4月22日のNY金は反落した。
時間外のアジア時間から3400ドル台に駆け上がった前日の余勢を駆る形で、一気に3500ドル超と連日の史上最高値更新となったものの、買い一巡で上昇モメンタムが失われると売り先行の流れに転じた。
ロンドンさらにNY時間を通して売り優勢の流れが続き、目立った反発もなく水準を切り下げながら相場は進行した。NY午前の中頃には3450ドル割れに。さらに終盤には一時3400ドル割れとなりつつも、通常取引は前日比5.90ドル安の3419.40ドルと3400ドル台を維持して終了。ただし、午後に入り前日までの逆の流れで米株大幅反発、ドルも米債も反発を鮮明にし前日のトリプル安の逆バージョンに。時間外取引に移行していたNY金はさらに下値を探る流れが続き、一時3379.10ドルまで見て時間外取引は3391.80ドルで終了した。
この日の米国株はここまでの急落に対する自律反発で寄り付き、その後安値拾いの買い先行で推移した。昼過ぎにワシントンで開催された非公式会合でのベッセント財務長官の発言内容が伝わると、株高、ドル高、米債高(利回り低下)のトリプル高状態は加速、その中でNY金は水準を切り下げた。
今週はちょうどワシントンにて国際通貨基金(IMF)、世界銀行の春季総会が開かれており、世界各国の財務相や中央銀行および政府関係者が集まるタイミングでもある。20カ国財務相・中央銀行総裁会議も本日から2日間の日程で開かれる。
22日JPモルガン・チェース主催のイベントにて語ったベッセント財務長官の言葉が参加者への取材で流れることになった。 同長官は中国と高関税をかけ合う状況が「持続可能でない」とし、関税を巡る中国との対立は長くは続かず、緩和していく見通しだと語ったと伝わった。
この発言を好感した市場では、米中貿易戦争の緩和期待が高まりここまでの悲観ムードは後退、楽観センチメントが22日の市場を横断的に支配した。
ところが、この発言には但し書きがある。 まず中国との交渉はまだ始まっていないということ。それでも合意は可能と同長官は思っていること。さらに交渉が始まったとしても包括的な合意に至るには相応(数カ月)の時間がかかるともしている。慎重に捉えるならば、この発言自体が希望的観測と言えなくはないもの。
その後、日本時間の本日早朝(米東部時間夕刻)になり、トランプ大統領がホワイトハウスで記者団にパウエルFRB議長について、「私には彼を解任する意図は全くない。利下げ検討の面で彼にはもう少し積極的になってほしい」と語ったと伝わる(ブルームバーグ)。その上で解任しようとしたことは「決してない」としたとも。日本的表現をするならば、「舌の根も乾かぬうちに」ということだが、いつもの豹変ぶり。
以前、4月9日の追加関税発動90日間延期に際し、前日までの米債急落を特徴とする米国資産離れ(トリプル安)に危機感を持ち大統領を説得したベッセント財務長官のことを書いたが、22日に起きたこと(JPモルガンイベントでの発言含め)は同じ構図と思われる。トランプ大統領は現在のところベッセント財務長官の言うことには従うということだろう。この話は、米合衆国大統領の発言が軽く受け止められる(あてにならん)という事態の醸成という別の問題につながりそうだ。
いずれにしてもFRB議長解任という金融市場を揺るがす事態は回避されたという解釈となり、本日23日のNY金は、時間外のアジアの寄り付きから大きく下押し51.70ドル安の2267.70ドルで取引を開始。早々に3316.00まで売られ、東京の昼前には3350ドル近辺で推移中となっている。
モメンタムの喪失で過熱相場も一段落ということに。