【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

異常ではない乾燥注意報

2012-01-18 18:57:17 | Weblog

 昔は「異常乾燥注意報」と言っていたはず、と私の記憶が囁くので調べてみたら、やはり同じ疑問を持つ人はいるもので、ヤフー知恵袋にその質問があり、回答には「太平洋岸では冬には毎日のように注意報が出るので、毎日なモノは『異常』ではないだろう、ということで、1988年に『異常』を取って『乾燥注意報』になりました。」とありました。たしかに、毎日あることは「異常」ではなくて「日常」ですよね。

【ただいま読書中】『「湿気」の日本文化』神崎宣武 著、 日本経済新聞社、1992年、1262円(税別)

 日本の気候の大きな特徴のひとつが「蒸し暑さ」です。東京の年平均相対湿度は66%(最高は7月77%、最低は1月53%)です。ところが、年平均相対湿度では、ローマが78%、パリ79%、ロンドン84%、ワシントン64%、北京60%……あれ? 
 もちろんこれには“数字のトリック”があります。基本的に他の都市では湿度が高いのはおおむね冬で、夏はからっとしているのです。さらに降水量も大きく違います。日本の年間降水量は、東南アジアや南米の熱帯雨林に匹敵する、つまり、年中むしむしとしている熱帯雨林と日本の夏は同じようなものなのです。
 湿潤環境は森を育てます。森林を“資源”として日本人は家屋などを建築してきましたが、その主な目的は「保温」よりも「通風と湿度のコントロール」でした。『徒然草』の「家の造りやうは夏を旨とすべし」です。
 湿度が高いと水虫が。だから日本の履き物は、素足感覚のものとなりました。はじめは板張りだった屋内に少しずつ畳(これも調湿機能が重要)が普及しますが、そこには素足で上がります。したがって、足の清潔が重要視されるようになり、履き物を脱ぐ「玄関」が日本の建築では重要な場所となります。……しかしこうしてみると「水虫」というのは絶妙のネーミングですね。たしかに「蒸れる」ことがほとんど必要条件のようですから。
 現代日本では「着物」はほとんど「晴れ着」ですが、かつての日本でも「着物(長衣)」はやはり晴れ着(絹製、特権階級の儀礼着)で、庶民の平生着(労働着)は木綿の短衣でした。そこでも「蒸し暑さ」対策が重要です。一番簡単なのは「脱ぐ」こと。昔の(つい最近までの)日本では、裸体または半裸体は日常生活ではふつうのものでした。「きもの」を着る場合でも、着付けによって通風を確保するようにします。
 食事のところで、主題が少しずれます。ここまでは「湿度(高温多湿)」がいかに日本文化に影響を与えたか、が語られていましたが、食事では「日本の食事がいかに日本独特か」が語られることに力点が置かれているように私には読めます。もちろん、食品の保存とか魚の干物とかには湿度が関係していますが、「日本人の主食は実は米ではない」なんて話題には湿度は関係ないですよね。
 ふだん私は「自分が日本人であること」に疑いを持っていませんが、実はその歴史的背景などについてあまり深く考えてはいません。たまにはこんな本で「自分の生活」について、ちょっと突っこんで考えてみるのも、楽しい時の過ごし方のようです。



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