先週7日のアジア時間午前に、にわかに発生したシリアミサイル攻撃というニュースに、「一般的に“有事の金高”は長続きしない」と書いた。
7日のNY市場のオープン時の1270ドル超への上昇は、シリア問題ではなく米雇用統計での雇用者増加数が前月比18万人増に対し9万8000人に下振れしたことに瞬時に反応したロボット・トレードがもたらしたものとみられた。最後は、ダドリーNY連銀総裁の追加利上げに対するタカ派的発言が出て、結局、シリア上昇分を帳消しにして終了となった。
今の金市場には、上昇要因「政治リスク(地政学的要因)」と下落要因「好調に進む景気回復(≒FRB追加利上げ)」というそれぞれ反対方向のベクトルが存在し、綱引き状態となっている。どちらの力が大きくなるかで上下に振れている状況だ。
シリア攻撃にしても、トランプ政権では、まだすべての閣僚の承認は終わっておらず、特に、足元の国防総省ではマティス国防長官以外の主要な幹部約50人の政治任用が進まず、空席になっている現状を考慮する必要がある。既存の政策の実行で手いっぱいとされ、こうした体制の下で強行された攻撃ゆえに、今後の展開を周到に準備したもの、すなわち
大きな戦略の下での行動ではないと思われる。つまりシリア、ロシアの反応にもよるが、戦端を切ったわけではなく警告、脅しをかけたということになりそうだ。
いわゆる“行って来い”状態の金市場の値動きは、その辺りを示したものかと。ただし、7日と同じことを書くが、不安定な政治環境を印象付けたこと間違いなく、金融市場は警戒モードを解くことは出来ず、金の堅調地合いは続くとみられる。