ゴールドの市況を伝える記事に「質への逃避」という表現が久々に登場している。にわかに高まった金融不安に反応した買いが金市場に流れ込み、13日は金ETFの最大銘柄「SPDRゴールドシェア」にも1日で10トンほど買いが入った。
昨日ここに、インフレを抑えるためには急激な引き締め策による副作用もある種のコストであり、インフレを放置する方がマイナス面が大きいということで突き進んできたFRBだが、問題が金融不安となったことで、どこまで利上げに踏み込めるのか、とした。
13日のNY市場では、やはり同様の観点からゴールドマンサックスは、来週のFOMC(連邦公開市場委員会)での利上げ見送り予測を発表。さすがに0.5%の利上げ観測は消えたが、現時点で0.25%の利上げ予想が大勢を占めている。
利上げの有無と幅に関しては、本日の2月の米CPI(消費者物価指数)の結果次第ということだろう。夏時間に移行しているので、後1時間ほどで発表になる。
利上げ見送り予想にしても、いったん見送りし様子を見て再開もありなのか、今回の見送りをきっかけに利上げサイクル自体を終了するのかという違いもある。そもそも利上げ幅を縮小したのは、そろそろ引き締め策の影響が出るころであり、やり過ぎを避けるためというものだった。効いていなければ、利上げを0.25ずつ継続すればいいと。
その影響が噴出したのが金融破綻という形になった。
NY金は13日は通常取引終了後の時間外に1919.50ドルまで買われ、これが高値となった。本日は1905から1920ドルの間での滞留で、1910ドルをやや上回る水準でCPI待ちとなっている。利益確定売りが出て1900ドルを試すのが一般的な動きだが、それも起きていない。
預金は全額保護されるため取り付け騒ぎ(bank run)はないものの、経営基盤が比較的弱いとみられる銀行から、投資家が一斉に資金回収(株式売却)の動きに出ていることが株価の大幅下落につながっている。
売りたい投資家が売れば終わりというのは、昨日のドル円でも言えそうだ。先週までFRBによる0.5%への利上げ幅拡大観測から、ドル買いポジションが膨らんでいたドル円は、ポジション解消のドル売りの動き(巻き戻し)に135円台から133円台まで急落状態となった。
それでもNY金の上昇率が大きく、大阪取引所のJPX金価格は14日午前の取引で一時8185円と昨年4月20日の8160円を超え、過去最高値を更新した。
そして本日の夜間取引入り後に8203円まで買われさらに高値更新。金を買っていた投資家は、みな利益が出ているわけだ。