「金利を今上げるのはアホや」。高市候補のこの発言がドル円大変動の伏線となった。
自民総裁選、報じられたように高市候補が1次投票でトップに立つとドル円は146円台に急伸。で、石破候補の当選で急落ということに。ファクトセットのデータではここまでのところ142.82~146.50円と短時間に3.68円幅の大荒れで、19時45分現在143.14円となっている。市場の一部は踊らされることになったわけだ。
これだけドル円が動くと、国内価格への影響は大きい。ドル円1円の変動で今のドル建て価格2700ドル近辺では、1円のドル円変動で国内金は85円程度の影響を受ける。ドル建て価格が一定とするならば、3.68円の変動は300円程度の影響がある。
実際に大阪取引所の先物価格、JPX金は午後3時15分の引値1万2569円が、夜間取引の1万2293円と300円近くの下げとなっている。
国内価格にとって、このところの円高の影響をドル建て金価格の上昇が相殺し、2700ドル台に乗ったことで、7月の円建て最高値に接近するところまで来ていた。ドル円は当面140円台前半で動くとみられることから、NY金を注視ということになる。
9月26日のNY金価格は7営業日続伸となった。米連邦準備理事会(FRB)による利下げ継続観測による買いが、初回が0.50%利下げになったことで一定のモメンタムを維持し、この日は初めて2700ドルを突破することになった。
NYコメックスの通常取引は前日比10.20ドル高の2694.90ドルで終了した。6営業日連続で終値ベースで史上最高値を更新した。一時2708.70ドルまで買われた。高値更新中ゆえに利益確定売りは出ているものの、ここまでの上昇継続自体が、長期上昇に対する異例の先高観に焼き直され、ポジション維持(ホールド)を正当化している。
したがって、最高値更新にしては売りは薄くNYコメックスの出来高は膨らんでいない。
この日発表された米国指標では、まず週次の失業保険新規申請件数が予想外の減少となった。9月21日終了週は前週比増加を読んだ市場に対し4000件減少の21万8000件と5月中旬以来の低水準となった。また同じ時間に発表された4~6月期米実質GDP確報値は、前期比年率3.0%増で、改定値と変わらなかった。市場予想は2.9%だった。堅調な消費が成長を後押しする状況が続いている。1~3月期の成長率は1.6%増と、1.4%から上方修正された。 米経済分析局(BEA)が発表したGDPの年次改定によれば、20年4-6月から23年にかけての実質GDPは平均で5.5%増加。従来公表されていた数字は5.1%増だった。上方修正分の約3分の2は個人消費の上方修正によるものとしている。
こうした足元で発表される経済指標とは別に、金市場では将来にわたる様々な懸念事項も買い手掛かりとされている。
その一つに米国財政がある。
10月から始まる新年度に向けて25日に米下院は12月20日までを期間とする「つなぎ予算案」を可決。26日は上院も通過しバイデン大統領がサインし成立した。共和党保守強硬派が当初反対したものの、大統領選挙が近いことから混乱を避けるために、成立に至った。
例年、「つなぎ予算」が常態化しているが、クリスマス前のタイミング、さらに新年に向けて米議会での財政協議は緊迫度を増すことが予想される。25年1月1日には現在失効状態の連邦債務上限法が復活する予定であり、25年度予算を巡る政治的混乱が、市場の混乱を招くとの見方は根強い。