいとこにカグヤはそんなふうに言ってからかった。
『それでも俺は真っすぐ行くぞ』
記憶の中のスザクは真っすぐ前だけを見据えている。
(世界を一周してようやく帰ってこられた。お兄様)
これから先、いとこと自分達の道は重なるのかぶつかるのか、それを知る力は神楽耶には無い

両王手10

2009-01-19 00:41:04 | コードギアス
両王手10


さて、背後解説が長くなりすぎたようだ。


第一皇子からの通信で星刻が何をしているか知った天子はどうしているかというと。
あの通信の時には何とか耐えたが、今はぼろぼろ泣くばかりである。



その頃星刻は、




貴女が泣く必要のない世界を手にされた、それを確信したい。
それまでは・・・生きたい。



私が望むのはあの方が自由に生きられる世界だけだ




自分の行動で天子が泣いているとも知らず、神虎の中で幼い頃の天子の写真を見つめ彼女のことだけを考えていた。
なんで写真を持っているかというと24時間持っているからである。

余談だが、周香凛が星刻に付いてしばらく経ってから、たまたま天子の写真を見つめている星刻を見て、哀れにも淡い恋愛感情を散らしている。