週明けのNY金は、30日にペンシルバニア州のUSスティール工場でのトランプ演説にて、唐突な形で鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税を現行の25%から倍増の50%に引き上げを発表したことに反応するのかと思いきや、アジア時間午前までは反応は限定的だった。6月4日から発動するとしていたが、市場には一定の慣れ生まれており、高関税をチラつかせては後に緩和がパターンとの見方がある。それで反応は限定的なものになっていると。実際にアジア昼間では3320ドル台での推移となっていた。日本製鉄によるUSスチール買収の最終承認が出ない中でのこうした発表は、そもそも生産体制の構築にかなりの時間を要すると見られる中で、関連を含め業界全体の戸惑いは大きいとみられるのだが。
ところがアジア午後に入りNY金は、俄かに水準を切り上げ始める。ロンドンのオープニング時には3380ドル近辺まで水準を切り上げ、その後は売り買い交錯状態で3370ドル台でのもみ合いに入っている。
手掛かりとなったのは、ウクライナによるロシア領内複数の空軍基地に対する同時多発的ドローン攻撃、つまり地政学リスクの高まりによる逃避買いということに。ウクライナ側の発表では、戦略爆撃機など40機超に被害を与えたとされる。一部報道ではロシアの戦略爆撃機の34%を破壊したとされる。ロシアには大きな痛手であり報復攻撃が予想されるが、折しも本日から5月19日に次いで2回目となるウクライナ、ロシアの停戦協議がイスタンブールで行われるとされる。一般的には停戦合意など無理だろう。ロシアサイドの今回の反応を市場は見守っている。
市場の内部要因の話をすると、NY金のネットロング(ネットの買い建て)は、重量換算で年初2月4日の965トンをピークに、過去最高値の更新が続く中で一貫して減り続けてきた。直近の数字は先週30日に発表された5月27日時点のもので551トンというもの。約4カ月間で414トン43%もの減少となっている。CTA(Commodity Trading Advisor)と呼ばれる目先筋の短期の売り買いによる値動きの荒さはあるものの、基本的にファンド(投機筋)には買い余力が生まれている。手掛かり材料次第では上昇も下落もという双方向をにらんだアイドリング状態だが、上昇トレンドが継続していることから買い手掛かり待ちと言える。
そこに方向がはっきりしなかったウクライナ情勢が再び緊迫化となれば、リスク回避の買いを集め上値追いの可能性が高まることになる。動きはすでに起きているように見える。