NY金は3営業日続伸。
今週最大の注目点となっていた6月の米消費者物価指数(CPI)の結果(総合指数)が予想外の前月比でマイナスに転じ、(変動の大きい食品とエネルギーを除いた)コア指数もわずか0.1%の伸びにとどまったことで、9月利下げ観測が一気に高まった。
米国債相場は年限を問わず利回りが低下。指標となる10年債利回りは前日の終値ベース4.290%から一時4.170%まで大きく低下。利回りは大半の年限で3月以来の水準に低下した。
CPI発表直後からNY金にまとまった買いが入り、約30ドルほど水準を切り上げ2410ドル台で売り買い交錯状態に。売りが一巡(消化)すると、再び騰勢を強め一時は2430.40ドルと5月22日以来の高値を付け、その後やや売りに押されるも切り上げた水準を維持して推移し終了した。前日比42.20ドル高の2421.90ドルで終了した。
昨日の当欄にて「今回のCPIと12日発表の6月生産者物価指数(PPI)の結果は、先週まで1カ月余り方向感の出なかった金価格にインパクトの大きい手掛かり材料となりそうだ」と書いたが、すでにCPIの結果はNY金のレンジ切り上げの手掛かりとなっている。
6月米CPIの詳細は報じられているので割愛。
インフレの減速が軌道に乗っていることが示されたと言える。総合CPIは冒頭で触れたように前月比マイナスで、これはコロナ禍で経済が大混乱していた20年5月以来約4年ぶりのこと。前年比では3.0%上昇となる。コアCPIは前月比0.1%上昇で21年8月以来最小となった。ここまで問題視された粘着型のインフレの背景にあった住居費の伸びが0.2%と、21年8月以来最小の水準に鈍化したことで、コア指数の上昇が抑制された。
インフレの鈍化は、一方で全般的な経済活動が減速傾向にあることを示唆するもの。前日まで2日にわたり議会証言に立ったパウエルFRB議長は、労働市場の重要性に触れ、インフレ抑制のみが焦点でないとの考えを示していた。今後、すでに弱まっていると見られる労働市場のデータ悪化があるなら、利下げのタイミングはより鮮明になるだろう。
ここでも取り上げたが、パウエル議長に先んじて6月に「リスクはインフレのみではない」と労働市場にスポットを当てる発言をしていたサンフランシスコ連銀デイリー総裁は、CPIの結果を受け「安心材料」とし年内1回あるいは2回の利下げが適切になる可能性があるとしている。慎重な物言いだが、利下げ方向を固めたと思われる。
フェデラルファンド(FF)金利先物市場(Fedウォッチ)では、9月の米利下げ予想確率が9割を超えている。この見通しは上下を繰り返すのであてにはできない。
本日発表のPPIの内容には、今月下旬発表の6月の米個人消費支出(PCE)に関連するデータが含まれることから、やはり鈍化となるとNY金は2450ドルトライの可能性がありそうだ。
本日のアジア時間からNY午前を通し、ファンドの利益確定売りが出ている。いまだ555トンのネットロングを抱えているゆえに売りはやむなし。