【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

お試しクスリ

2014-09-07 07:15:29 | Weblog

 車を運転中に爪が割れそうになっているのに気づいて、液体絆創膏でカバーしておこうと通りすがりのドラッグストアに立ち寄りました。最近は大きな通りではすぐにコンビニとチェーンのドラッグストアがすぐに見つかるから、便利です。
 で、お目当ての棚にたどり着くと、そこに「お試しにどうぞ」とまさにその液体絆創膏のチューブがぶら下がっています。皮膚に実際に塗って見ろ、ということなのでしょう。で、ありがたく爪の割れ目に塗ったらそれで用が足りてしまいました。あらら、こちらはありがたいのですが、店の売り上げに貢献できません。塗ったものも永遠に保つわけではありませんから、一本購入して帰りましたが、まだ封を切っていません。

【ただいま読書中】『医療につける薬 ──内田樹・鷲田清一に聞く』岩田健太郎 著、 筑摩書房(筑摩選書)、2014年、1600円(税別)

 著者は感染症の専門家だと思っていましたが、医療倫理にも一家言を持っていて大学では倫理委員会の委員長なんだそうです。で、そういった著者が医療倫理に関して素晴らしい人だと感じる人を引っ張り出しての対談集です。
 「人の死」は「生の延長線上」に存在する事象です。明確な境界線があるわけではなく、人はどこかに“線”を引いて「ここからは死」と言っているだけです。脳死と心臓死もだから“対立“するものではありません。「どこに線引きをするか」の問題です。それを「ここに線引きをするべきだ」と自分の意見に執着して他人の意見に耳を傾けない態度は、それだけで非倫理的態度と言えそうです。
 ここで私が面白いと思ったのは、医療の「チーム」を「ラグビー」に例えるところでした。一番先頭のものが“ボール”を持っていますが、その人間ばかりが頑張って突進しても必ずどこかで潰されます。だったら“後方”にパスをして、自分は一度その人よりも後ろに下がってカバーをして、必要があればまたパスを受け取って前に進む。ボールは後ろへパス、全体的には前に進む、という態度だったら、医療も倫理もうまくいくのではないか、という議論です。
 医療倫理に限らず、世の中を「白と黒」「正義と悪」にきっちり二分してから相手を攻撃する、というスタイルが最近の日本の流行のようですが、そのような「決めつける態度」そのものに大きな問題があることがするどく指摘され続けます。
 フランス現代思想・武道論・教育論の内田さん、臨床哲学・現象学・倫理学の鷲田さん、どちらも私にとっては刺激的な発想を展開してくれます。ただ、二人(三人)の会話についていくためには、発想の豊かさだけではなくて、深い教養も必要そうです。もうちょっと私も勉強をしなくては。



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