一顆明珠~住職の記録~

尽十方世界一顆明珠。日々これ修行です。いち住職の気ままなブログ。ときどき真面目です。

春の問題

2006年02月07日 | 
立春が過ぎ、暦の上では春になりましたが寒い日が続きます。
誰にとっても待ち遠しい春(ウィンタースポーツ命の人はどうなのかな・・・)。
春について、ユーモア溢れる素敵な詩があったので紹介します。  
    
  春の問題    辻征夫

また春になってしまった
これが何回目の春であるのかぼくにはわからない
人類出現前の春もまた春だったのだろうか
原始時代には ひとは
これが春だなんて知らずに
(ただ要するにいまなのだと思って)
そこらにやたらに咲く春の花を
ぼんやり 原始的な眼つきで
眺めていたりしたのだろうか
微風にひらひら舞い落ちるちいさな花
あるいはドサッと頭上に落下する巨大な花
ああこの花々が主食だったらくらしはどんなにらくだろう
どだいおれに恐竜なんかが
殺せるわけがないじゃないか ちきしょう
などと原始語でつぶやき
石斧や 棍棒などにちらと眼をやり
膝をかかえてかんがえこむ
そんな男もいただろうか
でもしかたがないやがんばらなくちゃと
かれがまた洞窟の外の花々に眼を戻すと・・・・・
おどろくべし!
そのちょっとした瞬間に
日はすでにどっぷりと暮れ
鼻先まで ぶあつい闇と
亡霊のマンモスなどが
鬼気迫るように
迫っていたのだ
髯や鬚の
原始時代の
原始人よ
不安や
いろんな種類の
おっかなさに
よくぞ耐えてこんにちまで
生きてきたなと誉めてやりたいが
きみは
すなわちぼくで
ぼくはきみなので
自画自賛はつつしみたい

<感想>
原始人の感情が時空を超えて、詩人の心と共鳴します。この詩からはコスモロジー的なロマンと可笑しさが感じられます。最後のおちも愉快です。(※コスモロジーは岡野守也氏が提言されている、現代科学の成果に基づいた新しい宇宙観)

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4 コメント

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楽しい! (HIRO)
2006-02-07 21:54:36
楽しい詩の紹介を有り難うございます。



僕は君で、君は僕。



何を(誰を)褒めても自画自賛。



つながりコスモロジーは、とってもシアワセ。



こちらのブログを褒めるのも、自画自賛!



楽しい記事を、有り難うございます!!
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西洋論理学にはない論理ですね (コスモロジーちゃん)
2006-02-07 23:16:33
 ぼくはきみで、きみはぼく、というのは鈴木大拙のいう「般若即非の論理」、東洋の論理ですね。



 実に楽しい詩ですね。私もいろいろな時にネタに使わせていただきますので、よろしく。



 ところで、ちょうどそういう話を書いたところなので、TBしておきます。
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Unknown (みたに)
2006-02-07 23:50:26
とてもおもしろい詩(なのかな?)で、ちょっと笑ってしまいました。ほんとうに、原始人のご先祖様ががんばってくれたおかげでこうしてネットなんかやっていられるのは、ありがたいこと。

いやいや、もうこのさい自画自賛でいいのではないかと。ワークとして。
返信する
HIROさん、コスモロジーちゃんさん、みたにさん、コメント有り難うございます! (りょう)
2006-02-08 18:44:01
>HIROさん

何を、誰を褒めても自画自賛。



ホントこのオチは痛快です(笑)



詩人のインスピレーションが、無意識に「つながりコスモロジー」にアクセスしたのかもしれませんね。

私もHIROさんのブログ素敵だと思いますよ。

おっとこれも自画自賛(笑)





>コスモロジーちゃんさん

TB、コメント有り難うございます!

鈴木大拙先生の「般若即非」の論理。知りませんでした・・・。西洋にはない論理なのですね。

どうぞ、使ってください。

面白い詩を偶然発見し、驚きました・・・。

「オォ!これはまさにつながりコスモロジーじゃん」って(笑)





>みたにさん

これはぜひワークとして自画自賛しましょう(笑)

われわれがこうしてあるのも、原始人のおかげ。だけど、進歩しているように見えて、退化しているような気がするのは気のせいでしょうか・・・。おそらくは彼らのほうが、自己の十全な命そのものを生き切っていたように思うのです。懐古しても仕方ないかもしれませんが・・・。
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