9月6日のNY金は続落した。発表された先週最大の注目事項となっていた8月の米雇用統計は、労働市場の急激な悪化を示す内容ではなかったものの、趨勢的に弱まっていることを示唆した。
前日までに発表されていた、雇用動態調査(JOLTS)の求人件数や民間の雇用報告も減速を示唆していた。市場は今回の結果にて、来週開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ幅の0.5%への拡大の有無を見極めようとしていた。前月比の雇用者増加数が市場予想を下回る一方で、失業率は予想通り改善し、判断の難しい結果となった。
多くの市場が結果を受け上下に振れることになった。
NY金は発表を受け急伸し一時2559.80ドルを付けこれが高値に。しかし、すぐに売り優勢にとなり2530ドル台で売り買い交錯状態に。その後買い直されたものの2550ドルには届かず、昼前には売り先行に転じ下げ足を速めた。そのまま2513.90ドルまで売られこれが安値となった。
このタイミングで大型テック株の下げに誘導されるように株式市場の下げ幅が拡大し、市場横断的にリスクオフセンチメントに覆われると、NY金には利益確定の売りが膨らんだ。市場の波乱を警戒した換金売りが出たとみられる。
終盤はやや買い戻され2524.60ドルで終了した。前日比では18.50ドル安ということに。週足では横ばいとなった。
雇用統計に米株式市場はネガティブに反応した。
ポイントは6、7月分が大きく下方修正されたことで、過去3カ月の雇用者数の伸びが平均で2020年の新型コロナ禍初期以来のペースに減速したことにある。
継続的な弱さを示すものとして景気後退への警戒が先行した株式市場では、ダウ30種平均は続落し、前日比410ドル安の4万0345ドルで終えた。週間では1217ドル安で米地銀の破綻が続いた2023年3月以来、約1年半ぶりの下げ幅となった。前週末には最高値を更新していた。他の主要指標も同様の大幅な下げとなった。
市場横断的にリスクオフセンチメントに覆われると、NY金には市場の波乱を警戒した換金売りが出た。連休明けで4営業日だったが、2520ドル台を中心に2550ドル方向では売りが、2500ドル接近局面では買いが優勢になるレンジ相場となった。
なお、先週は8月雇用統計にて失業率の予想比上振れを条件に、NY金は2600ドルを視野に入れるとしたが、失業率の上振れには至らなかった。ただし、株式市場が雇用減速に神経質になっているように、遅行指標とされるだけに今後も失業率は注視したい。一度上げ始めると上昇トレンドが続くのが経験則と言える。
6日のWTI原油は終値が67.67ドルと23年6月以来1年3カ月ぶりの安値で終了。このところ発表された中国関連指標の弱さなどから、世界的な景気減速を示唆するものとされる。それに加わる米国景気への懸念が、株式市場での売りを拡大させたとみられる。
FOMCを控え翌日から(金融関連の発言を控える)ブラックアウト期間を前に、ウォラー連邦準備理事会(FRB)理事は、6日にノートルダム大学で講演。今月の会合で利下げを開始する「時期が来た」とした上で、「経済指標で一段と大きな幅での利下げの必要性が示されれば、支持する」と述べた。一連の経済指標を踏まえ、もはや「忍耐」ではなく「行動」が必要になっているとの考えを示した。
タカ派で知られるウォラー理事のこの景気に対する親超発言も、市場にスクオフを促した可能性がありそうだ。
なお中国人民銀行は7日、8月末の外貨準備が3兆2882億ドル(約466兆円)と発表した。金の保有量は前月と変化はなかった。4カ月連続で増減は見られなかった。