【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

正しいことば

2011-06-22 18:30:07 | Weblog

 ことばの正しさを磨きあげることに注力する人が多くいますが、さて、「ことばが正しければ正しいほど、自分の意図が相手の心に伝わりやすい」ものでしたっけ?
 たとえば子供の頃に親に説教を食らった経験を持つ人は多いでしょうが、その説教内容が間違っていたら「何も知らないくせに」と反発を感じ、その説教内容が正しければそれはそれでかえって意地になって反発する、なんて経験を持っている人はいませんか?

【ただいま読書中】『マーク・トウェイン短編全集(上)』マーク・トウェイン 著、 勝浦吉雄 訳、 文化書房博文社、1993年、2427円(税別)

 短篇集を読んだ場合いつもなら目次を書き出すのですが、本書には30編も収載されているためその作業(難行)はやめておきます。
 「オーリーリアの不運な恋人」……なんとも奇妙な味の話です。オーリーリアの婚約者は、結婚式が近づくと不運な“事故”に遭い、手足を一本ずつ失っていきます。オーリーリアは彼の回復を待っては結婚をしようとするのですが、その日が近づくと必ず“事故”が繰り返されます。すっかり当惑したオーリーリアは……というところで話はそのまま放り出されてしまいます。
 「キャラヴェラス郡の跳び蛙が評判になる」……賭に勝つためにものすごく跳ぶように仕込まれた賭け道具のカエルが散弾を飲まされて、というおなじみのお話ですが、実はこれ、レオニダス神父の消息を聞かれた爺様が突然話し始めたジム・スマイリーという男の話だったんですね。きれいに忘れていました。話中話というのはありますが、これは話中逸脱話?
 「列車内の人食い事件」……吹雪に閉じ込められ、飢えに苦しみながら救助隊を待つ乗客たち。とうとう飢え死にするくらいなら、と「選挙」を始めます。「皆に食べられる候補者」を選ぶ選挙です。委員会が作られ公明正大に選挙演説が行なわれそして投票。その過程は、民主的で模範的な選挙そのものです。いやもうこのブラックさといったら……
 プロットとかドンデンとかも一応はありますが、そういった“技術”を越えたところで著者は悠々と話を展開していきます。なんだか出来の良い中篇や長編の一部だけをこっそり話して聞かせてくれているような雰囲気です。話の舞台だけではなくて、その語りかけの技法に、19世紀という“時代”をたっぷり感じることができます。




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