金属中毒

心体お金の健康を中心に。
あなたはあなたの専門家、私は私の専門家。

両王手7

2009-01-16 23:22:41 | コードギアス
両王手7

一方、『黎総司令が単独攻撃のため連絡を絶った』そう報告してきたのは扇。
黎総司令の通信によると扇はこの作戦の指示を受けているはずだが・・・。

扇はあのときの将棋盤に作戦内容を書いた書面が残されていると考えた。
しかし、将棋版には何も残っていない。そこで扇は考えた。きっとあのときの将棋の内容が作戦そのものなのだと。
だが、あの将棋の内容がどう作戦になるのか扇自身には分からなかった。そこですぐに内容を棋譜にし藤堂に連絡した。
基本的に扇は善人だった。星刻が自由行動の言い訳のためにあっさり嘘を言ったのだとは考えなかった。

一方藤堂はもとより軍人であり、騙しあいに扇よりも慣れていた。
「あの若造、私に押し付けたな」と内心だけで苦情を言う。
しかし、それをそのまま扇に言うわけにはいかない。扇の動揺は一般隊員にすぐさま伝染する。
意味の無い棋譜を受け取り、適当な作戦指示を与えて「軽挙妄動しないよう落ちついた振りでいてくれ」と付け加える。
実際、今扇にできるのはそれだけで、それが一番大事なことだった。

藤堂は異常に忙しかった。それも当然である。今までゼロ・黎・藤堂の3人で分割していた仕事が全てかかってきたのだ。そのために藤堂の思考は個人感情まで回りつかなかった。
藤堂の個人感情。省吾の死を直視するのはブリタニアが革命を終え、日本が再生し、桜が舞散る季節が来てからだった。


両王手6 声を残して

2009-01-16 17:37:06 | コードギアス

両王手6 声を残して

ゼロの部屋には録音装置が付けられていた。
『ゼロが消えた』この報告が入ると同時に藤堂に録音が届けられた。
藤堂はただ一人でそれを聞いた。聞く前からすでに藤堂にはある予測があった。


ルルーシュ、僕たちはお互いに一番大切なものを失った。
僕はユフィを。君はナナリーを。

それは今は敵となった愛弟子の声。

そうだ、俺たちは一番大切なものをお互いに奪い合った。
己がその結果を最も望まないのに。

藤堂はあぁやはりあの子か、と思った。
ゼロの肉声。遠い記憶の中の紫の瞳。

僕はユフィを。もっとも清らかで優しいユフィを。僕の罪も傷もそのまま受け入れてくれたユフィを。

俺はナナリーを。もっとも清らかで優しい世界に一番ふさわしい愛しい妹を。俺のただ一人の妹を。

君が奪った。

お前が奪った。

俺は君から最愛の妹を奪い、

俺はお前から最も清浄な存在を奪い、

ここで音声に間があった。衣擦れの音がした。スザクとルルーシュの距離が狭まったらしい

今、俺には君がいる。

今、俺にはお前がいる。


俺たちが手を取れば出来ないことなんて無い。それが世界を手にいれ、世界を壊し、世界を造ることでも。



その声だけを残して子供達はいなくなった。

両王手5 これだから、若いものは

2009-01-16 15:50:12 | コードギアス






ここで現状を再把握しよう。フレイアによりトウキョウは壊滅。ゼロ・ルルーシュはナナリーの死の事実に耐えられず、狂気に逃げこんだ。
フレイアを撃った当人のスザクは、いったんは自失したが、狂気の底から這い上がった。
「取り戻す。僕を捨てた国を」

なんとなればスザクは絶望に慣れていた。
幼い日の父殺し。
罪人である己をそれでも包んでくれたユーフェミアの死。
精神が死んだその中でも、スザクの肉体の頑健さは正常に機能した。
スザクは5メートルの穴の底から1跳びで出た。このとき衝撃でブリタニア軍の軍章と携帯が落ちた。
だがスザクはそれらを拾わず風を切り裂くように走り去った。





フレイアによってトウキョウ租界は壊滅。ブリタニア軍は混乱した。それ以上に黒の騎士団は混乱した。
ゼロ、ルルーシュは自室に閉じ込められている。言葉を発する事も無く、瞳はうつろなままだ。
ドアは外から施錠され、その外で古株の隊員1名が見張っている。
警備にぬかりがあったといえるかもしれない。しかし、うかつに警備を強化し一般の隊員にゼロが廃人化した事を知られるわけにはいかない。

藤堂は当初黎総司令の到着までのつもりで全軍の指揮を執っていた。これは軍の規律からしても当然のことである。同時に藤堂は自分自身が本質的に戦術家であることを自覚していた。そんな中、2つの報告が届いた。
「ゼロが消えた」
「黎総司令が単独攻撃のため連絡を絶った」
こうして、責任感が強い、むしろ強すぎるゆえに暴走した若者の尻拭いは藤堂に押し付けられた。