さて週明け5月19日に注目されたのはムーディーズによる米国債格下げの反応がどの程度のものになるのか、ということだった。
NY金はアジア時間から買いが先行し早い段階で一時3252.90ドルを付け、これが高値となった。米国債格下げを背景に安全資産としての買いを集めるという過去にも起きているパターンとなった。しかし、今回ムーディーズが指摘した問題点については、市場に広く認識されていることゆえに、買い手掛かりとしての材料性の消化(織り込み)も早かった。実際に買いが一巡すると急速に上げ幅を削り、アジアの午後に入ったタイミングで一時3209.10ドルまで付け、これが安値に。その後買い戻されロンドン午前、NY早朝の2度にわたり3250ドルどころを試すもアジア時間の高値を上抜けず反落。NY時間に入り3220~40ドルのレンジ相場となり、そのまま終了した。その後の時間外でも横ばいが続き時間外取引は3232.20ドルで終了した。上値の重さを感じさせる展開に。
今週は米国関連で主要な経済指標の発表はなく、FRB(米連邦準備理事会)高官の発言が連日予定されているのみ。トランプ大統領はじめベッセント財務長官の発言に市場は注意を払っている。18日ベセント財務長官はNBCのインタビューで、貿易相手国が通商協議で「誠意ある」交渉を行わなければ、米国は先月に警告した税率で関税を課すという見解を示した。また、主要国以外については個別交渉の時間もなく、中米やアフリカなど「地域単位」で税率を決め、書簡を一斉に送る方針を示した。つまり交渉はせず一方的な通告ということになる。以前であれば、ほぼすべての国が従うことになるのだが、どうなるか見ものではある。
なおムーディーズは週明け19日、バンク・オブ・アメリカ(BofA)とJPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴという主要銀行に預金格付けを引き下げた。これは格付け業界では「格付けトリガー」と呼ばれるもので、その国の最高格付けが国債であり、それが引き下げになると他の信用格付けも引き下げられる。
3行の長期預金格付けは1段階引き下げられて「Aa2」とされた。ムーディーズの格付けで最上位から3番目に相当する。さらにBofAおよびバンク・オブ・ニューヨーク(BNY)メロンの一部格付け対象の子会社および支店に対する優先無担保債の格付けも「Aa1」から「Aa2」に引き下げた。またBofAとBNYメロン、JPモルガン、ステート・ストリート、ウェルズ・ファーゴの一部事業体に対する長期カウンターパーティーリスク格付けも、「Aa1」から「Aa2」に引き下げられた。
さらにこの日の話題としては、米下院予算委員会は、トランプ大統領が掲げる減税策を盛り込んだ法案を可決したと伝えられた。本会議での週内の採決に向けて前進したことになる。いったんは、共和党保守強硬派議員の反対で否決されたが、非公開協議で調整した上で採決された。委員会を通過した法案が、想定以上に財政拡張的としてドルが売られた。