亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

どうするBOJ(Bank of Japan) 地に居て乱を忘れず

2017年06月16日 23時00分07秒 | 金融市場の話題
本日の日銀金融政策決定会合は、大方の予想通り、政策変更ナシ。

・長短金利操作付き量的・質的金融緩和を維持
・国債買い入れ年間「80兆円増ペースめど」を維持
・ETF・REITなど資産買入額を維持
・政策金利は据え置き

5月末時点での日銀の総資産が500兆8008億円と500兆円を突破したことで、注目度もガクンと上がった。なんせ500兆円といえば、日本の名目GDPに迫る規模だからだ。対GDP比では主要中銀の中で突出した比率であるのは言うに及ばず、総額でもFRBの4兆5058億ドル(5月31日時点、円換算496兆円)に肩を並べることになっているからだ。そして、ここからは一気にFRBを引き離すことになりそうだ。

言うまでもなく、この政策の落としどころが見えないことへの懸念がこれまで以上に高まると見られる。日銀というより黒田総裁は、ここまでは判で押したように「出口論議は時期尚早」としてきた経緯がある。

資産500兆円のうち85%に相当する472兆円が国債、14兆円が株式のETFとなっています。いまや日本企業の最大の株主は日本銀行となっている。以前は、保険金の運用で株に投資している日本生命だった。その倍以上と突出した存在が日銀なのだった。市場機能など債券市場ではとっくに失われており、株式市場も官制相場との声をむげにはできまい。

日銀が保有する国債の大半は低クーポン(利率)のものであろうから、将来の金利上昇局面では、含み損を抱えるのは必至といえる。また金利の上昇は、保有する国債からの収入は増えないが(固定利率)、金融機関が預け入れている預金(準備預金)に対する利払いが増え、日銀が赤字に転落したり、債務超過に転じる可能性は非常に大きいといえる。事実、6月1日に岐阜で講演した原田日銀審議委員は、「赤字になる可能性はある」としている。その上で「どんなに赤字になっても信用を失わない」とした。しかし、この見方は楽観に過ぎるだろう。

そもそも、通貨の信認は市場の受け取り方次第だから、赤字や債務超過に陥っても、国民は“大丈夫、問題ない!”と思うのか疑問だ。日本発の金現物需要の高まりで、国際金市場の材料になるのではないか。つまり、そうなった場合に、どんな反応がみられるか不明で、したがって「大丈夫、心配ありません」と立場上言わざるを得ないのだろう。

「どんなに赤字になっても信用を失わない」のなら、“日本国政府は消費増税などやる必要はなく、むしろ超大型減税をして不足分は日銀借り入れで賄えばいい”という極論まで出てくる始末だ。もっとも、すでに“日銀借り入れで賄う”状態に入っていることを否定できないのも事実で、考えるほどに恐ろしくなる。2%金利が上がれば10兆円の損失とすると、赤字になるばかりか、日銀の自己資本7兆8000億円をも上回るという現実がある。

治に居て乱を忘れず、なのだ。私が金を買って、放っておきなさいという理由です。取り越し苦労ならよろしいのだが・・・・。

明日は大阪本町にてセミナー。終了後、和歌山へ。

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