採決直前に撤回、実質廃案”になったオバマケア代替案。これをどう読むかについて、見方が分かれている。
そもそも財政緊縮を旗頭に掲げる共和党保守派であるから、今回の法案すら通せないなら、目玉の大型減税や大型インフラ投資案も無理というもの。一方で、この失敗に懲りた政権と共和党議会指導部は、こんどこそ減税法案に注力し形にするというもの。
いずれの政策も財源がどうなるかということが、政策実現の有無にも規模にも影響を与えることから、やはり前者の見通しに組みしたいと思う。
27日の動きは、NYダウが8営業日連続安となり2011年7~8月以来とのこと。新聞報道では、さしものトランプ・ラリーも終わりを迎えたとされているが、連続安より1日の下げ幅が大きくなることが、市場に“行き過ぎ”を警告するものと思う。その点で足元のNY株式市場では、少なくとも流れは政府の刺激策が打たれる方向に違いなく、ダウが、たかだか45ドル程度の値下がり済むところを見ると、企業業績も指標も上向きになるとの期待が根強いということだろう。
あるいは、そもそも世界景気の上向きが今回の株高の背景であって、トランプ要因は途中で加わった、加速要因(ブースター)に過ぎず、その政権のリスク云々はそもそも単体でこの大相場を崩すものではない・・という指摘が出始めている。こちらは株式市場関係者と円安を唱える(つまり円安派の)為替市場関係者がコアになっている見立て。確かに、足元の経済指標は良く、新興国経済も順調に回っているようだ。それでも、NY株は割高であるのは否めまい。
先々週のFOMC後の記者会見で、イエレン議長はトランプ政権の財政政策について、「タイミングや規模、その性質などを巡り、大きな不確実性がある」として「何が起こるかを見極める十分な時間がある」とした。まさに、それ以上の言いようはなく、FRBとしても動向を見守った上で、そこにマクロ要因を加え、利上げの有無やペースの判断をしようというものだろう。政治リスクの捉え方としては、このスタンス以外のものは、ないと思われる。
それでも「金融市場は政治情勢について予測するのはまったく不得手だ」(ミネアポリス地区連銀カシュカリ総裁)ということになる。今回3月のFOMCでは、このカシュカリ総裁が利上げに一人で反対票を投じ話題の人となった。なんことはない、リーマンショック後の金融大混乱の中でシティ・グループなど大手金融機関への公的資金注入の現場にいた人物で、それゆえ2万1000ドルを超える株高の中で、急落の引き金をFRBが引くやもしれず、反対ということになったのだろう。