亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

市場が試すFOMCの結果とパウエル発言の効力

2021年03月18日 23時12分13秒 | 金融市場の話題
参加者全員が今後の金利や経済見通しを示すという点で節目となる今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)。大型レスキュープランが成立と同時に個人給付金小切手の発送が始まるスピード感に加え、これまた想定を超えて進むワクチン接種の拡大と合いまって、経済正常化への期待は高まる。レスキュープランが成立見通しが高まった2月時点で、米投資銀行ゴールドマン・サックスは、4~6月期の実質成長率が年率換算で前期比11%まで高まると予想し、2021年通年でも7%成長を読んでいた。今回のFOMC参加者の経済見通しでも通年で6.5%を見込んでいることが判明。前回2020年12月の会合時の4.2%成長から大きく上方修正されることになった。報じられているように、インフレ(2.2%)、失業率(4.5%に低下)なども上方修正されたのは、大型財政出動とワクチン接種の拡大が、ともに想定を超える規模とスピードで進んでいることを考慮した当然の結果ということだろう。それでもパウエル議長は、先行きの不確実性を挙げ、「FOMCメンバーの大半は見通しの期間内に利上げはないとの見方を示している」と、記者会見にて発言している。

そのパウエル議長の会見では、やはり記者の質問は緩和策の終了見通しに集まった。量的緩和策の縮小時期について問われた議長は、従来通り「まだ縮小について話す時期ではない」とした。その上で「景気が大きく改善するまでは現状のペースを続ける」とした。これまで同様の発言をしてきている。そして「改善とは実質的な改善であって、見通しではない」と明言した。この「見通しではない」とした点は、FRBとしてはデータとして現れる「結果」に基づいて政策判断をするというもの。ここまで議会証言での議員との質疑応答で、同様の発言をしていたと記憶している。

つまり、FRBとしてはデータとして現れる「結果」に基づいて政策判断をするというもので、予測に基づくこれまでの政策判断は後退することを意味するということだろう。政策目標への接近が、具体的なデータとして確認できて初めて動きをとるというもの。このように理解すると、このところの米長期金利の上昇は、市場が経済成長の加速予想に基づき緩和解除を前のめりに織り込みにかかったもので、パウエル議長からけん制発言が出なかったことに得心がゆく。もちろん、結果を見ての判断は、政策が後手に回るリスクが生まれことを同時に意味することになる。ただし、そうした判断が示されことは、段階的な量的緩和策の縮小(テーパリング)時期など、少なくとも緩和解除に関して市場の前のめりの思惑は後退することになると思われるが果たしてどうか。

ところが、本日、アジア時間の午後から、また米長期金利の上昇が目立っており、現時点で1.757%まで水準を切り上げている。この点でFOMC効果も半日ほどしか持たなかったことになる。今回の記者会見では、長期金利上昇を抑える措置についての言及はなかったが、3月初めの講演では「無秩序な状況なら懸念する」として、政策目標の達成の阻害要因になるようなら介入するスタンスも示していた。今回、声明文では現行の毎月1200憶ドルの資産購入について、「少なくとも」1200憶ドルとしたことから、状況により拡大の可能性を示唆するものとの指摘がある。

FRBが無秩序とする長期金利上昇の内容をどう捉えているかは不明だが、株式市場の安定性なども考慮に入れてのものだろう。今回の総じてハト派スタンスは、株式などリスク資産全般の押し上げ要因でもあり、一方でバブル傾向はさらに高まることになる。「もうはばだなり」とは相場格言のひとつだが、バブルの形成過程とはこうしたものだろうとも思う。いま考え得る「正しい政策」をとるFRB。ただし、その積み重ねが必ずしも正しくない結果(次の波乱)に転じてきたのが、過去30年余りの金融史でもある。

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