亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

巧者?メルケル

2012年07月02日 17時20分20秒 | 金市場
さて7月ということで早くも下半期に入った。今週は7月4日が米国独立記念日の休日となる関係で、取引は薄くなりそうだ。しかし重要イベントと指標の発表が控える。まず5日にECB理事会。利下げを市場は読んでおり、あるとしてその幅が関心事。言うまでもなく6日は米雇用統計。その他、本日2日は米ISM製造業景況指数などがある。このところ米国景気指標に減速傾向が目立っており、次回7月31日-8月1日のFOMCを控えその結果に市場は揺れそうだ。

先週末のユーロ圏首脳会議は7月に設立予定のESM(欧州安定メカニズム)を柔軟で効率的な方法で運用することで合意するなど、“何も具体的なことは決まらない” とまったく期待のなかった市場にとって驚きの結果(サプライズ)をもたらすこととなった。

最大のものは、経営不振に陥った銀行に、ESMなどの救済基金を政府を介さずに直接注入できるように変更したこと。これまではその銀行の本国政府を通じて資本を注入する仕組みだった。したがって、救済された銀行の政府の債務が一気に膨らむ可能性があり、それが最近のスペインの危機に表れていた。そのスペインに関しては、先に決まった同国の銀行救済で、資本増強のために行う融資の返済順位がスペインの政府債のそれより優先させないことでも合意した。返済順位が落ちることを危惧してスペイン国債の保有を見送る動きが表面化していた。いずれにしても金融危機と財政危機がリンクする今の状況を断ち切ろうとするもの。

こうした試みはいずれ合意せざるを得ないと思われたが、(これまでの例では)時間が掛かると見られていた。それだけに、直前までの株式をはじめとする市場のリスク‐オフ(リスク回避)の動きが、一気に逆転し、株から商品まで市場全般が急反騰状態となった。うがった見方をするならば、ユーロ共同債など要になる部分についてドイツは一切妥協はしておらず、強硬姿勢を事前に前面に出した上で「悲観」に傾いた見通しを、受け入れ可能な譲歩を最終的に示すことで「(楽観ではなく)安堵」にセンチメントを動かしたメルケル陣営の勝利ということか。

金市場でもショートカバー(空売りの買戻し)を軸に買いが集中し大幅高となったが、起きている現象としては、「リスク‐オフ」から「リスク‐オン」への回帰ということではなく、「リスク‐オフ」の巻き戻し現象というのが適切と思う。



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