【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

障害者の評価/『ローマ人の物語XII 混迷する帝国』

2008-11-25 18:39:06 | Weblog
ある障害者が平均的な健常者の88%の仕事をしました。さて、それをどう評価しましょうか。
 実はこれだけでは何も評価できません。その障害者がどの程度の能力を持っているかがわからないといけないのです。
 では、その人が普通に全力を出したら、健常者の平均の80%の仕事ができる能力を持っている、としましょう。するとその人が「健常者の88%の仕事」をしたということは、健常者が「110%の力を振り絞った」ことと同等になります。これは褒め称えるべきでしょう。少なくとも「110%の仕事をした健常者」を褒めるのと同じレベルで。

 絶対的な物差し(仕事量)だけではなくて、総体的な物差し(その人の能力の評価)も持っていないと、正しい評価はできません。
 もちろんそれは障害者だけではなくて、健常者を相手としたときも同じですが。

【ただいま読書中】
ローマ人の物語XII 混迷する帝国』塩野七生 著、 新潮社、2003年、2800円(税別)
 「三世紀の危機」が本書では語られます。世界史を学んでいるから、ローマ帝国が衰え分裂し滅びていくことは知っていますが、著者はその衰亡の仕方もまた「ローマ人的であった」と述べます。なるほどここでも「ローマ人の物語」なのですね。

 1世紀には皇帝は9人でした。2世紀は6人。ところが本書で扱われる3世紀の73年間で皇帝はなんと22人、うち謀殺が13人、戦死が二人です。一体どんな時代だったのでしょう。
 トップバッターのカラカラ帝は、属州民へも一律市民権を与えました。ところがこれは著者によると失政でした。ローマは階級社会でしたが、各階級間の流動性は確保されていました。平等ではないが“風通し”が良く、それがローマ帝国の活力につながっていました。ところが「全員市民」となって、しかもそれが「一等市民」と「二等市民(元属州民)」に固定化されてしまいました。結果として「均質社会」=きわめて風通しの悪い社会=動脈硬化した社会、となってしまったのです。
 新興のササン朝ペルシアがメソポタミアを脅かします。ゴート人が北方より侵入してきます。ベルベル人がアフリカを。そして現役の皇帝が戦場で虜囚になるという前代未聞の出来事があり、さらにローマ帝国は一時3つに分裂します。銀貨は銀メッキの銅貨になり、スタグフレーションが進行します。もうローマはボロボロです。皇帝アウレリアヌスによって帝国は再統合されますが、彼はあっさり謀殺されてしまいます。なんというか、まるで皇帝の使い捨てです。一年で総理の座から次々逃げる、が笑えません。
 284年にディオクレティアヌスが即位します。彼はそこから21年間の統治ですからやっと“皇帝使い捨て”が終わったと言えますが……そこでいよいよ“真打ち”登場。キリスト教です。同じ一神教のユダヤ教が「放っておいてくれ」と孤立を貫こうとするのに対し、キリスト教はローマ帝国を乗っ取る動きを見せ始めます。さてそこからどうなるか、は次巻のお楽しみ。



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