日中越境EC雑感

2008年に上海でたおばおに店を作るところから始めて、早もうすぐ10年。余りの変化に驚きの連続

中国の住宅ローン地獄

2009-12-27 | 中国の社会・文化・歴史等
 日経ビジネスより

 中国で『蝸居』(かたつむりの家)という題名のテレビドラマが話題になっている。住宅問題に焦点を当てたテレビドラマで、2009年7~8月から一部の地方テレビで放映されて評判となり、全国的に放映を望む視聴者の声が高まり、北京テレビの「映画・テレビチャンネル」が11月5日に放映を開始、11月16日には上海の東方衛星テレビが放映を開始し、これに続いて全国の地方テレビ局が次々と放映を開始したのであった。

 内容は、地方出身で上海の大学を卒業した主人公がそのまま上海で働いた。結婚後、広さわずか十数平方メートルという小さな部屋で新婚生活を始める。トイレと台所は隣人たちと共有という苦しい生活が5年を過ぎた頃、2人には子供が生まれる。出産後実家の母親に上海に来てもらい同居して子供の面倒を見てもらったが、最終的には、子供は母親が実家で預かることとなる。

 3年後、子供を実家から引き取り、マンションを購入した。資金はそれぞれの実家に借金をしたはずだが、実際には高利貸しから6万元(80万円)借金をした。

 結局その高利貸しの借金を容易に返済できず、妻は離婚を決意。妻は自分の伝で市長秘書に資金を借りてきて返済した。最終的に離婚はしなかったがこの件で夫婦関係輪壊れてしまい、市長秘書の愛人になった。その後、市長秘書の汚職疑惑による逮捕に伴い主人公はアメリカに移民した。

 といったあたりで放送中止になった番組だそうです。まぁ、ドラマの内容なんてどうでもよいんですけど、上海に住んでいる外地出身の中国人にとっては当たり前にある生活じゃないでしょうか。上海と言うより北京や広州も含めた大都市は全て同じ構造だと思います。以前の部下も、夫婦共働きで出産後3年間は田舎の実家で子供を預かってもらっていたと言う話を複数のスタッフから聞きましたし、今でも同じでしょう。
 
 ドラマの中に、主人公の上海での生活費として、住宅ローン6000元(約9万円)、衣食費用2500元(約3万7500円)、子供の幼稚園費用1500元(約2万2500円)、交際費600元(約9000円)、交通費580元(約8700円)、不動産管理費3~400元(約 4500~6000円)、携帯電話代250元(約3750円)、さらにガス・水道・電気代200元(約3000円)と書かれています。合計毎月1万2千元=約15万円程度かかる。

 また、ドラマの中で主人公が、「私が目覚めて最初の呼吸をした時点から、毎日少なくとも400元(約6000円)の収入を稼がねばならない。それが私のこの都市で暮らすコストだから」。確かに経費を合計すると1万2030元となり、1カ月を30日として計算すると1日当たり400元となる。これは視聴者に大きな衝撃を与えた。  1万2000元とは言うものの、これは最低限必要な経費であり、これ以上の収入がなければ余裕は全くないことになり、生活を切り詰めて節約するだけで人生に何の楽しみも見出せないだろう、と言うコメントがされています。

 また、昨今の大学卒業生はまともな就職先に合格できる人数は限られており、相当数の大学卒業生が夢見たのとはレベルが大きく異なる職場で安い給与に甘んじているのが実情である。これを「蟻族」といい、全国に100万人と言われているが、実際はそんなものでは収まらないだろう。月収は2000元(約2万7000円)未満ということであり、彼らは衣食もままならぬ苦しい生活を送っている。

 このドラマは、大学卒業生を含む庶民たちに少なからぬ衝撃を与え、多くの人々の共感を得て支持された。中国の庶民たちにとって住居の購入は人生における最大関心事である。住居購入の結果“房奴”となってローン返済の重圧に押しつぶされている人々、住宅を購入することすらできずに狭苦しい“蝸居”での生活を余儀なくされている人々が現実に多数存在しているのである。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20091215/211613/?P=5
 
 うーん。確かに上海に住む外地出身者の生活は同じようなものでしょう。だから、日本でいう月手取り収入5千元以上を富裕層と言う概念は、上海などの大都市ではある意味間違っていると言うことが分かるかと思います。

 また、外地から来た人たちが上海でマンションを買った時の苦労も垣間見えますね。

 一方で最低限の生活費が月1万2千元というのは間違いです。これは日本の大企業駐在員の発想であり、例えば日本人で現地採用で働いている人たちは月1万元以下の給与、当然日本の年金制度や健康保険制度に加入していない人がたくさんいます。月6千元の借金返済だと、一般的に30年ローンですから、借り入れ金額は半分として(今は住宅ローン年利3-4%)100万元=1300万円位の借金をした事例を想定しているのでしょうね。

 我が家の家計と比べると、日本基準で60m2位のマンションの家賃は3800元(外見は昔の日本の公共アパートですが、中は結構綺麗で特に不満なし)。子供は上海の戸籍があるので幼稚園は月500元くらいと外地出身者の3分の一。食費は平日は残業ばかりなので妻の実家で食べるので、土日に外食してもこんなにつかっていない。ガス電気等も月200元もつかっていない。日本人との付き合いや、日本食に家族で行くのを含めてもせいぜい同じ程度しか使っていないし、正直日本と比べてそれほどしみったれた生活を送っているとは思わない。多分東京ですと年収500-600万円位の方の生活費に近いんじゃないでしょうか。

 上海人の場合は、結婚時に男がマンションを持っていないと妻側が結婚を認めないとの事で、必ずマンションを買うんですけど、実際には僕らの場合のように借家をしたり、親と同居して買ったマンションは賃貸に回す人も結構います。まずは家族全員でお金を出して家を買いますね。上海で働く外地出身者の家族にしても一般的には田舎のエリート層が多いので、そこまで悲惨かなと思います。それに家族3人住むマンションは2000元代からありますよ。何も無理して買う必要性も無い。

 我妻の実家は6階ですが、5階の2つの部屋は日本人がすんでいます。家賃は3千元は絶対しないでしょう。

 上海を含む中国の大都市の不動産価格の異常な高さと、それに踊らされてマンションを購入した中国人家族の悲劇を描いたドラマであり、一面それは事実ですので一般大衆にドラマは受けた。そしてそれが日本のメディアにも取り上げられた。相違点は評価しますが。

・結局の所上海のマンションはずっと値上がりすると言う思い込みに踊らされた人がマンションを購入しローンで苦しんでいる。

・このドラマの主人公の生活費は、外地出身者の中では相当に高額。日本人感覚での最低のコストであって、中国人感覚では衣食交際費で月に41-5万円なんて相当に贅沢。上海在住の日本人なら違和感内中華料理屋なら晩飯食って100元。ローカル系なら20元で十分。服だってかなり安い。毎日100元もつかうか?

 すみにくさを訴える反面、身に会った生活をしない馬鹿さ加減を表してもいると冷たく見るべきじゃないでしょうか。

 蟻族という言葉が出てきて、大学でても月2千元の仕事しかなく不満がくすぶるとしています。何人かの人がそういう表現を使っていますね。でも大学でていない大都市のレストランの従業員や行員は月1千元ですから倍もらっているんですよね。確かに日本基準で生活すると家族4人で月1万元くらい使っています。でも中国基準ではどうだろう?

 妻の親戚の仲には学歴も低く、文革時代に下放で新疆に生かされた方がいます。そこは30m2程度のマンションに2家族とおばあちゃんが住んでいます。同じマンションに別な親戚がいて(同じ間取り)結構いい大学に進学した大学生の子を含めて家族3人で過ごしていました。家賃は月800元くらいかな?上海の中では比較的家賃の低い地域ですが、地方出身者のワーカーが住む一見スラムのようなところに比べればだいぶまともです。妻の家も今は100m2位ありますが、高校までは同じように30m2程度のマンションで生活していたそうです。小さい企業でしょうが、国営企業の幹部がですよ。

 私の両親が結婚した時(昭和30年代)には、6畳一間から生活を始めたとの事。今の日本では年収が100万円では生活が成り立ちませんが、中国は格差社会なりに所得に応じて安い生活ができます。記事にはタクシー運転手の所得が6千元あるけど1万元無いと家が買えない。これも問題だと書かれています。

 中国の不動産価格の異常さを指摘する点では評価できますが、この著者全然中国人の生活分かっていないなと思わされます。蟻族ね。日本では僕の世代でも大学では共同アパートに下宿している子が当たり前にいました。月末になると食費がなくなったといって私の実家に来て飯食っっていったこともあります(80年代)。もちろんボンボン学校でしたので成人式に400万円の和服を親から送られたなんて同級生もいましたし、うらやましいとはおもいましたけど、社会不安を起こすような動機は持っていなかったですね。

 マスコミ受けする中国の不安要因の一つでしょうけど、実際の所どうかな。甘えた生活に慣れきった日本人高給駐在員の視点でもの見ても意味無いんじゃないかな。
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4 コメント

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今見てます! (キクチ)
2009-12-27 21:47:39
初めまして。最近こっそりお邪魔しては色々勉強させていただいていました。
実は先週、友人から面白いから見てみたらといわれ、このドラマを見始めました。
細かく見ると、おっしゃられる通りですが、中国国民にはかなりウケてるみたいですね。
ちなみに、妻は妹からお金を借りたのですが、それは妹がパトロン(秘書)からもらったお金です。
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放送されているんですか? (うし)
2009-12-28 12:31:45
 どちらにお住まいなんですか?DVDが出たら買ってみて見ますね。
 程度の差はあれまぁこんなものでしょうね。奥さんの妹って凄いですね??
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私は優酷で見てます (キクチ)
2009-12-29 22:56:51
夏に南京に引っ越してきました!
南京にお越しの際にはお知らせください~。^_^
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南京南京 (うし)
2009-12-30 01:00:22
 了解です。探してみますね。

 南京は一度旅行に行っただけでなんですけど、対日感情ってどうなんですか?北京で韓国人の振りをすると(そんなルックス物ですから)、無茶区茶日本人の悪口言われた経験があるんですが、南京はイメージ的には凄そうな。。。

 街は結構発展しているみたいですね。
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